【マネジメント】『職場』の見方を変える書籍!関わりあう職場のマネジメントを読んで(鈴木, 2013)
「職場」のマネジメントにおいて必須の書、ともいえる、神戸大学・鈴木先生の書籍をようやく読了しました。この「関わり合う職場」という表現に、職場の持つさまざまな特徴が集約されており、学術書ながらとても実践的な書籍だと感じました!
どんな書籍?
本書は、相互に従業員が関わり合う組織や職場において、他者を助ける行動ややるべき事をきっちりこなす行動、そして仕事における積極的な創意工夫が行われる仕組みや、そのメカニズムを解明したものです。
組織行動論、経営管理論の学術書であるため、組織行動論で用いられる学術概念や分析手法あるいは、公共哲学を紹介しながら、関わり合う「職場」について、検討を進めています。
中でも、個人的に興味深いと感じたのは、組織ー個人という二元論でなく、の間に、「職場」という考え方を取り入れ、三元的な捉え方を行い、組織と個人の間の「職場」にこそ、支援行動や勤勉さ、創意工夫のヒントが隠されている、と指摘した点です。
(お恥ずかしながら、組織と職場の違いについて、自分の言葉で説明できる語彙を持ち合わせていなかったと、本書を読んで感じました・・・)
この書籍は、学術書のため硬い文章になっており、実務家や学生にはやや読みにくいかもしれません。しかしながら、メッセージはきわめて実践的だと感じました。
特に刺さった点を引用します。
組織の中で人はなぜ自発的に他者を助け、勤勉に働くのか
本書では、支援と勤勉にかかわる3つの行動として、組織市民行動、向社会的組織行動、組織的自発性の3つの概念を扱います。これらの概念の詳細説明は省きますが、これらの概念から、組織の中で自発的に他者を支援し、勤勉に働く要因を整理しています。
1.支援や勤勉を促す個人的要因
著者は、人は必ずしも善意だけで人を助け、秩序を守り、やるべきことをやるのではなく、社会的交換関係における互酬的な規範や、集団の高い凝集性やメンバーシップによって、支援や勤勉といった行動を取ると説明します。
加えて、もう一つの要素として、「印象操作・印象管理」を挙げています。組織や職場において自分の印象を良くしたり、評価を高めようとする利己的な目的から、支援や勤勉な行動を取るとのこと。
2.支援や勤勉を促すコンテクスト
先行研究においては、支援や勤勉を促す要因として、個人レベルと集団レベル、組織レベル、そして組織間レベルのコンテクストに分けられるようです。
今回のフォーカスである「職場」に近い、集団レベルのコンテクストとして掲げられているのが、集団規範、仕事における相互依存性、目標の3つです。
組織的な自発性を促進する集団規範があれば、支援的な行動が促進されるのは自然な行動と考えられます。
また、仕事における相互依存性ですが、これは本書のタイトルにもなっている「関わり合う職場」を捉える概念として着目しているものです。相互依存性が高いほど、お互いを助ける機会を増やす一方、低い場合は、個人が自分の活動に集中し、支援の機会や建設的な提案が減るとのこと。
最後に、目標です。これは、個人的か集団的かという観点と、難易度によって支援行動の発生度合いを規定するようです。
具体的には、「個人」で「高い難易度」の目標の場合、支援行動のための自発性は低くなりますが、「集団」で「高い難易度」の目標であれば、目標達成のために相互に支援し合ったり、建設的な提案を挙げる行動が想定されるようです。
著者は、一昔前は、上で述べた個人レベルの要因が研究されてきたものの、近年では、集団、組織、組織間のコンテクスト要因が検討されていると指摘し、以下引用部のようにまとめています。
関わり合う職場だと、自発的行動が生まれる理由
本書の主眼である、「関わり合う職場」とは、概念的には仕事の相互依存性が構成要素である、と触れてきましたが、こうした仕事の相互依存性が、個人の自発的行動(組織市民行動や、協調行動)に繋がる2つの理由が解説されています。
1つ目は、「責任感の知覚」です。仕事の相互依存性が高いと、自分の仕事ぶりが他者の仕事に影響を与えます。こういった自覚を通じて、職場で言われたことをこなすだけでなく、より自発的に行動する、とのこと。
2つ目は、相互依存的になることでメンバーが親密になり、「互酬性」が生まれやすくなる点です。互酬性の意識が高い職場では、将来自分に返報されることを期待して、利他的な行動を自発的にとるこのこと。
また、相互依存性が高まり、集団の凝集性が強まると、援助支援を行いやすくなるのも一因とのこと。
最後のメッセージ
本書を締めくくる最後の文章をそのまま引用します。血の通った暑い言葉だと感じました。
感じたこと
組織と個人の間にある「職場」に注目し、しかも、「関わり合う職場」という言葉を用いて、相互依存的な職場のあり方における、支援行動や勤勉さ、創意工夫の生じる過程を示した点は、本当に興味深いと感じます。
個々人のリーダーシップや特性、行動に着目するのも大事ですが、職場におけるコンテクストに注目するのは、特に日本企業においては大切です。
最後のメッセージにあるように、組織と言う概念とは異なり、「仲間との関わりあい」が、職場という言葉に含まれており、だからこそ、個人への行動に対するインパクトも大きいように思います。
組織開発も、本来の意味的には、「職場開発(Work group development」の方が近いのかもしれません。
今後は、もっと「組織」「職場」と言う言葉を、意図的に使い分けたいと思わせてくれる良著でした。
備忘:
本書においては、マルチレベル分析についても一部言及がなされているので、そちらについても忘れないように引用箇所を明記しておく。
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