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アジャイルでの失敗とはなにか

「アジャイルを採用したソフトウェアプロジェクトの失敗率はその他の手法と比べて268%も高いことが判明」という記事を見かけました。

私もこれまでの経験の中でご多分に漏れずアジャイルが失敗した・うまくいかなかった、という話を聞いてきています。私自身もこれまでのアジャイルでの実践を思い返すと、3つの大きな失敗がありました。大きく分けると次の3つです。

  1. アジャイルへの無知での失敗

  2. アジャイルへの誤解での失敗

  3. プロダクトマネジメントでの失敗

これら私の失敗をふりかえりながら、アジャイルの失敗とは何かを書き綴って行きたいと思います。

アジャイルへの無知での失敗

最初の失敗はシンプルで、アジャイルに対する理解がないままプロジェクトでスクラムを実践したことでした。スクラムの原典であるスクラムガイド(当時は2013年版)はチラ見程度、アジャイルマニフェストにいたっては読んだ記憶もあやふやです。当時開発者のテックリードかつスクラムマスターを兼務するとなった方が説明してくれた話を聞いただけで、チームでやってみて、うまくいきませんでした。

  • プロダクトオーナーが不在(別場所で作業)

  • 分解されたタスクでしかないプロダクトバックログアイテム

  • 完成の定義がない

  • 価値を生まないインクリメント

スクラムに理解がないまま、自分たちのやり方に合わせたり、取捨選択をしたりしていました。今思えば、スクラムの各要素があるのかを理解すること、そもそもなぜスクラムをそのプロジェクトでやるべきかをチーム全員で理解することが必要だっだと言えます。そうしてはじめて、なぜそのプロセスが良いのかを腹落ちしながら進めることができるのです。

アジャイルへの誤解での失敗

次の失敗では、プロセス面でアジャイルを回すことには成功していたプロジェクトであり、チーム、イベント、成果物、全部揃っていました。揃っているのですが、チームの成長や自分たちが生み出すバリューというところが、あまり感じられないプロジェクトだったかように感じています。今、ふりかえればシンプルにマインドセットの部分が私自身未成熟でした。

  • スクラムの理論と価値基準に対してチームで理解がない

  • チームとして実験&学習のサイクルが回っていない

  • アジャイルのマインドセットができていない

プロセスが回っていても、スクラムガイドで言う理論や価値基準、アジャイルマニフェストやその原則を共通の価値としてチームが動けないことには、アジャイルなチームにはなれないということを後から理解しました。

プロダクトマネジメントでの失敗

最後はプロダクトマネジメントでの失敗です。シンプルにいえばビルドトラップに陥っており、リリースした機能が多ければ良い、開発者ならコード量多ければ良い、みたいな状態でした。

  • なぜプロダクト開発をしているかが腹落ちしていない

  • ユーザーに提供する価値についての理解が足りていない

  • ユーザー体験を考えられていない

「ユーザーに価値を届ける」というとても基本的なこと、それを実現するために自分たちが

失敗からの学び

失敗はこれらの失敗は避けるべきものだったのでしょうか。もちろん当時いたプロジェクト視点でいえば避けられるものなら避けるべきでした。ですが、当時の私含めたチームは当然失敗したくて失敗したわけでもありません。実践しながらいくつもの失敗と小さな成功を積み重ねて、アジャイルを学んできたのです。自分のアジャイルの成長曲線をざっくり表現すると以下のようになりました。

アジャイルなプロセスとマインドセットの成長曲線

①はプロセスばかりを追っていた時期です。②はトレーニングや書籍、イベントやコミュニティ参加をするようになったタイミングで、自分のアジャイルなあり方ということに対する理解がかなり深まった気がしています。そういった外の世界から刺激をもらい理解を深めたり視座を上げるきっかけが物事の学習には必要だと感じています。③ではそのアジャイルなあり方を理解して自分の中でのプロセス改善に対する解像度があがっていく時期です。④はプロセスとマインドセットの両輪が回るようになっていく時期です。

重要なのは私の失敗はこの成長曲線の中にたくさんあることです。うまくいかないことは失敗ではなく、本当の失敗はその失敗から学び、個人や組織の改善に役立てられないことです。①の成長曲線を終えて、②その点だけは私は自分自身や組織に少しでも還元できていたのかなと思います。そしてこの失敗から学ぶ=実験するということこそがアジャイルの本質だと私は信じています。

アジャイルで重要なのは、できるだけ小さく実験し、できるだけ大きな学びを得ることです。大方予想がついていることに対して大きなコストを掛けても、得られる学びは少ないです。最初に小さく実験し、リスクに適切に対処していきながら、価値を生み出せるようにするには、どのような道筋を立てるとよいのか。どのような組織であるべきなのか。そういった視点から仕事を進めてみると、よりよい価値創造に近づけるはずです。

その意味で、アジャイルでの本当の失敗とは、「失敗をふりかえり見つめ直さず、そこから何も学ばないこと」こそが本記事のタイトル「アジャイルの失敗とはなにか?」の答えとして終わります。

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