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二十代最後の年を迎えて。
3月1日、午前九時半。
羽田から鳥取へ向かう飛行機の中で、まだ半分眠ったような頭のまま、ぼんやりと眼下に広がる東京湾を眺めていた。
2月最後の日、29歳になった。
むかし、母が言ってくれた通り、春のはじまりを告げるようなあたたかい日だった。
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父と母からは毎年、二月の終わりに大きな可愛らしいお花が届く。
今年は淡い桃色を基調にした、華やかな色合いのお花。
家の中が一気にぱあっと、明るくなったような気がする。
父からは一冊の本と手紙が届いた。
この時代に、この国に、人として生まれてきたことは、結局ただの偶然であり
生き物はみな、産み落とされたその場所で、与えられた生に感謝しながら、懸命にそして楽しく、日々を生きるしかないのです
手紙の終わりには、そんな言葉が綴られていた。
人と人とは分かり合えないこともたくさんあるけれど、
同じ時代に同じ人として生まれ、この広い地球の中ですれ違い、また出会い、そして話をして。
29年間で出会ったそんなかけがえのない人たちのことを、よりいっそう大切にしたい、そんなふうに思った29歳はじまりの日。
仕事は相変わらず多忙を極めているけれど、プライベートでもひとつうれしいことがあった。
自分の人生の中で、大きな、そして大切な一歩。
変わるもの、変わらないもの、去ってゆくもの、残るもの。
日々移ろいゆく生活の中で、ひとつどっしりと根を張った、基盤となる部分をつくる一年にしたい。
二十代最期の一年、めいっぱい楽しもうね。
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