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【リーダーシップ】部下がリーダーからの支援を認知すると、創造性が高まる?(Amabile et al., 2004)

先行研究をレビューしていると、Perceived Organizational Support(POS:知覚された組織的支援)という概念をよく見かけます。
組織による従業員への支援について、従業員が抱く全般的な信念といわれるPOSですが、その派生形として、Perceived Leader Support(PLS)なるものがあるようです。今回は、このPLSを用いた論文の紹介です。

Amabile, T. M., Schatzel, E. A., Moneta, G. B., & Kramer, S. J. (2004). Leader behaviors and the work environment for creativity Perceived leader support. The leadership quarterly, 15(1), 5-32.


どんな論文?

この論文は、リーダーの支援が、部下の「上司が支援してくれている」という認知を高め、その結果、部下の創造性を高めることを示したものです。加えて、この研究では、どのようなリーダーの行動が、こうした部下の認知に有効かも示しています。

ポイントは、上司の支援そのものではなく、上司が支援してくれているという部下の認識にあります。上司がサポートしても、部下がそれを良しとするかは別の問題だからです。

では、なぜPLSが部下の創造性を引き出すと想定されたのでしょうか?
著者らは、過去の研究(Scott & Bruce, 1994)より、リーダーの行動と個人の創造的なパフォーマンスを関連付けるという研究結果を参照しています。
その論文において、両者をつなぐ要因として、知覚された職場環境(Perceived Organizational Support)があげられていました。

著者らは、こうしたレビューを踏まえ、部下の創造性は、部下の認知によって変わるものであり、その認知に影響するリーダー行動があるはず、と想定したわけです。

研究は、7つの企業の26のプロジェクトチームの238人に対して行われました。「日常調査票」と呼ばれる、いくつかの設問と自由記述で構成されるサーベイを毎日行い、リーダーからの支援に繋がる行動を定性的に分析すると共に、リーダーの支援に対する認知と創造性の関連性を分析しています。

その結果、リーダーの支援に対する部下の認知が、部下の創造性に与える影響と、具体的なポジ・ネガ両面のリーダー行動が明らかになっています。


部下の創造性を引き出す、リーダーの行動

定性的な分析から、文献では、リーダーとして特に重視すべき行動として、以下を挙げています。

(ポジティブ:積極的に取ると良い行動)

  • コミュニケーションをはじめとする対人関係のスキル

  • プロジェクトの進捗状況について有益な情報を継続的に入手する能力

  • 部下のアイデアを受け入れ、評価する姿勢、部下の感情(承認欲求を含む)への共感

  • プロジェクトに関連する情報を授受するための対人ネットワークの活用能力など


(ネガティブ:避けるべき行動)

  • 任務を受ける部下の能力やその他の責任を十分に考慮せずに任務を与えること

  • レベルの高い部下の仕事の詳細をマイクロマネジメントすること

  • (技術的無能、対人的無能、不注意、怠惰のいずれが原因であれ)困難な技術的問題や対人的問題に不適切に対処すること


Perceived Leader Support vs Perceived Supervisor Support

ここまで読んでくださった、研究に詳しい方々は、もしかすると「あれ?Perceived Supervisor Support(PSS)もあったはず。何が違うの?」と感じているかもしれません。

PSSは、POSを提唱したEisenberger氏によって示された概念で、知覚された上司の支援と訳されます。PLSと似たような言葉です。
PSSを詳細に調べていませんが、ざっと定義を見る限り、両者はほぼ同じことを指しているようです。

PLSもPSSも、対象となるのは「直属の上司」です。Eisenbergerら(2002)が組織心理や組織行動、Amabileら(2004)が創造性という、研究領域上の立ち位置の違いから、たまたまほぼ同じ概念にたどり着いたのかもしれません。

粗い理解ですが、Perceived シリーズのベースである「Perceived Organizational Support」を扱っているEisenbergerらの示したPSSの方が、上司の支援という概念を理論に即して扱っている印象です。


感じたこと

リーダーシップに影響を与える要因は何か?という観点で、いろいろと文献を探るうちに、このPLSにたどり着きました。
リーダーは、その上のリーダーによって影響を受けるというのは、実際ありそうな話です。

ただ、この文献の主眼は、あくまで「部下の創造性を高める、部下の上司に対する認知」であり、その認知の概念を精緻に表すというよりも、創造性に影響する要因としての行動に紙面の多くが割かれています。

そのため、リーダーに影響を与えるリーダー、を調べるためには、PSSにも当たる必要がありそうです。

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