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ongaku

音楽とは一体何なのだろう?

芸術であり、娯楽であり、エンターテイメントであり、様々な顔を持つジャンル。それは一冊の小説が映画化され、舞台化され、またファウストのように音楽にも絵画にもなる。それは時代が変わった今も、形を変えて残っていく文化。

「娯楽とは人の心を楽しませ、慰めること」と史記には綴られているそうです。(広辞苑より)だとしたら音楽が娯楽と言われても悪い気はしない。我々音楽家が『娯楽』とカテゴライズされて眉間にシワが寄るのは、「楽しむだけじゃない!」という思いがあるからなのでしょう。汗水魂かけてますから。

でも、最近は受け取り方は、人それぞれでいいんじゃないかと感じています。お届けするものが、スパイシー過ぎるか、良い塩梅か、うひょー!大好物!となるかは、聴いてくださる方々次第。それはきっと小説もお料理も同じですよね。

だから、私は人々と共有したい空気と響きを、真っ白な状態で素直にお届けしたい。それだけなのだと思います。そういう事もあって、前情報の少ないコアなプログラムのコンサートが多いのかも。(故意的ではない)それも時と共に形を変えていくかもしれないし、シワシワな魔女みたいになるまで、このままかもしれない。それもこれも出会いや発見、そして私自身の人生次第。音楽は自分を映し出す鏡だから。

疫病の影響で、こう言った文化面の存在が難しくなっている今。こんなことを考えてみました。ありがちな「無人島に3つ持っていけるとしたら何を持って行きますか?」笑

そうしたら「サバイバルナイフ、寝袋、飲料水」と答える人はどれだけいるでしょうか?私は「フルート、楽譜、読み直したい長編の本」かな。本は、そうだなぁ・・・細雪、豊饒の海、もしくはムーミンシリーズ。

これが漫画だったり、編み物だったり、電車の模型だったり、人それぞれだと思うんです。それぞれの心の糧。この糧の中に居られるなら、私は音楽は娯楽と言われてもいい。

ただ、「娯楽」という心の糧を必要のないものとして、切り捨ててしまう風潮は、立場が逆転した時に、あなたが大切に思っている何かを「必要のないもの」と切り捨ててしまう事にも繋がる。

私はフランスの公立音楽院にフルートの講師として勤めて12年になりますが、とても印象的だったのは「なぜ音楽院が公立なのか?なぜスポーツクラブが公立なのか?それは我々が接する6-25歳の若者の生涯学習になるから。どんな家庭でも登録ができる事そこが大切。」という前職の副学長の言葉。

さて生涯学習とは何なのか? Lifelong learning。

「生涯教育について」中央教育審議会答申(昭和56年6月11日)
「今日、変化の激しい社会にあって、人々は、自己の充実・啓発や生活の向上のため、適切かつ豊かな学習の機会を求めている。これらの学習は、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであり、必要に応じ、自己に適した手段・方法は、これを自ら選んで、生涯を通じて行うものである。この意味では、これを生涯学習と呼ぶのがふさわしい。」

と文科省のページに書いてあるのです。興味のある方はこちらhttps://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/006/siryou/07070410/005/001.htm

自己の充実・啓発や生活の向上。これを考えたら無駄な事とは何も言えないのではないかなと。確かに急を要することは沢山あります。ただ人々の心の糧を「無駄」をカテゴライズするのではなく、少し落ち着いて「自分には興味がないこと」に収めておいて貰えると、我々ニッチな人々は少し救われます。

さて、この記事の写真は私も所属する室内オーケストラ「アンサンブルミラコ」のリハ風景。この団体はいろはリズムという非営利団体が主催で、子供達の生涯学習になるようにと、ミラコも小学生以下の入場料を無料にしたり、所属のミュージシャンが色々な活動をしています。今の自粛モードが解除されたら、また沢山の方々にお会いできることを願って!

明けない夜はないですから!

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