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マルクスとエンゲルス、そして資本主義の行方

人類の歴史は、原始共同体の解体以来、支配と被支配の闘争、搾取と搾取との闘争の歴史であった。近代では、支配者としての「ブルジョワジー」と被支配者の「プロレタリアート」の闘争の時代である。しかし、ブルジョワジーとプロレタリアートの闘争は、やがてプロレタリアートの勝利に終わり、後に「支配」🆚「被支配」、「搾取」🆚「被搾取」の関係は終わり、輝かしい共産主義体制が確立されるだろう。これが1848年2月革命(フランス)の直前にロンドンで出版されたマルクスとエンゲルスのパンフレット「共産党宣言」の内容である。

「資本論」の問題点


これ以降、特にマルクスは資本主義の分析に移る。この成果が「資本論」(1867年)の出版であった。この資本論は19世紀中期までの資本主義が利潤率の低下により、やがて自然に解体に向かわざるを生えないことを論じたものであった。つまり、利潤率の低下により、資本主義の解体は歴史の必然であること、それを乗り越えるのがプロレタリアートであることを「科学的に分析した著作」と言われてきた。しかし、このマルクスの見解は見事に外れた。

マルクスやエンゲルスが分析した産業社会、つまり、資本主義は「鉄道と海運」を中心とした産業社会であった。確かに、この「鉄道と海運」を中心とした産業社会は競合相手と競争会社が乱立し、それが地方によって整理統合される過程にあろうとも、競合会社の乱立のため、各企業の利潤率が低下していく傾向にあったのは間違いない。

しかし、資本主義は19世紀末から20世紀初頭にかけて、主要産業の質を変えていった。「鉄道と海運」の産業から「自動車」産業への転化である。この新しい産業によって、旧来の産業での利潤率の低下傾向は見事に歯止めをかけられ、新産業での利潤率を向上した。この「自動車」産業の時代の次に来たものは、おそらく第二次大戦期の「家電」産業であろう。

家電産業の次に来たものは、21世紀に入るころに盛んになったAIを中心とした産業、特にスマホ産業であろう。かつての家電産業が各家庭に一個ずつという傾向であるのと同様に、このスマホ産業は各個人にそれぞれという時代に入っている。このようにして、資本主義はその主要産業を次々に新しく開拓することによって、その体制を長らえてきたのである。

それとともに、現代国家の「質」の変化も考慮に入れておかねばならない。特に、先進資本主義国家の場合、各産業の製品の販路は、自国民、あるいは他国民であっても、それぞれ購入資格を持つ購入層を相手にしなければならないとすると、先進資本主義の国家群の場合、この購入資格を持つ購入層の保護育成を計る政策をした打ち出さざるを得ない。とすると、先進資本主義国家群の場合、この中間層の保護育成をはからねばならない。

さて、ここから先、現代資本主義がどのような方向に向かうのか、予断を許さない。識者によって、新しい資本主義はどうあるべきか、今問われている。


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