【パーソナリティ】HEXACOがオーセンティック・リーダーシップに与える影響とは?(Malik, et al.,2023)
パーソナリティを表す概念であるHEXACOが、オーセンティック・リーダーシップに与える影響を示した論文です。
どんな論文?
本研究の目的は、HEXACOという特性モデルを用いて、オーセンティック・リーダーシップの前提条件と、その結果要因を特定することです。
それまでの研究で、ビッグファイブの特性がオーセンティック・リーダーシップに与える影響は分析されていましたが、Honesty-Humility(正直さー謙虚さ)という6つ目の要因が明らかにされたのは本研究のオリジナリティです。
加えて、構造方程式モデリング(SEM)を用いて、オーセンティック・リーダーシップがどのような要素から影響を受け、同時に、どのような要素に影響を与えるのか、という点について、心理的安全性と従業員エンゲージメントへの影響を検証しました。以下が仮説の検証に用いられた図表です。
分析結果
第一に、HEXACO特性モデルの各次元がオーセンティック・リーダーシップの形成において正の関連性を持つことが明らかになりました。
影響の強い順に、
感情性 Emotionality(β=0.275, p<0.001)※ビッグファイブの「神経症的傾向のポジティブ版」
外向性 eXtraversion(β=0.264, p<0.001)
経験への開放性 Openness to experience(β=0.220, p<0.001)
協調性 Agreeableness(β=0.219, p<0.001)
誠実性 Concioustious(β=0.188, p<0.001)
誠実-謙虚性 Honesty-humility(β=0.094, p<0.05)
※上述の英文の太字個所をつなげると「HEXACO」になります。
第二に、オーセンティック・リーダーシップが心理的安全性(β=0.280, p<0.001)および従業員エンゲージメント(β=0.542, p<0.001)に与える影響も確認されました。
また、これらがタスクパフォーマンスに与える間接的な影響も明らかになりました。
つまり、心理的安全性と従業員エンゲージメントが媒介することで、オーセンティック・リーダーシップが従業員のタスクパフォーマンスに影響を与えることが示されています。
考察のパートでは、感情性がオーセンティック・リーダーシップに与える強い影響が特に注目されました。感情性の高い個人は、自己認識や他者への共感力が高く、これがリーダーシップにおいて重要な役割を果たしていると考えられるとのこと。
また、外向性や協調性などの他の性格特性もリーダーシップの形成に寄与しており、特に外向性の高いリーダーは積極的な対人関係を構築しやすいことも示唆されています。
そして、実践的示唆として、これらの結果は、リーダーシップ開発プログラムにおいて、HEXACO特性モデルの各次元を考慮することの重要性を示しています。特に感情性や外向性を重視した育成が有効とのこと。
参考:HEXACOモデルとは?
ちなみに、過去の投稿で、いくつかHEXACOの解説をしています。簡単に言えば、これまでビッグファイブのように、5つの特性で説明されることの多かった人の性格特性に対し、Honesty-Humility(正直さー謙虚さ)という6つ目の要素を加味したものがHEXACOです。
前回の投稿でも紹介した通り、Honesty-Humilityの要素がリーダーシップに与える影響が無視できないものになっており、今回の文献でも、Honesty-Humilityがオーセンティック・リーダーシップに与える影響の有意性が確認されたことから、その流れを補完するものと言えそうです。
感じたこと
HEXACOに関する論文も、最近ではかなり報告されているようですが、HEXACO×リーダーシップの研究はまだまだ発展途上と言えそうです。
ただ、謙虚さという特性の重要性が、リーダーシップ発揮においても重視されていることから、この領域がどんどん注目されていくのだろうと想像しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?