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勉強コラム 熱力学編 1.熱とエネルギー

※このノートは私が分かりやすい表現で記載してます。厳密な定義は教科書を参照してください。なお、基本的に古典熱力学(巨視的)を主に勉強します。

熱力学の初回は基礎として「熱とは?」と「エネルギーとは?」について勉強していこうと思います。基本的には高校の物理でも取り扱う内容ですね。

1.Jouleの実験

 少し歴史の話をまとめます。
 19世紀の初めごろまで、熱は質量のない流体、熱素(caloric)として捉えられており、熱素という流体の授受により熱現象が説明されてきた。
 しかし、19世紀初頭当たりに摩擦熱が無限に発生することが実証されたり、運動による仕事が摩擦により減少し、摩擦熱を生み出すことが明らかになり始め、熱素による説明が困難になっていった。そしてJoule(ジュール)が仕事と熱に関する実験を行い、一定の割合で仕事が熱に変換されることを定量的に示した。
 Jouleの実験は、端的に言うと水が入った容器に撹拌機を設置し、その撹拌機を滑車を用いて重りの位置エネルギーで駆動させる実験系を用いて、「重りの位置エネルギーの減少」と「水の温度上昇(撹拌機で温度が上昇する)」の関係性を調べた実験である。実験系についてはネットでジュールの実験と検索すれば見ることができる。

 Jouleの実験により熱[kcal]の仕事当量J[kJ/kcal]の関係が明らかになった。

W:仕事[kJ]
J:熱の仕事当量[kJ/kcal]
Q:熱量[kcal]

なお、現在のSI単位系では熱量Qも仕事Wと同様に[J](ジュール)という単位を使用する。[kcal]は今時食品のエネルギーでしか聞いたことがない。ちなみに、[kcal]とは、水1kgの温度を1℃上昇させるのに必要な熱量という定義である。

2.温度

 温度とは、人間の感覚でいうと「暖かい」「冷たい」を表現することができるパラメータである。一般的には[℃](セルシウス度、摂氏)、[℉](ファーレンハイト度、華氏)、[K](ケルビン、絶対温度)の3種類の単位が用いられている。
 ℃は、760mmHgの圧力条件下での純水の氷点を0、蒸気点を100としたスケール(100分割)の単位で日常生活上で用いられており、一般的な温度計測機器もこの単位を用いる。
 ℉は、アメリカでよく用いられる単位で、純水の氷点を32、蒸気点を212としたスケール(180分割)の単位で、1℉の幅が℃の場合と異なる。関係式は以下のようになる。

 Kは、絶対温度で以下の式で℃との換算ができる。

絶対温度とは、ある状態の気体の体積膨張の割合は1/273でほぼ安定しているため、膨張を続けて圧力が0になる(ミクロで見ると分子運動が停止する状態)温度を0として定めたスケールである。熱力学の計算式は、すべてこの絶対温度で計算することが必要である。セルシウス度で計算すると、値が変になることに注意する。
 
なお、物体の温度に関して-273.15より低い温度が存在しないことを熱力学の第三法則という。

3.熱平衡と比熱

3.1.熱平衡

 ある温度差のある物体A、Bを接触させた状態で放置すると、AとBの温度は同じになる。これは高温側の物体から低温側の物体に熱が移動するからである。このようなとき、両物体は「熱平衡(thermal equilibrium)」の状態にあるという。

3.2.熱力学の第ゼロ法則

 物体A,B,Zがあり、AとZ、BとZがそれぞれ熱平衡状態にある場合、AとBも熱平衡の状態にあるという。これを熱力学の第ゼロ法則という。

3.3.比熱

 ある同じ物体を加熱して温度を上昇させる場合、質量が大きい物体程温めづらく、小さい物体は温度が上昇しやすい。これは、温度上昇に必要な熱量が、質量に比例しているからであり、その関係式は以下で表せる。

Q:熱量[kJ]
c:比熱[kJ/kg・K]
m:質量[kg]
T2、T1:変化前後の温度[K]

 ここで、cは物体の種類によって決まる定数で比熱(specific heat)と呼ばれる。比熱は「1kgの物体の温度1K上昇させるのに必要な熱量」と覚えとけば、瞬時にこの式が導ける。なお、熱容量とはc(比熱)×m(質量)で表される値であり、意味は「物体の温度を1K上昇させるのに必要な熱量」ということになる。
 比熱は、温度によって変化するパラメータであるため(温度Tの関数)温度変化が大きい場合は積分形の式を用いる。

cm:平均比熱

4.まとめ

今回の熱力学は「熱とエネルギー」について勉強しました。まとめは以下になります。
①19世紀にJouleらによって、熱量と仕事が同種の物理量であることが実証された。
②Jouleの実験により熱の仕事当量(1kcal=4.1868[kJ])が明らかになった。
③温度はセルシウス度(100分割)、ファーレンハイト(180分割)、ケルビン(絶対温度)があり、熱力学の計算はケルビンで計算しなければいけない。
④絶対温度は、気体の圧力が0になる(分子運動が停止する)温度を0として定義された温度である。0[℃]=273.15[K]である。(熱力学第三法則)
⑤比熱cは「物体の温度を1K上昇させるのに必要な熱量[kJ/kg・K]」。熱容量は比熱×質量である。

ご精読ありがとうございました。
次回は、状態量と熱力学第一法則について勉強したいと考えています。
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