見出し画像

【読書レビュー】影法師/百田尚樹

こんにちは!
在宅が依然続く中で小説を読む時間が取れるようになった、なんて人も多いんじゃないでしょうか?^ ^
今回は、随分前に一度読んだけど内容を忘れかけていた百田尚樹さんの"影法師”を読んでみました。

百田尚樹さんと言えば、"永遠の0"、"海賊と呼ばれた男"など共感・感動を生む数々の作品を世に送り出していて、個人的に好きな作品がいくつもある作家さんです。

◆作品名/作者:影法師/百田尚樹

◆ジャンル:武士の世を生きる男達の友情、そして絆を描いた歴史フィクション

◆ボリューム:読みやすさ○、文庫本サイズで400P程度

◆こんな人にオススメ:歴史小説が好きな人、在宅中心の生活で時間を持て余している人、"人の一生"という哲学的なテーマが好きな人

〜あらすじ/所感〜

これは江戸時代の武士の家に生まれた二人の男の生き様を描いた物語。”頭脳明晰で剣の達人”。かつては将来を嘱望されていた男”磯貝彦四郎”が死んだという報告から物語は幕を開ける。報告を受けたのは彦四郎の竹馬の友であり、茅島藩(架空の藩)の筆頭国家老”名倉彰蔵”。下級武士から筆頭国家老にまで登りつめた彰蔵(元の名を”戸田勘一”と言う)と20年以上前に藩を逐電され、不遇の死を遂げた彦四郎。二人の運命をこれほどまでに分かつに至った思いもよらない真実とそこに込められた想いが、四十数年前の二人が出会いから勘一の視点で徐々に徐々に解き明かされていく。

この本の一番の見所は、不条理なことも時にまかり通ってしまう武士の世界に憤りを感じながらも勘一、彦四郎、その仲間達がそれぞれの道を歩んでゆく生き様を描いている点。家柄や兄弟関係に紐付く婚礼のしきたりや暗黙のルールがある中で、その世界に縛られながら生きえいく者、はたまた少しずつそうした慣例を覆して行く者。それぞれの因果に対し”何を””どのように””どうして”考え行動したからその因果となったのか。こんなことを小説の中における描写の行間を読みながら、自身の想像力をフル稼働して考えてることで、全く違った登場人物の分だけの物語を追うことが出来る作品となっている。

-----------------------------------

ここでは幼少期から不遇の死を遂げるまでの時間軸で、彦四郎の感情を追っていくことを通して感じたことを書いていこうと思います。

彦四郎は、"頭脳明晰で剣の達人"と言われるほど文武両道の天才。だけど何かに傾注したり、確固たる自分の信念というものを持てない性格です。それは物語の随所で垣間見ることが出来るのですが、そんな彦四郎と勘一を繋ぐ象徴的なシーンに、二人が刎頸(ふんけい)の契りを交わすシーンがあります。

刎頸の契り(交わり)・・・その友のためなら、たとえ首を切られても悔いないくらいの親しい交際。

この時から(内面的にはもっと前からかもしれませんが)、彦四郎にとっては勘一の存在こそが"自分自身"の信念であり、誇りだったんだと思います。

■"幸せ"ってなんだろか 

"一般的には"不遇の死を遂げたと言われる彦四郎。果たしてそうだったのでしょうか。

正解は誰にもわかりませんが、ただ一つ言えることはそれを決めるのは他の誰でもない彦四郎だということ。

人の世とはつくづく皮肉なものだと思う。才はそれを必要とする者や欲する者に与えられるとは限らない。むしろ、そんなものなど望まない者に与えられることがしばしばだ。

こんな風に言われている彦四郎は、望まない才能を持つからこそ誰よりも猛烈に葛藤しながら選択を重ね、人生を終えていったはずです。実直に自分の信念に従った結果が"不遇の死"なのであれば、本人にとっては最良の人生だったのかもしれませんね。

もしかしたら後悔するような選択もあったかもしれないけど、それもまたその時に自分にできる最善の選択だ、と思える意志の強さを彦四郎は持っていたように思います。

■現実世界に立ち返る 

人生悔いなく終わりたい、というのは誰しも少なからず思っているはずです。

(中には既に来世に望みを繋いでいる人もいるかもしれませんが・・・・)

ではその為に何をどのように考えどれだけの努力しているのか。まだまだ足りてないなあ、っていう人も多いんじゃないかと思います。僕自身もそうです。

在宅を余儀なくされ、今までの延長にはない世の中(10年20年後に想定される変化が目の前にやってきた、なんてことも言われてますよね)を生きていかなければならないこんな環境下でも、自分の意志でしっかりと選択を積み重ね、納得いく未来を築き上げていきたいですね。

武士の世と現代では大いに異なる世界かもしれませんが、日々の過ごし方の根源にある信念のようなものには不変のものがあるように思います。

色んな人の想いや情熱と、一つ一つの自身の選択を大切にしようと思える1冊でした。


amazon購入ページはこちら。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?