任侠、母の自殺、薬物、逮捕... 苦労を経た高知東生が、今輝いている理由
俳優として映画やテレビで活躍していた高知東生(たかちのぼる)さん。2016年、覚醒剤および大麻取締法違反容疑で逮捕されたことは世間に衝撃を与えました。その後は、依存症更生支援のための講演活動や、「ギャンブル依存症問題を考える会」のYouTubeチャンネルに登場するなど、様々な“更生支援”の活動に取り組んでいらっしゃいます。
そんな高知さん、父とされた人物が“任侠”の世界の親分だったことや、母がその愛人だったこと、さらにその母が自殺されたなど、とても特殊な経験をされてきたことも打ち明けられています。今回は、そんな高知さんの生い立ちや、ご家族への現在の思いを笑下村塾のたかまつななが伺いました。
“愛人薬物ラブホテル...完全にアウトでした”
ーー高知さんは今どんな活動をされているんですか?過去に麻薬で逮捕され、奥様のご両親の介護のために引退されたという報道が印象的です。
高知:やっと自分でも正直に言えるようになってきました。愛人・薬物・ラブホテル。これアウトだよね、どの一個でも。ちなみに親の介護で引退と報道されていましたが、あれはマスコミのデマです。俺はそのときやってたエステのビジネスに力を入れたいから芸能活動を控えていたんです。
自分の人生観にも影響を与えた“任侠”での経験
ーーそうだったのですね。実は最近、Twitterで“任侠”の育ちのお話など、過去が壮絶だったこと知りました。今日は高知さんの半生やそこから感じた想いについてお伺いできたらと思ってます。
高知:不思議だよね、世間では反社会勢力っていうけど、俺の人生感の中では、やっぱりそこで自分の人間形成と道徳もあったから、どうしても反社会勢力と言いたくなくて、“任侠”という言葉を使いました。
“川から流れてきた”と言われ、祖母に育てられた幼少期
ーーお母さまが高校生のときに自殺されたと知り驚きました。お母様との思い出で印象に残っていることは何ですか?
高知:実は俺、正直おふくろと共に過ごしたっていう記憶が2年あるかないかで、小さい時はおばあちゃんに育てられていました。幼稚園生くらいのときに、おばちゃんから、“僕ははおじいちゃんが釣りに行ったときに、犬と一緒に箱に入って川から流れてきた”と聞かされました。一歩間違えたらここにいる犬が俺の兄弟ぐらいなんですよ。
ーー本当のご両親にはお会いされたことはないんですか?
高知:子どものころよく"叔母さん"として家に来てた、なんでも買ってくれた女性がいたんです。そしたら小学校4年のとき、突然、実はこれがお母さんだと言われました。俺にもおふくろがいたんだ喜びましたね。そこからおふくろと暮らし始めました。実際は地獄でしたが...。
ーーせっかく始まった実のお母さまとの生活が、“地獄”!?
高知:家に2、3日いないし、テーブルの上にお金ポンと置いて、飯食っとけみたいな感じです。あとはほぼ毎晩、夜中に酔っ払って帰ってきたり。酔っ払って帰ってきたかと思ったらタバコ買ってこいとか、叩き起こされたり。
夜中に叩き起こされ、キャバレーに連れて行かれる小学生時代
高知:夜中、大の大人何人か叩き起こされ、用意された服を着せられて、車に乗って場所へ着くと、今で言うキャバレーのような場所にいたこともあります。ホステスさんたちに可愛いと揉みくちゃにされました。そこからは大好きだった“叔母さん”が、大嫌いになって、脱走もしたぐらいです。ばあちゃんとの暮らしに戻りたくて。でも途中で連れ戻されたりして怖かった。中学からは全寮制の学校に行けたので良かったですが。
ーーすごいお母様ですね...お父様とはどのように出会ったのですか?
高知:連れて行かれたキャバレーに行ったときに、おふくろから“お父さんよ”と紹介された人がいたんです。若い衆がバーっといる中に、どんと構える親父がいました。嬉しさというより、“ああ、そうなんだ、お父さんもいたのか”という感じです。
中学生で、父親が“任侠の親分”で、母がその愛人だと知る
ーーお父様が“任侠の親分”だということにはいつ気づいたんですか?
高知:中学2、3の、こっそりとエロ本を見る思春期。いろんな知識を得る中で、父は、“ヤクザ”だということ、そして父には本妻がいて、俺のおふくろは“愛人”ということを知りました。
母の死で知った、本当の父親の存在
高知:でも実はその人は、本当の父親ではなかったんです。“生みの親父”と、結論から言うと、“育ての親父”がいるわけです。おふくろが死ぬまでは本当に俺はこの人が実の親父だと思っていたんですが、おふくろが自殺して、ばあちゃんと役所に行ったときに、父親の名前が自分が思っていた人と違ったんです。「あれ?ばあちゃんこれ誰だよ」と言ったら、横でばあちゃんがオロオロしながら「言ってなかったけど、これがあなたの本当のお父さん」と言いました。
ーー実のお父様が別でいることを知って、どう思いましたか?
高知:会ってみたいと思って、おばあちゃんに実父の家に連れて行ってもらいました。大きな家で、庭に3匹ぐらいの大型犬がいました。到着すると、偶然、親父と俺よりもちょっと歳上ぐらいの息子さんが外に出てきたんです。それを見て、ここには踏み入れちゃいけないのかと思い、いろんな感情が冷めてしまったので、ばあちゃんに「もういいや」と伝えて、会わずに帰りました。
テレビ番組のスタッフが全員正座させられた中での、実父との衝撃の再会
ーー結局そこから実のお父様にはお会いされていないんですか?
高知:会いましたよ。その実の親父も元任侠の親分で、会ったときには引退して実業家になっていました。僕が芸能界にいるとき、番組の企画で親父に会いたいと伝えると、プロデューサーたちが彼を探し出してくれて、取材もOKになったんです。
ーーどんな風にご対面されたんですか?
高知:大変でしたよ。実はその番組も、お蔵入りになったんです。最初に撮影クルーが父がいるビルに入ったのですが、1時間経ってもなんにも言ってこない。おかしいと思いディレクターが行くと、彼も帰ってこない。最終的に自分で見に行ったら、撮影クルーがその事務所の中でみんな正座させられていました。親父が若い衆の真中に座って、「撮影なしじゃこら」って言っているんです。小型マイクを盗聴器などと思い込んで怒鳴っていたようで、「何やってんだ、親父お前」と僕もキレました。
ーー衝撃的なロケですね。それはお蔵入りになります。
高知:今思うと不思議なんですけど、最終的には親父が「すまなかった。でももう撮影はやめてくれ」と言ってきて、寿司を全員分おごってくれ、土産も持たせくれたんですけどね。
ーー衝撃的です...。ここまでのお話を聞いていると、安心できる家族、心の居場所みたいなのがなかなかなさそうですよね。
高知:今思うと、ばあちゃんといるときも、叔父家族のところに“住ませてもらってる”という感じでした。家族ではないという距離感があったし、ケーキを楽しく食べている様子を羨ましく思いながら見ていました。僕もなんとか家族を笑わせてケーキをもらおうとしていましたが、もらえないこともありましたね。
ーー辛いですね。今日も大先輩なのに盛り上げようと私を立ててくださろうとすごいと思います。そういうのが小さい頃からずっと染み付いてらっしゃるんだろうなとか思いました。
「就職するよ」と伝え、安心してくれた母との“最後”
ーーそして、高校生でお母さまの自殺を知ったときは...本当に辛かったと思います。
高知:実は、自殺をするその日に、突如全寮制の学校に来て、「今日中に進路を決めろ」と言われたんです。俺は勝手に、任侠の世界に行くことになると思っていたとき、意外な言葉が返ってきて驚きました。「任侠の世界だけは絶対にあかん」と。その日の半年前ぐらいからも、それまで参観日とか催しものに来たことがなかったのに、野球部のみんなのために、ジャージ姿で差し入れのごはんも持ってきてくれていたりしたんです。そこから俺も嫌いだったおふくろがだんだん許せるようになっていました。でもそのころからおふくろの家に帰ると宝石などの物がなくなって家の中が質素になっていたんです。だから俺は「就職するよ」と伝え、おふくろも安心してくれました。その最後の日の夜、寮からおふくろが帰るとき、「ねえ丈二、私きれいかな?」って聞いてきたんです。「気持ち悪い、実の息子に何言うてるの。俺は行くぞ」と返したんですが、車のドアを締めたときのおふくろの顔は、泣きながら笑っていました。それが俺のおふくろとの最後でした。
ーー今だったらどんな言葉をかけてあげたいですか?
「おお、綺麗やぞ」って、言ってあげたかった。おふくろといっても、まともに2年過ごしたかどうか分からないし、むしろ生きてるときは恨んだし、本当に俺を生みたかったのかぐらい思ったし、俺なんかいなきゃよかったんじゃないかと自分を責めたこともあります。でも、今思えばおふくろは一番俺を愛してくれてたなってエピソードもあるんです。俺のことを否定もしなかったし、最大の味方であったっていうのが間違いじゃなかった。失って、初めて大切さに気づきました。今ではもう、母、実の父、育ての父に対する恨みはありません。
インタビュー後半では、高知さんの薬物での逮捕までに至った経緯や、現在の想い、活動に関してお話を伺いました。
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