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官僚の多様化が役所の効率化につながるよね、という話

官僚の中途採用に関する記事について、官僚の働き方の観点からコメントをしました。
参考https://www.at-s.com/news/article/national/1203486.html

だいぶ知られてきていますが、官僚の働き方は民間企業と比べてもはるかに遅れています。

国会中の官僚の業務は時に明け方まで続きます。その中の作業には、大臣や職員のための資料印刷や、資料へのインデックスシールはり、課長補佐→課長→局長などの順に資料の確認を取るプロセスなどが含まれます。デジタル化、コミュニケーションツールの活用で効率化できる余地はあります。

以前、国会で紙ばかりが相変わらず使われているアナログな現状についてブログ(https://note.com/takakiyo_komuin/n/n3cea622458d2?magazine_key=m96210a76c35a)で問題提起しました。官僚の働き方を変えるには、国会の質問通告が遅い、という課題もありつつ、行政内部で変えられることもかなりあるはずという問題認識です。

国会の資料をデジタル化すべき、と提案したところ、現役官僚と思われる方々から、実務上、野党の追及があった際にはさっと差し出せる紙資料のほうが使い勝手がいい、という意見をもらいました。

わかる、わかります。大臣が想定外の質問を受けて、答弁できないと、国会が紛糾します。大臣がまごついているところを報道されると、通すべき法案が通らない、という事態になるかもしれません。大臣や幹部が困ったときにさっと答弁すべき内容を差し出すには、紙のほうが現状は便利という意見も理解します。

でも、それでも現状紙が原則となっている国会資料についてデジタルを原則にするスタンスにシフトすることは必要だと考えています。デジタルを原則にしたうえで、国会での議論の在り方を議論すべきです。

それは未来の人材確保の観点からの提案でもあります。紙の無駄遣いは官僚のリソースの無駄遣いにもつながっています。2020年の官僚の退職者数は、2013年度から約40%増えたとする調査もあります。長時間の残業が官僚の退職の一つの理由になっていることは間違いないはずです。
https://www.jinji.go.jp/kisya/2205/taisyokuzyoukyou2022.html

また、官僚の東大生離れもよく報じられています。東大生が入ればいい、というわけではないでしょうが、人材を引き寄せる魅力ある職場ではない、と外部から判断されているのは事実でしょう。https://news.yahoo.co.jp/articles/61e994f0e0f1d6e94b675fa8d42f4a4cbe9ebbec?page=2

官僚の仕事は日本をよくするための政策を作れるという大きな魅力がありますが、働き方のせいで霞が関の門をたたく人材が減っているとすれば、大問題です。

「官僚の働き方」を一つの政策であると考えるなら、政策を動かすには当事者の声が一番の原動力です。私のように役所をやめた人間が外部から騒ぐよりも、当事者である官僚側に変えようという機運がうまれるほうが、よっぽど現状を変える力になります。

実務レベルで組織の中の古いしきたりに疑問を持つ人が多くなること、幹部レベルでトップダウンで変革に取り組もうとする人が増えることで、「官僚の働き方」は変わる可能性が高まると考えています。

そういうわけで、官僚の中途採用が若手・中堅に限らず、幹部職員においても進むべきと私は考えています。また、働き方改革の観点だけでなく、生え抜き官僚の政策実現能力と中途官僚の専門スキルが合わさることで政策の質も上がるとも考えています。


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