顧客に会おうとしない

大手メーカーの研究開発者が顧客に会おうとしない理由

大手メーカー様の研究開発部門から講演依頼をよくいただきます。悩みは共通しています。

「顧客視点発想に変えるにはどうすればいいのか?」

デザイン思考やDXなどの新しい方法論の取り込みには貪欲。大きな投資もしています。でも低迷から抜け出せません。

事前打ち合わせを重ね、講演で参加者と話し合い、その後のフォローで感じる点も、共通しています。
エンジニアが全くお客様に会っていません。
研究開発拠点で仕事をする日々を続けています。

「顧客視点に変えるには、お客様に会うことです」と、手を変え品を変え、様々な事例を紹介してお伝えします。
参加者からも「確かに」と同意をいただけます。
でも行動が変わりません。

サービスマーケティングを学んで、理由が分かってきました。「価値はどこで生まれるのか?」という根っ子の認識が違うのです。

大手メーカーは「ものづくり」の成功体験があります。
ものづくりでは技術の種から強い製品を生み出します。
「自社技術を製品に結集し、価値をお客様に提供しよう」と考えるのです。
ものづくりの成功体験がある企業では、研究開発部門で価値が生まれるのが常識。

しかし今や就業者の7割以上がサービス産業。
メーカーもサービス化が進んでいます。

ジョブスがアップルに戻ってきた2000年頃、こう言ったそうです。

「我々はユニークなマーケティングとイノベーティブな製品で勝ってきた。21世紀はもう一つの柱、カスタマーサービスが必要だ」

そして世界中にアップルストアを作りました。

私がMacのトラブルで困った時のこと。AppleCare+でサポート依頼すると、数秒後にスタッフから折り返し電話。親切丁寧に電話で問題解決をサポートしてくれました。完璧なサービスでした。

「サービス化」はあらゆるビジネスで進んでいます。
iPhoneをアプリなしで使う人はいません。
GEもジェットエンジンの稼働監視サービスを提供しています。

サービスで価値が生まれるのは「顧客との接点」です。

まとめると、 
①ものづくり全盛期は、研究開発部門で価値が生まれるのが常識
②しかしあらゆるビジネスでサービス化が進み、「顧客との接点」で価値が生まれるのが新たな常識

「価値は研究開発部門で生まれる」という過去の常識を変えないと「価値は顧客との接点で生まれる」という現代に対応できない。しかし過去の成功体験と組織文化から抜け出せない。
これが大手メーカーの研究開発者が陥っているジレンマです。

どうするか?
研究開発棟から一歩外に出る。
顧客に会う。観察し、話してみる。
そして、顧客の悩みを理解する。
その上で、自分たちが何ができるかを考える。

「価値共創」という言葉があります。
価値は顧客とともに創るもの。
顧客に会わずして、価値共創ができるわけがありません。

オフィスを出でよ。そしてお客様から学べ。

すべては、そこから始まるのだと思います。


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