日立駅_3

なぜこの駅が好きなんだろう

昨日も書いたように、移動自体が目的になるような旅があれば面白いと思うのだけれど、その駅自体が楽しみで電車に乗るってのもの悪くない。その一つが日立駅だった。妹島和世による設計で、建築好きにも海好きにもたまらないであろうこの駅には、全面オーシャンビューのカフェもある。

僕は茨城へ行くついでに、足を伸ばして、日立駅まで行ったのだけど、疲れ果てていたことと帰りの電車が1時間に1本くらいしかなかったので、改札を出て、景色を眺めて、そのまま電車に戻った。往復数千円をかけて、この景色を数分間見てきただけなのであった。

それでも満足できたし、なにより夕方寄りの駅に差し込む日差しが最高に眩しくて、全然後悔はしていない。むしろカフェはいつ行っても混んでいそうなので、人気の少ない駅自体を見られればいいのかもしれない。どこまでも人ゴミが苦手である。

なぜこの駅が好きなんだろうと考えてみると、おそらく自然との向き合い方がちゃんと設計されているからなんだろうなあと思う。コンクリートで固められた要塞みたいな建築とか迫力しかない建物も場所によっては嫌いじゃないんだけど、やっぱり建物を建てるなら、その土地に馴染むというか違和感のない、できるだけ建物を感じさせないものがいいと思う。しかも駅という日常生活で使うものなら尚更そうだろう。

この駅も海に続く道の先には海があるし、夕方には夕日が差し込むし、そんな当たり前の感覚を取り入れているから好きなのだ。利便性のためだけに建物を作ったら、多分今の渋谷駅みたいになるんだろうけど、あそこには渋谷という街のコンテクストが(少なくとも僕には)感じられないし、だからこそ悪目立ちしてしまっているんだろう。渋谷らしい街を作るなら、あえて谷底に駅を作って地面を公園にしちゃうとか、なんかいろいろコンテクストの吸い上げ方はありそうだなあと思ってしまうのであった。

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