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現代のアメリカンドリーム〜トロフィーワイフがビリオネア帝国を作るまで〜

お騒がせセレブリティ、ファンドを作る。

キム・カーダシアンというリアリティショーのセレブをご存じだろうか? 

日本では知らない人と知っている人が半分・半分ぐらいだろう。もしかしたら、有名ラッパー、カニエ・ウェストの元奥さん(現在離婚調停中)として知っている方も多いのではないか?

しかし、それ以前にも、彼女は超有名なお騒がせセレブだった。「Keep Up With Kardashians」というリアリティショー(台本や配役がなく、本当っぽいリアルな生活を公開する番組)が生み出した、アメリカで一番有名なセレブリティである。

その主役であり、カーダシアン家の次女であるのがキム・カーダシアンが、プライベート・エクティ会社を創立した。そのニュースがアナウンスされてから、メディアはその話題で持ちきりである。(実際には、本日、英国王室のエリザベス女王が逝去されて、そちらに全部持ってかれているが。)

個人的にもかなり衝撃的だった。と同時に、ものすごく納得が行った。
キムのバックグランドや、現在やっているビジネスから考えても彼女以上に、特に、このプライベート・エクイティ(以後PEと省略)が注力する業種の、メディア、消費財、ホスピタリティーにおいて、成功している人物はいないと言っても過言ではない。
それ以上に私が注力したいのは、彼女の母親兼マネージャーであるクリス・ジェンナーがパートナーとしてこのPEに入ることだ。

何がってこの母親がすごい。キム・カーダシアンはもちろんのこと、少し前に、コスメブランドで、若干19歳にしてビリオネアとして名を挙げた、インスタグラムの女王・カイリー・ジェンナーも、彼女の末娘である。
今回は、このスーパー・ママージャーのクリス・ジェナーの話と、娘のキムが、元ベンチャー・キャピタリストと創立したPE・SKKY Partnersの展望について書いてみたい。 

※キム・カーダシアンの話はこれ以上触れないので、気になる方はこちらのi-Dの記事でもみて欲しい。 (タイトルがまた彼女らしい記事なので、これを選んだ。)

何を隠そうこの肝っ玉お母さんのクリス・ジェンナー。子供たち全員がミリオネア〜ビリオネアである。クリス自身もいれた一家の総資産価値はなんと、35億ドルらしい。(ちなみに、クリスの元旦那で、突然女性にトランスフォームしたケイトリン・ジェナーと末っ子のできそこないロブは外した。入れると、36.1億ドル。誤差に思えるのが、やばい。)

カーダシアン&ジェナー家の資産価値
長女:Kourtney Kardashian – US$65 million :謎のライフスタイルブランドPooshをやっている。謎なのに6500万ドルって。
次女:Kim Kardashian – US$1.8 billion:コスメブランド・KKW、下着ブランド・SKIM、PE・SKKY Frimなど色々。
三女:Khloé Kardashian – US$50 million:アパレル・Good American や番組ホストなど。
四女:Kendall Jenner – US$45 million:ハイブランドのランウェイや、有名雑誌にひっぱりだこのスーパーモデル。最近、818 Tequilaというテキーラブランドを始める。
五女:Kylie Jenner – US$900 million:一家で最初のビリオネア。セクシーに見える唇をつくるKyle Cosmeticの創立者。2019年に自社の51%をコスメ大手のCotyに約6億ドルで売却。
ママ:Kris Jenner – US$190 million:ミリオネア量産ママ。リアリティーショーの契約金と娘の稼ぎの10%が入ってくるらしい。
https://www.scmp.com/magazines/style/celebrity/article/3174130/who-richest-kardashian-jenner-familys-net-worths-ranked

きっかけは〇〇〇だった


このカーダシアン家。有名になったきかっけは、なんとお騒がせ次女キムと当時のボーイフレンド・RJとの破廉恥な行為のビデオの流出だった。
セレブの破廉恥ビデオが話題になって、世間を賑わせるのは、割と米国では少なくない。(あの有名なホテル大手の娘さんとか。)
このカーダシアン家がすごいのは、母親であるクリスが、娘の破廉恥ビデオ流出のピンチをX100億倍くらいのチャンスに変えたことだ。
このタブロイドのせいで(おかげ?)で、有名になっても、汚名も着せられて、せいぜいゴシップ紙を賑わすだけで終わってもおかしくなかってだろう。
ところが敏腕ママージャー・クリスは、これをきっかけにリアリティーショーの知名度をあげ、さらには、娘全員をフォローアー数モンスター級のインフルエンサーとして育て、さらには全員を超エリートの起業家にして、35億ドルのカーダシアン帝国を作り上げたのだ。
きっかけはどうあれ、ただのリアリティーショーから出た一家が、全員ミリオネアレベルの成功を収めるのは、砂漠で金の針を見つけるすごいことではなかろうか?

そんな超凄腕のクリス・ジェナーが娘であり、稼ぎ頭キム・カーダシアンがミリオネア量産ママとスタートアップや事業投資のためにPEを立ち上げた
2013年にハワイに引っ越してきて、はじめて「Keep Up with Kardashians」をみて衝撃をうけ、それ以降カーダシアンファンの筆者としては、胸が高鳴らないはずはない。

Instagram:@krisjenner
Kris Jenner のInstagramより。カーダシアン家の写真。圧がハンパない。

プライベート・エクイティとは?

ここで少しプライベート・エクティについて少し説明しよう。
まずは一番気になるのは、スタートアップに投資をしてそのスタートアップのイグジットによって投資回収をするベンチャーキャピタル(VC)との違いだ。筆者もなんとなくしか理解しておらず、これをきっかけに調べてみた。
※イグジットに関しては以前のブログの「スタートアップのゴールってなんだ?」に書いてありますのでそちらをご覧ください!

色々調べてみたが、一番しっくりきたのはこちらのInvestopediaの説明だ。

Private equity is sometimes confused with venture capital because both refer to firms that invest in companies and exit by selling their investments in equity financing,… However, there are significant differences in the way firms involved in the two types of funding conduct business.
Private equity and venture capital (VC) invest in different types and sizes of companies, commit different amounts of money, and claim different percentages of equity in the companies in which they invest.
Investopedia: https://www.investopedia.com/ask/answers/020415/what-difference-between-private-equity-and-venture-capital.asp
 

要するに、企業やスタートアップに投資をしてその事業が大きく成長した分をリターンとして受け取るという意味では、PEもVCのひとつという風に捉えられているらしい。
ただ、投資をするビジネスの大きさやステージが違うそうだ。ほとんどのVCが、創業したばかりのスタートアップに投資をして、スタートアップが売却されたり、上場したりしてリターンを得るのに対して、PEの場合は、ある程度歴史と実績のある末上場の中小企業に投資や買収をし、その経営にも関与し、ビジネスのブラッシュアップをかけて業績をあげてから、売却してリターンを得るというのが通常のパターンらしい。
ちょっと前の話になるが、ペルミラというPEがスシローを買収して、業績向上の後、上場した話もある。(以下詳細参照)


あと、親族や、オーナー企業でPEを作り、そこで不動産投資などで資産運用している富裕層の知り合いの話も聞いたことがある。

まあ、ようするに結構自由が効くってことね。PEだと。

となると、キムがVCではなく、PEを作った意図というのは、スタートアップに投資して、イグジットで、はい!おまち〜。ではなく、投資・買収した企業の経営に真剣に携わり、成長を促す。ということなのではないだろうか? そこに娘・息子(別れた元旦那まで)をビリ・ミリオネアに育てたママージャーも携わる。

もう期待しないわけにいかない

ひとつ不安なのが、キムもクリスも投資のプロではないということだが、そこもさすがスーパーママージャー・クリス。ぬかりはない。The Carlyle Groupの元パートナーであるJay Simmonsがキムのパートナーとして入る。Carlyleグループは、Getty Imagineや、Supreme, Appleが買収したDr. Dreなど名だたる企業に投資してきた巨大PEである。そこで16年パートナーとして経験を積んだSimmonsが入るなら、投資家目線としてのチェックも問題ないだろう。(実はSimmonsからPEの創立をクリスにもちかけたという話もある。)

Instagram @kimkarrdashian: キムとパートナーのJay Simmonsの写真。迫力やばみ。

クリス・ジェンナーのすごさ

クリス・ジェンナーが子供たちをここまでにした凄さは、前の章でも触れたが、ここで少し彼女自身の経歴についても書いてみたい。
彼女は、ちょっとだけ普通の人より富裕層に生まれた、普通のアメリカの女の子だった。就職も普通にアメリカン・エアラインのキャビンアテンダスとして働いている。
ちょっと違うのは1度目の結婚した旦那さんがO・Jシンプソンを含めるセレブ専任の弁護士だったてことだ。

クリスの元旦那のロバート・カーダシアンはすでに逝去されている。OJSのドリームチームにいたり、それ関連でクリスのゴシップが再燃したりと色々あるが、ここではそこには触れないので、興味のある方はご自身でお願いしたい。

裕福で、成功している男性が、見目麗しい女性をお嫁さんにして、傍にトロフィーのように飾っておくということで、こういった女性を”トロフィー・ワイフ”と米国では呼ぶ。(ちなみに今使うと、女性差別。旦那さんにも失礼だから使っちゃだめだよ。)
クリスは、いわゆるトロフィーワイフだった。でも彼女はただのトロフィー=置物に収まる女性ではなかったのだ。
旦那からのお付き合いで、たくさんのハリウッドセレブとお友達になった彼女は、そのネットワークを武器に、娘のキムをパリス・ヒルトンの”スタイリスト”として推薦したり、ロバートの次に結婚したブルース・ジェンナー(現:ケイトリン。元オリンピックの選手でゴールドメダリスト)のマネージャーとして、コカコーラやVISAなどの大型スポンサーをブルースにつけたりしている。

そして「Keep Up with Kardashians」だ。

このリアリティーショーも実は、クリスの方から、テレビのホストやプロデューサーだったRyan Seacrestに持ちかけた話だったそうだ。これに関してのクリスのコメントがこうだ。

"Like, there's the little girls, and there's the older girls, and then there's my son. [...] Everybody thinks that they could create a bunch of drama in their lives, but it's something that I felt I didn't even have to think about. It would be natural." 
”小さな娘たちとその姉たち。そして息子。[中略]誰もが、自分の人生にドラマがあるっと思っているけど、私にとっては考えるまでもないことだったの。自然なことでしょ。
Wikipedia: https://en.wikipedia.org/wiki/Kris_Jenner

どこのだれが、ちょっと大家族だからって、自分の家族のリアリティショーを作ろうと考えるだろうか?
でもそれを、企画して、実際に制作・OAして、10年以上続く、1億ドルの価値のあるリアリティー番組シリーズにしてしまえる。それがクリス・ジェンナーなのである。

成功するか?失敗するか?

凡人では思いつかないアイディア・それを実行に移すための機動力行動力・使えるものをすべて使うアグレッシブさ。起業家に必要な全てを兼ね備えたクリス・ジェンナーと、その才能と美貌を受け継ぎ、現在、米国で一番影響力があると言っても過言ではないキム・カーダシアン。彼女たちが、投資のプロと立ち上げた。PE・SKKY Partner。
果たしてうまくいくだろうか?  答えは「わからない。」
どんなに成功すると言われたVCやPEでも必ず失敗する可能性がある。しかも投資リターンともなると、その時の経済状況や業界トレンドにもより、手腕だけではコントロールできないのがスタートアップや企業投資だ。
実際に2022年は2021年のVC好景気のリバウンドをうけ、投資金額や取引数が例年に比べて激減している。それに米国は超インフレだ。
だが、しかしかなり期待はもてる。(私がカーダシアンのファンであることは差し引いても)
セレブがVC創立や、スタートアップ投資をして、両者共に成功するケースは少なくない。
有名どころだと、90・00年代のヒップホップシーンを沸かせたSnoop Dogは、いま米国で若者に人気の投資プラットフォームのRobinhoodや、メタバースプラットフォームのSandboxの初期の投資家だ。テニス界のスター、セリーナ・ウィリアムズのベンチャーキャピタル、セリーナ・ベンチャーズは、2014年の設立以来、50社以上に投資し、その資産価値は140億ドル以上になっている。
超競争社会の米国エンタメ業界をサバイブしている上に、トップクラスのネットワークや情報がいち早く入ってくるセレブたちの先見の目は、確実に一般人とは違う。
スタートアップとしてもセレブが投資家になってくれると、無料で広告等になってくれたりして親和性が高い。
それに加えて、このSKKY Patnerが注力する消費財/EC・メディア・ホスピタリティ・ラグジュアリーブランドはカーダシアン家の十八番である。カーダシアン家がローンチしてきたKyle Cosmetic, SKIMS, KKWや、Good American がD2C業界でどれほど成功しているか、マーケティングのうまさを見ればそれは一目瞭然だろう。

クリス・ジェンナーは今年で67歳らしい。
彼女の若々しさや、(たくさんいじってそう‥。だけど)行動力、毎年・毎年新しいことにチャレンジしているのを見ると、同じ女性として、希望と勇気をもらえる。
クリスには6人の子供に11人の孫がいる。
私も歳をとったら、クリスのようなアクティブで、70歳目前にして、PEたちあげちゃうようなおばあちゃんになりたい。

というわけでまだまだ、私は Keep Up with Karadashians (カーダシアン家について行く)から離れなさそうである。

というところで今回のブログは終わろう。

あとがき

余談だが、最近米国で流行っているセレブから学べるMaster Class (TED Talkのセレブ版かな?)というプラットフォームでクリス・ジェンナーのクラスがオープンした模様。月$15の定期購読‥。迷うな。


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