『今日はなんで連れて来られたん?』

子どもの来院理由

普通、病院には目的を持って来ます。
お腹が痛いとか、鼻水が出るとか、何かしら困ったことを抱えて。
では児童精神科はどうでしょうか。
皆さん、たしかに何かしらの主訴を持って来院されます。
「落ち着きがない」「勉強に集中できない」「癇癪がひどい」「妹に手をあげる」など様々です。

ただ、これらの主訴は多くの場合『親が困っていること』です。
では子ども自身はどうか…?
僕は割とそのへんが気になるので、本人にも聞くようにしていました。
するとあら不思議!半分以上の子どもが「分かんない」と言います。
もちろん言語化ができていないだけの子も多いし、丁寧なお母さんは家で説明をして連れて来られています。でも半分以上のお母さんは「病院に行くとしか説明してません…」とおっしゃいます(ちなみにひどい例だと「病院に行くとすら言わずに連れてきました」みたいなケースもあります)。

誰の話しに来たねん!

…とは言いませんが、思います。
子どもを連れてくるにあたり、そもそも本人の意向が無視されているのはダメです。
もちろん親御さんの気持ちも分かります。「あなたが学校でウロウロしてるのはダメなことだから、病院に行って治してもらいましょう」とは言いにくい(子どもに説明して来院する場合はもっとマイルドに上手に説明しているお母さんがほとんどですが)。
でも、訳も分からずに連れて来るのはどうかなと。いやほんとに「注射はしない?」って聞く子どもとかいるんですよ。

当事者を当事者扱いする

ですので、僕は途中から初診の子には「なんで『連れて来られ』たん?」と聞くようになりました。来院したのが本人の意思ではないことがあまりにも多かったからです。
そうすることで、子どもも「あ、このオッサンは僕の気持ちが分かっている」となり、その後の話もスムーズになります。

実際には問題なんだとしても、それを出来るだけ子どもに分からないように扱いたいという親心が分からない訳ではないです。
でも、病院に来て親と医者がコソコソ話してたら気になるし、てか内容だいたい分かりますよね。そもそも多くのケースでは本人も自覚していることが多いです(来院するまでにさんざん指摘されているので)。
それなら、最初から逃げずに困っていることは「困ったこと」として扱ってもいいのかな、と思います。

主役は子どもであって、「問題」ではないのです。

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