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「老人と海」じゃなくて、「おじいちゃんと鯉」のはなし

母方の祖父は、わたしが小学校3年生のときに
亡くなりました。


あれは年長さんだったのかなあ、
小学校に行っていたのかなあ、



そんな頃の祖父との思い出です。



おじいちゃんは、口数の少ない人でした。
わたしはおじいちゃんに連れられ
よく散歩に行ったことを覚えています。


大人の足なら10分くらいのところに自動車
学校がありました。
そこには、池があって、大きな錦鯉がたくさん
泳いでいました。


「さかな、見に行くか?」



おじいちゃんは私を誘います。
行かない、という選択肢はなかったような。。
誘われた時にはおじいちゃんの支度はできて
いたような。。
わたしは静かについていきます。



もくもくと歩いていたと思います。
わたしも口数のそんなに多い子では
なかったのです。
はざ木の脇の田んぼ道、小川の脇の田んぼ道、
今では、田んぼもなくなり、立派な道路に
なったその道をゆっくり手を繋いで歩きました。



自動車学校の池に着くと、おじいちゃんは
池の中に人差し指をぽちゃんと入れます。
すると錦鯉がどんどん寄ってきて、
おじいちゃんの指をくわえるのです。


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その音がするたび、わたしのココロは叫びます。



おじいちゃん、やめて!

おじいちゃんのゆびがなくなっちゃう!



叫ぶのはココロだけ。
心臓は、ばくばく。



おじいちゃんは、なんでいっつも
鯉に指を食べさせるんだろう??



今日は大丈夫だったけど、次は
なくなっちゃうかもしれないんだよ。



鯉はあんなにまるまると
しているんだよ。



ぎょろぎょろ、おじいちゃんのこと
見ているんだよ。



ほらっ、怖い音してる!!



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おじいちゃんの指は食べられることなく、
生涯を終えました。



おじいちゃん、


おじいちゃんは、わたしのことを喜ばそうと
していたの?


わたし、恐怖と戦っていたんだよ。


でもね、いまはね、


錦鯉を見るたびにおじいちゃんと
行った散歩のこと。
おじいちゃんが鯉に指を食べさせて
いたことを思いだして、くすっと、
ぷぷっと笑っています。



おじいちゃん以外に指を食べさせている
人を見たことがないのだけれど、鯉は
楽しんでくれていたのかなあ・・・



あとね、
どんな感触なのかなあとちょっと
やってみたくなっています。。。

















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