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「嘘」

「私のこと好きなんて、嘘でしょ」

彼女がまっすぐに僕を見つめるのが苦手だ。

全部見透かされていると思うからだ。

苦手だけど、僕はもちろん目をそらしたりはしない。

そう、こういう時が一番大事だ。

彼女が瞬きするか、目をそらすまで、自分からそらしてはいけない。

ゆっくりと「なんでそう思うの?」などと低い声で呟いて

ふとももに手を置いて、ベットに誘い込めば、

たいていの女の子の気は済んでしまう。


でも今回は違った。

うまくいかなかった。

彼女は何か決定的な証拠をつかんだらしく、

僕の目を見つめたまま、涙を流した。

「いい、別れる。」

涙を流しながら、彼女は続けた。

「私は目の前のあなたが好きだけど。」

彼女は続けた。

「目の前にいないあなたが、許せないことをした」

彼女は続けた。

「私は、他の女と同じじゃないから」

彼女は続けた。

「あなたには、一緒でも。」

僕は、なんて言っていいか、わからなかった。

僕は嘘をついたことなんてなかった。

正確には、目の前の人を 好きな気持ちは 本当なのだった。

ただ、それが一人じゃないというだけなのに。

嘘になってしまうのは、なんだか悲しかった。

#小説 #超短編 #フィクション


2017/12/22に書いたもの
最近(2024年7月現在)思ったけど私、創作でもなんでも結構恋愛系書いてるんだな、そして書きたがっているな。ドラマも結構好きだなぁ。特にコミュ障が出てくるのは特に好きだなぁ。(自分を見てるようで応援したくなる)
でもどこかでドン・ファンみたいな人物像に憧れもあったりする!
想像力はたくましいが気は弱いのでやっぱり創作でスリルを楽しむぐらいがちょうど良いのかもしれない。

サポートをいただきありがとうございます。宮平の創作の糧となります。誰かの心に届くよう、書き続けたいと思います。