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【パーソナリティ】HEXACOは他の概念とどのように関連しているのか?(Zettler et al., 2020)

今回は、特性を表す「HEXACO」モデルに関する論文です。他の概念との関係性をメタ分析により明らかにしたものです。

Zettler, I., Thielmann, I., Hilbig, B. E., & Moshagen, M. (2020). The nomological net of the HEXACO model of personality: A large-scale meta-analytic investigation. Perspectives on Psychological Science, 15(3), 723-760.



どんな論文?

この論文は、特性を測定するためのHEXACOモデルが、どのように人々の行動や結果に関連しているかを調べた研究です。

HEXACOモデルは、6つの性格次元(誠実・謙虚さHonesty-Humility、情緒性Emotionality、外向性eXtraversion、協調性Agreeableness、勤勉性Conscieousness、経験への開放性Open to experience)で構成されており、それぞれが特定の行動や結果(アウトカムドメイン:後で詳述します)と関連しています。

本研究では、HEXACOモデルの各次元と、それぞれの理論的なアウトカムドメインとの関係を大規模にメタ分析することで、これらの個人差が具体的な行動や結果にどのように反映されるかを初めて包括的に示しました。

以下が仮説として想定された図です。

P731

メタ分析の結果、HEXACOの各次元は、それぞれ特定のアウトカムドメインと強く関連していることが確認されました。
例えば、誠実・謙虚さは搾取、情緒性は不安、外向性は社交性、協調性は障害、勤勉性は義務、経験への開放性は探索に対応しているようです。

アウトカムドメイン とHEXACO各因子の関係

アウトカムドメインとは、研究において特定の性格特性や行動が影響を与える結果や成果の範囲を指します。具体的には、特定の性格次元がどのような結果や行動パターンと関連しているかを示すカテゴリーのことです。

上に示した図で言うと、中央部分がアウトカムドメインであり、それらのカテゴリーに属する性格や行動は、右側に書かれた内容と対応関係にある、というものです。

この論文では、HEXACOモデルの各性格次元が特定のアウトカムドメインとどのように関連しているかを検証することで、先行研究で用いられてきた概念との関係性を示しています。

以下の図で、各アウトカムドメインとHEXACOの関係が説明されていました。

P736
  1. 搾取 (Exploitation)

    • 誠実・謙虚さ次元に関連し、不道徳な行動、短期的な交尾行動、ダークトライアド特性(マキャベリアニズム、ナルシシズム、サイコパシー)、積極的な協力行動、環境行動が含まれる

    • 誠実・謙虚さ(H)は搾取と負の強い相関を示しており、この次元が高い人は搾取行動を取らない傾向が強い

    • 外向性(X)と経験への開放性(O)も搾取と負の相関を示していますが、その程度は誠実・謙虚さほど強くない

  2. 不安 (Insecurity)

    • 情緒性次元に関連し、恐怖、不安、回避行動、リスク回避、ストレス要因が含まれる

    • 情緒性(E)は不安と正の強い相関を示しており、情緒性が高い人は不安を感じやすい

    • 他の次元は、不安との相関が比較的弱い

  3. 社交性 (Sociality)

    • 外向性次元に関連し、社会的ネットワーク、リーダーシップ、積極的な感情が含まれる

    • 外向性(X)は社交性と正の強い相関を示しており、外向的な人は社交的である傾向が強い

    • 誠実・謙虚さ(H)と経験への開放性(O)も社交性と正の相関

  4. 障害 (Obstruction)

    • 協調性次元に関連し、不公正に対する無感覚、反応的な協力行動が含まれる

    • 協調性(A)は障害と正の相関を示しており、協調的な人は障害を感じにくい

    • 誠実・謙虚さ(H)とは負の相関を示し、誠実・謙虚な人は障害を感じやすい傾向

  5. 義務 (Duty)

    • 勤勉性次元に関連し、達成・業績、運動、完璧主義、自己制御が含まれる

    • 勤勉性(C)は義務と正の強い相関を示しており、勤勉な人は義務感が強い

    • 協調性(A)も義務と正の相関を示していますが、勤勉性ほど強くない

  6. 探索 (Exploration)

    • 経験への開放性次元に関連し、創造性、好奇心、保守性、偏見が含まれる

    • 経験への開放性(O)は探索と正の強い相関を示しており、開放的な人は新しい経験を求める傾向が強い

    • 他の次元は探索との相関が比較的弱い


感じたこと

HEXACOを違う角度から理解するという観点で、他のアウトカムドメインとの関連性をメタ分析から導いた点にオリジナリティがあります。

他方で、何か新しい発見があったというわけではありませんでした。意外な発見を楽しみにしてしまう自分もいますが、「まあ、そうだよね」という結果をしっかりと検証することにも価値がある、という研究視点も最近理解できるようになってきました。(そんな新しい発見ばかりじゃない!)

参考までに、過去のHEXACOに関する投稿も貼っておきます。


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