⑧1-1 インデックス投資 『若手医師のための 最低限知っておきたい お金の知識(仮)』
Kindle出版を目論見中の本『若手医師のための 最低限知っておきたい お金の知識(仮)』の第8回です。
本の目次のうち、本日はNISA / iDeCoがテーマです。
今日はNISAの活用方法です。
1-1から抜け出す気配はまだまだありません。
章の構成は、最終的に練り直しが必要そうです。
本文はここから
NISAの具体的な運用方法
では具体的にNISAをどのように運用していけばよいのでしょうか?
その原則はつぎの3点です。
1. 限度額1,800万円を最速で目指し
2. 株式を対象としたインデックス商品を
3.毎月定額で積立購入
ひとつずつ確認しましょう。
第1に、できるだけ早くNISAの生涯限度額1,800万円を埋めることを考えましょう。⑤の記事で説明したとおり、NISAの非課税制度を最大限活用するなら、可能な限り早期に1,800万円の枠を使用して、長期運用による複利を非課税で狙います。
ただし、年間360万円までの投資額の制限があるので、最短でも45年です。どの程度の割合を投資資金に回せるかは皆さんの家計の状況によります。しかし、少なくとも手取りの10%、可能ならば25%程度確保できるとよいでしょう。前掲の医師の平均年収を基準とすると、手取りの10%を投資資金とするならば19年目に、25%ならば10年目に枠が埋まる計算になります。
ちなみに私は5年で枠を使い切る予定です。おそらく現預金は減りますが、私個人としては現金を保有するよりもNISAを最大限活用することが優先と考えております。私は今年で43歳ですから、それほど長い運用期間が残されているわけではないのも、最短でNISA枠を使い切ろうとしている理由のひとつです。若い先生方は焦る必要はありませんから、生活に支障がない範囲で投資金額を設定してみてください。
そして第2に、実際に運用する金融商品は、株式を対象としたインデックス運用の投資信託商品をお勧めします。
インデックス運用とは、株式市場全体の値動きを示す「指数 (=インデックス)」に連動することを目指した運用方法です。代表的なインデックスは、日経平均株価やダウ平均株価などです。こららのインデックスの名称を見るとわかるように、インデックス運用とは、簡単に言えば市場の平均を狙う運用方法です。
インデックス運用を勧める理由は主に2つ。1つは手数料の安さ、そしてもう1つは運用成績です。
1つは運用に関わる手数料が安いことです。投資信託で運用する場合、信託報酬という運用手数料が必ずかかります。信託報酬は投資信託の商品ごとに設定されていますが、インデックス運用ではその信託報酬が圧倒的に安くなります。私が運用している銘柄のひとつに「eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー)」という商品があります。いわゆる「オルカン」と呼ばれる有名な商品ですが、この信託報酬は2024年8月現在0.05775%です。これは信託報酬としては最も低い部類です。なぜ低い信託報酬が設定できるかというと、インデックス運用では、市場平均に合わせるように機械的に銘柄を組み合わせるだけですから人件費を中心としたコストを削減できるからです。
一方、インデックス運用の対になるのが、アクティブ運用と呼ばれる方法で、これは市場平均を上回ることを目的にしています。これは投資の専門家が知恵を絞って市場平均よりも高い収益を目指す運用ですから、どうしてもコストがかかります。アクティブ運用では、一般に信託報酬は1%から3%ほどです。
たかだか1%と考えると大きな影響はなさそうですが、わずか1%の違いでも長期運用ではその結果への影響は小さくありません。下の図を見てみましょう。
この図は、医師の平均手取りの10%ずつ積み立てて年利4.5%で運用した場合に、手数料を1%ずつ増やしたときの収益の違いを示しています。赤いグラフは手数料のない場合(現実的には存在しませんが)、40年後に9,756万円です。これに対して青は手数料を1%にした場合です。10年程度では差がありませんが、それ以降徐々に差が開き、40年後の最終金額は7,870万円です。わずか1%の手数料で1,886万円も成績が下がります。2%に増やすと最終の金額は6,409万円です。手数料なしと比べて、なんと3,347万円も運用結果が悪くなります。
このように、特に超長期の運用においては、たとえ1%でも運用結果に大きく影響します。運用コストを制する者が、投資を制するのです。
いや、でもアクティブ運用で、インデックス運用よりも高い成績を出せばいいんじゃない?と思いますよね。もし、インデックス運用よりも数%高い運用成績が達成できれば、アクティブ運用を選んだほうが適切です。
しかし、残念ながらアクティブ運用の成績は芳しくありません。
2021年までの20年間の平均年利は、S&P500というインデックスでは9.68%でした。一方で、株式投資信託の平均は8.70%であり、市場平均の-0.98%です (ウォール街のランダム・ウォーカー より)。過去20年で見ると、アクティブ運用の約90%は、それに対応する指数に負けているというデータがあります。
さらに悪いことに、どうやら過去の運用成績は未来の成績を約束するものではないようです。『インデックス投資は勝者のゲーム』という本で、残念なデータが示されていました。
2006年から2011年までの5年の間に、上位20%の成績を収めたアクティブファンド (ファンドはここではお金を運用する人や組織と考えてください)が、どのくらい次の5年間で良い成績を収めたと思いますか?驚くべきことに次の5年間、同じように上位20%に留まれたファンドは13%しかありませんでした。一方で最下位20%のグループに転落したファンドも25%もありました。逆に前期で下位20%のファンドも、その17%が後期で上位20%グループに入ったそうです。結局は株価の予想など、プロの能力をもってしても誰にもできない、ということなのでしょう。
これらのデータはつまり、市場平均=インデックスに勝つのは至難の業である、ということです。いやいや上位の運用ファンドを選べばいいじゃん、という意見もありそうですが、10年間上位20%に残れるファンドは20%×13%で、わずかに2.6%です。これを見抜く力があるのなら、自力で株式投資を考慮したほうが良いでしょう。なにせ自力で投資する場合は手数料はかかりませんから。
ですから運用する投資信託は信託報酬=運用手数料の安い、インデックス商品が対象となるわけです。
そして最後、第3に毎月定額での積立購入します。
つづく
字数カウント
①1-1 投資信託総論 2700字
②はじめに 2000字
③1-1 投資リスクとシミュレーション 3500字
④1-1 NISAとiDeCo 総論 1700字 合計7900字
⑤1-1 NISAのメリット 1,800万円のパワー 1500字
⑥1−1 積立について 1800字
⑦1-1 NISAの長期投資と複利について 1300字
⑧1-1 NISAの運用方法 枠を早期に& インデックス 2500字
合計 15000字
もう少しでNISAが終われそうです。
がNISAだけでもここまでで7,500字。これは章を独立させることが確定ですね!
お読み頂きありがとうございました。
いやコレは違うよ!という箇所があれば是非ご指摘をお願いいたします。
髙草木
*この記事はあくまで私の個人的な考えを述べたものであり、投資を勧誘する目的ではありません。いずれの投資方法も損失を生じる可能性があります。最終的な投資判断は、ご自身で決定ください。
また、私は各種制度や法律について専門的な能力を有しておらず、記載された内容の正確性や有益性を保証するものではありません。またこれらの制度自体も今後変わる可能性があります。
したがって、仮に本記事をご参考に投資等を行って いかなる損失が出たとしても一切責任を負うことはできません。全てご自身の判断、責任のもとお願い致します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?