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【レオニード貴海】【応募】ショートショートnote杯

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ショートショートnote杯に応募した拙作を集めてます。 各話400字程度。
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記事一覧

君に贈る火星の

 エマは受け取った花を瓶に挿し、テーブルの隅に置いた。窓からは曇り空の、午後の淡い光が差…

金持ちジュリエット

 ロミオはジュリエットを愛していた。しかし、ジュリエットはロミオを愛していたのだった。 …

空飛ぶストレート

「もう、こんな時間か」  男は壁の掛け時計をぼんやりと見上げ、自嘲するように薄く笑った。…

コロコロ変わる名探偵

「犯人は、あなただ!」  名指しされたのはA子。しかし、探偵の推理には欠陥があった。 「そ…

数学ギョウザ

「うん、いいな」 「ありがとうございます」  男はぱりぽりと、ロシア文学の酢漬けを食べなが…

違法の冷蔵庫

 20XX年、地表のほとんどは砂漠化していた。都市は砂塵に埋まり、食物は枯れ、人類は絶望の淵…

アナログバイリンガル

 祖母は魔女だった。わけのわからない言葉をたくさん使い、風や森や生き物たちと話をした。  姉たちは、そんな祖母の魔力を色濃く受け継いでいた。  長女のハルは、自然の言葉を使うことができた。風も土も水も火も、彼女の声に耳を傾けた。エレメンタル・バイリンガル。  次女のナツは、動物の言葉を使うことができた。カラスや猫、犬やカエルが友達だった。ワイルド・バイリンガル。  三女のアキはちょっと変わり種で、機械の言葉が使えた。冷蔵庫やテレビ、洗濯機。中古のパソコンを買うときは、彼女の言

株式会社リストラ

 正社員雇用問題。業態あるいは規模の要求から、派遣や契約社員のみで事業を継続することが困…

1億円の低カロリー

 オークション会場はいつもにも増して賑わいを見せていた。さまざまな銀河からやってきたいろ…

しゃべるピアノ

 私はパネルボードに大きな字で質問内容を書き、彼に見せた。彼は嬉しそうに頷いた。そして私…