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私の論文を一挙大紹介!

ものすごく手前味噌な記事です。
しかも長いです。

タイトル通り、これまでに私が発表してきた論文を一言ずつ添えて全て紹介するという記事です。

はい、至極どうでもいい方もたくさんおられると思います。
ですが 医学論文ってそういう感じなのね と思ってもらえたらとても嬉しいです。
なお タイトルのリンク先から論文が見られます。全て無料ですよ。
15.以外は英語ですが。。

以下、掲載された順番に紹介していきます。
長いですよ。
3754文字ですって。

一応目次をつけておきます。


1. 重粒子線治療の急性期皮膚炎の因子 (2017)

デビュー作です。
大学院の論文で、なかなかできず、5年かかって卒業しました。
本来は4年なのに。。
「皮膚のこのくらいの範囲に、このくらいの量の放射線があたると皮膚炎が出やすいですよ」ということを示した論文です。

長くなりますが、補足説明です。
重粒子線治療はこの後頻出なので少しだけ説明させてください。

一般の放射線治療はX線(レントゲンやCTと同じ放射線)を使用して治療します。
対して重粒子線治療とは、炭素イオンを加速させた「重粒子線」を照射する放射線治療です。
X線の放射線治療に比べて、より集中的に放射線を当てられたり、がん細胞を死滅させる効果がより高くなります。
要はすごい放射線治療だ と思って頂ければそれで構いません。
まだまだできる施設が少なかったり、まだ病気によっては保険診療の対象外だったりするのは課題ですが。

2. 前立腺癌に対して少ない回数で放射線治療をした成績 (2019)

以前は前立腺癌の放射線治療は39回くらいが主流でした。
放射線治療は平日毎日、週5回なので、39回だと約2か月連続の治療です。
長いですよね。。
そこで22回に回数を減らして放射線治療をやったら、治療成績は良いものの、治療後の直腸出血はちょっと多かったですよ、という論文です。
最近はどんどん治療回数を少なくする方向にむかっています。

3.前立腺癌の重粒子線治療の初期成績 (2020)

前立腺癌の治療成績は最低5年間はみないと通常は話になりません。
しかしこの論文はわずか3年の成績でも論文にできました。
それだけ重粒子線治療の論文は少ないということを意味します。

4.前立腺癌の重粒子線治療後のPSAの推移 (2020)

3.の派生です。
というかこちらを作りたいがために3.を出しました。
PSAという、採血でわかる前立腺癌のすごく優秀な腫瘍マーカーが、重粒子線治療後にどういうふうに上下するかを調べました。

5. I期食道癌で重粒子とX線の放射線の当たり方を比べてみた (2021)

当時食道癌の重粒子線治療を開始前だったので、その準備も兼ねた研究です。
X線での放射線の当たり方と重粒子線治療での当たり方をシミュレーションして、重粒子線治療のほうがより集中的に放射線が当てられることを示しました。

6. I期食道癌でハイブリッドVMATでの放射線の当たり方を比べてみた (2021)

5.の派生です。
VMATとは強度変調放射線治療(IMRTといいます)の方法のひとつです。
こちらはX線の放射線治療です。
放射線を照射する機械がぐるっと体の周りを1-2周回転しながらIMRTを行う方法で、ブイマットと読みます。
VMATと通常の放射線治療を組み合わせるハイブリッドVMAT法という方法があり、その当たり方をシミュレーションしてみた研究です。
なお、このハイブリッドVMATという方法はほとんど用いられていませんし、当時私がいたところでも使用していませんでしたし、使用する予定も皆無でした。
やってみた的な要素だけの研究です。

7. DeepLは論文の翻訳に有用だ (2021)

以前にも紹介したことがあります。
医学論文を書くときにもDeepLによる機会翻訳が有用ですよ。
個人的には最も好きな論文です。
それは、このアイデアを思いついて形にする過程や、周りの先生を巻き込んで一緒に研究をすすめられたことや、どの雑誌に投稿するか非常に悩んだことなど、楽しい思い出がたくさんあるからだと思います。

8. 照射のときフィルターの有無での放射線の当たり方を比べてみた (2021)

X線の放射線治療のとき、放射線が体の表面に対して平坦にあたるように調整するフィルターがついています。そのフィルターなしで放射線をあてると、当たり方は変わらないけど照射時間が短くなりますよ、という論文です。
すでに先行研究がたくさんあって、3つの雑誌に蹴られてようやく掲載されたというとても苦労した論文です。

9. 進行食道癌の放射線治療の成績を 若い人と高齢の人とで比べた (2022)

進行食道癌のX線での治療成績を調べたら、極めてありきたりな内容になってしまったので、急遽若い人と高齢者とで治療成績を比べる内容に変更しました。
高齢者でも若い人と同じくらいの治療成績と副作用でした。

10. 透析中患者の前立腺癌に対する重粒子線治療は安全そう (2022)

透析患者さんは治療方法が限定されることが しばしばあります。
そうした方の前立腺癌で重粒子は安全にできましたよ、という論文です。

11. 四肢のがんに重粒子線治療をやった成績 (2022)

腕や脚のがん(骨肉腫とかが代表例ですね)の治療戦略の基本は切断です。
でも絶対イヤ、とかそもそも手術に耐えられない人にとって、重粒子線治療は一つの治療オプションになるかもしれません。

12. 両側大体骨の手術後の前立腺癌で重粒子線治療をした報告 (2022)

体に金属が入っている場合、放射線治療が金属にあたると乱反射するのでやりにくいです。
前立腺癌の重粒子線治療は通常左右から照射しますが、左右の股関節に金属が入っているとちょうど金属が邪魔で当てられません。
これを工夫して治療しました、という症例報告です。
私個人としては現状唯一の症例報告で、みんなで知恵を出し合って治療した思い出のケースです。
そういえば、掲載された論文をその患者さんにあげたなー。

13. 直腸癌の手術歴のある前立腺癌の重粒子線治療の安全性 (2023)

直腸癌の手術をしたあとは、手術の影響が残るので前立腺癌の手術は基本的にやりません。
そういう経歴のある前立腺癌の方に重粒子線治療をやって安全性を確かめました。

この論文が掲載された1か月後に、韓国の先生と話す機会があったのですが、そこで「先生の論文のおかげで、直腸癌術後のひとに重粒子線治療ができましたよ、ありがとう」と言われ、私はとても感激しました!
論文は必ずどこかで誰かの役に立つことを実感した思い出の論文です。
私個人としてはこの論文の内容は大したことないと思っていたのですが、その意義を認めてくれる、必要としてくれる方がいることを思い知りました。

14. 骨や筋肉の悪性腫瘍に対する強度変調重粒子線治療の成績 (2023)

重粒子を照射するときは複数方向から当てます。
照射する放射線をビームと呼びますが、通常は1つのビームで照射される範囲の放射線量(強度)は均一です。
強度変調重粒子線治療では、1つのビームで照射される範囲の中で線量に強弱をつけて、複数のビームの合算によって病変に対して十分な放射線量をあてつつ、正常な臓器の線量を下げるという最先端の方法です。
この技術を使って治療しましたよ、という研究です。

15. がんセンター大量離職前後の治療件数や業績の比較 (2023)

神奈川県立がんセンターの放射線治療部門では、かつて所属医師が全員退職するという衝撃的な出来事がありました。
報道もされていたのでご存知の方もいるかもしれません。
その大量離職の前後で、治療件数や研究業績がどうなったかを比べてみました。

ちなみに私はこの論文が掲載後に間もなく退職しています。
別にこの件で病院と揉めたというキナ臭い話ではありませんからご安心を笑

こちらは日本語の論文なので、読めるのは読めますが、論文特有の読みにくさはあるかもしれません。
ご興味があれば是非。

16. 前立腺癌の重粒子線治療の5年の成績 (2024)

3.の焼き直しです。
5年の成績まで明らかにになったので、論文にしました。
雑誌側の都合か論文投稿後の進捗が異様に遅く、2023年2月に投稿してから掲載されたのが2024年3月だったので、丸1年以上かかりました。
最長記録です。


おわりに

改めてみてみると医学論文てとてもシンプルだと思いませんか?

1つの論文に1つのテーマ、言いたいことは1つだけ。
1つの論文もそれほど長くありません。
DeepLなどの翻訳ツールを使えば英語を読むのも問題ありません。書くことさえも。

振り返ってみると 私は論文を書くことが結構好きだったのかもしれませんね。
しばらく論文は書かないつもりでしたが、また気が向いたら書いてみようかなーと思いました。

あぁそうか、論文を書くのは一区切り と考えていたから、この記事をまとめたかったんだと思います。
書きながら自分の気持ちに気付きました。

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28日目

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