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【#2】「自然な笑顔しか撮りたくない」方向性が決まったある撮影現場

【#1】で書けなかったこと。

どうしてこの写真展をしようと思ったのか。
ここはやはり、自分の感情を無視するわけにはいかないので、同世代の女性で興味がある方だけでも読んでいただけたらと思い、書くことにします。

自然な笑顔しか撮りたくない

自然な笑顔しか撮りたくないというと語弊があるかもしれません。他に上手な言い方が見つからないのでこう書いているのですが。

自然な笑顔、にずっとこだわって撮ってきた経緯を少し振り返ってみます。

確か41歳だったでしょうか。
まだ目の病気の後遺症が残りつつも気力を取り戻していた私は、プロの師匠に弟子入り。
そこから6年間、撮影理論と現場を学び、47歳で人を撮るカメラマンになる!と決めた当時はスタジオもなかったこともあり、出張をメインに撮影を受けていました。

最初は出張をメインに撮影していた

  • 仕事の現場への出張撮影(元々ここがスタートで最多)

  • ブライダル撮影(いろいろな結婚式場に行きました)

  • 七五三撮影(指定された神社への出張)

  • モデル撮影など

その合間には、ランチ+撮影をセットにした撮影ランチ会も各地で開催していましたが、最も多かったのは、仕事の現場への出張撮影で、撮影現場は県内外の指定された場所。

当然、どの現場も撮影対象は「人」です。

そこは、講演会、オフィス、セミナー、サロン、ワークショップなどのさまざまなイベント。20キロの機材を持ち込み、その場その場で最もクライアントが喜ぶであろう絵面を考え、開催の記録と次回告知にも使えるようなカットを、と毎現場が真剣勝負の中、狙っていたのはいつも「自然な笑顔」でした。

登壇者の自然な笑顔。
講師の自然な笑顔。
参加者の自然な笑顔。
お客様の自然な笑顔。

現場によっては、参加者やお客様の撮影がNGになることも多かったため、そう言った時は、マイクを持つ登壇者や講師の自然な笑顔に集中しました。

モデル撮影で感じたこと

よく覚えている現場があります。
スタジオを持たなかった私が依頼されたのは、あるレストランを貸し切って行われたモデル撮影でした。

当時、まず感動したことがあります。

プロのモデルさんの全身はもちろん、所作の美しさ。
カメラを向けられた瞬間に、プロの仕事を見せつけられました。

10秒、いや、20秒くらいでしょうか、、
撮影者が撮りやすいよう、テンポよくどんどんポーズを変えてくれるのです。

どのポージングもきまっていて、姿勢からお顔の角度、笑顔、目線、その指先にいたるまでが完璧なプロの仕事。同性から見ても、それは見惚れるほどに美しいポージングでした。

プロのモデルさんって本当にすごい!!!と、その仕事に心から感動したものです。

現場で気づいたこと

この日、感動しながら何人ものモデルさんを撮っていく中で、気づいたことがありました。

美しいのは100も承知なのだけど、プロの仕事は尊敬するのだけど・・・自分がワクワクしていないということに。

これには、自分でちょっと困惑。

目の前にいる美しくて完璧な所作のプロのモデルさんがいるのにワクワクしないというのはどういうこと????

まだ駆け出しのフリーのカメラマンであった自分が、こんな美しいモデルさんを撮らせてもらえることは、撮影者としては超絶ハッピーに違いないのに、そんな贅沢思える立場か自分????

モデルさんが美しすぎて、年齢を重ねた自分と比較して僻んでんの????
モデルさんが完璧すぎて、まぶしすぎて、うらやましいの?????

などと、いろいろ自問自答。

でも「ワクワク」は自分の内側から出てくるものなので、どうしようもありません。

その自問自答は、無事撮影を終え、帰宅後しばらくしても続きました。

そして数日後、私の中で結論が出たのです。

「自然な笑顔しか撮りたくない」

語弊がないように、先にお伝えしておきますが、あの現場のモデルさんたちの表情はどの方も「自然な笑顔」でした。

でも、どんなポージングでもその「自然な笑顔」は崩れることなく、完璧な自然さ。

これは思うに、きっと努力の末身につけられたプロの仕事。

撮影者がまだ未熟なフリーのカメラマンであったとしても、彼女たちはいつもの通り、カメラを向けられた瞬間にプロとして向き合ってくれたのだと思うのです。

そこには、プロの仕事の素晴らしさを体験させてもらった感謝の気持ちと尊敬しかありません。

ただ、私は目の前の人ともっとコミュニケーションをとり、本来備わる、何も意識しない時の自然な笑顔を撮りたい、と思ってしまうのです。

これは、#1の冒頭にも書いたように、私自身が感情をおさえてきたがために、奥底に求める「本当の感情」に強く惹かれるからなのかもしれません。

人を撮り始めた頃から、自身の未熟さと向き合い、自己肯定感の低さと向き合いながら、この時の体験がその後の写真家としての方向性を決めるにあたり、重要なポイントとなったような気がします。

私は、自然な笑顔しか撮りたくない。
カメラマンとして食べていくのに、そんな甘っちょろいこと、わがままを言っている場合なのかという一抹の不安を抱えつつも、この時はっきりとそう気づいた私がいます。

どうしてこの写真展をしようと思ったのか。

そんなこんなで、さまざまな条件下でハードな出張撮影を繰り返しながら3年ほど経った頃、私はスタジオを作り女性のプロフィール写真を撮り始めました。

一蓮托笑写真展の原点は、この「自然な笑顔しか撮りたくない」ことがまずはスタートとなっているような気がしています。

つづく。


2024年8月現在、写真展「一蓮托笑2025東京」開催実現に向け、準備中。
50歳以上の女性を対象にしたモデル公募詳細は、9月頃公式ラインまたは無料メルマガで発表の予定です。

過去の困難を笑顔に変え半世紀を生き抜いた女性50人のストーリー
一蓮托笑2024福岡は公式サイトで公開中

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