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サウナのルール変更にまなぶ、お金と政策の深い関係


国や自治体の政策はあなたに深い関係があるんです!だから投票に行きましょう!

といわれてもピンとこない人も多いと思います。

メディアで取り上げられるのは、国会議員や官僚が関わる国家予算や法律についてですが、規模が大きすぎてイマイチピンときませんし、そもそも政治家も官僚にも知り合いいない人が大半なので身近でもありません。

そもそも普通に生活していると行政のお世話になることもほとんどありません。役所との接点があるのは、引っ越しや結婚の届け出をするときや粗大ごみの回収をお願いするときぐらい、という人も多いのではないでしょうか。

その気持ち、よく理解できますが、やっぱりいわせてください。

政策と皆さんの生活大きなかかわりがあるんです。

今回はビジネスと政策がテーマです。ルールが変わると、皆さんの会社の売り上げも大きく伸びるかもしれないよ、という話です。

そのことを説明するためにちょうど良い題材がありました。私が好きなサウナについてです。

1)山梨県が主導したサウナのルール変更


最近サウナファン界隈で話題になったのが、山梨県でアウトドアサウナ(※)のルール変更が行われたというものです。

※アウトドアサウナ:屋外にテントなどを設置してそのテントの中でサウナを楽しむスタイル

日経新聞にこんなことが書いてありました。
「「やまなし自然ととのいプロジェクト」を掲げサウナ振興に力を入れる山梨県では4月、県内の各自治体の許可を取れば、水着着用のうえ男女混合でサウナを楽しめる事業を営むことができるよう条例が改正された」
2022年5月2日 日経新聞HP

男女が同じスペースでアウトドアサウナに入る「事業」(=ビジネスとして、ということ。個人で楽しむ分には関係ありません)が山梨県でできるようになりました!という内容です。

「お、テントサウナか!面白そう!いいね!」で終わってしまうとちょっともったいないのがこのネタです。

このルール変更をビジネスの視点で考えてみると、また別のものが見えてきます。

例えば、こんなメリットがありそうです。

・地元の観光業の人たち
「山梨県でしかできないアウトドアサウナ体験!」をPRすることで、お客さんを獲得することができるかもしれません。「長野行こうと思ってたけど山梨行こうかな」という感じです。

・全国のアウトドアサウナのグッズ販売店の人たち
アウトドアサウナをビジネスとしてやってみよう、という人が増えると、アウトドアサウナ用品を買う人が増えますね。アウトドアサウナが普及すれば個人で買う人も増えそうです。ビジネスチャンスですね。

こんな風に考えてみると、政策とビジネスって直結しているなと思えてきませんか?ルールが変わると新しいビジネスのフィールドが大きくひらけてくるかもしれないのです。

「ちょっとルールに関心を持ってきた」という方のためにもう一つ。「ルール変更って国?県?どっちにお願いすればいいの?」という疑問についてもアウトドアサウナのルールを題材に回答します。

2)サウナを取り巻くルール‐国と自治体の力関係‐


サウナは、公衆浴場法という国がつくったルールの中で運営されています。こんな感じです。

公衆浴場法第3条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000139

この内容を意訳すると

「サウナをビジネスするときは、換気とか、衛生面とか気を付けてくださいね。細かいルールは都道府県が決めるのでそれに従ってくださいね」

となります。要するにこのサウナの世界では、国は「都道府県でルールをちゃんと決めてね」ということしか決めていないわけです。

これを受けて山梨県では、県ローカルのルールで、
・脱衣所には鍵のある戸棚をつくる
・流し場には勾配を付ける
・浴室内には水飲み場をつける 
などといった細かいルール設定をしています。
参考:山梨県公衆浴場法施行条例

このようなつくりになっているルールを変える場合は、①国に掛け合ってガラッと法律自体を変えてもらうか、②自治体と連携してその地域に合ったルールを作るか、という2つのアプローチがありうることになります。

今回の山梨県のケースでは、②自治体と連携してその地域に合ったルールを作ったわけです。

具体的には

男女を混浴させないこと、という県のローカルルールを、知事が認めた場合には適用しない(=混浴していいよ)ように変えたんですね。

国主導ではなく、自治体主導のルール変更の一例です。「国では色々ルール決めてるっぽいけど、自治体は何してるのかよくわからない!」という人も少なくないと思いますが、実は国は細かいことを決めずに、自治体で詳細を決める、というルールはたくさんあります。

皆さんのビジネスに関係のあるルールも、実は自治体が細かいことを決めている、ということもあるかもしれません。

3)役所のルールはビジネスにも直結する

今回はサウナを取り巻くルールを多くの皆さんにも関係のあるビジネスと絡めて説明してみました。

起業している人でも勤め人でも、多かれ少なかれ、国や自治体が決めたルールの中で仕事をしています。

皆さんのビジネスを取り巻くルールの中にも、きっとそのルールを変えるだけで、お客さんにとっても地域にとっても、そしてあなたの会社にとってもプラスの影響が発生するものがあるかもしれないということが分かってもらえると嬉しいです。

普段の業務から離れて、一度仕事を取り巻くルールを俯瞰してみるのも悪くないかもしれません。よし、サウナいこう。

(執筆:西川貴清)

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