人の話は、ただ聞けばいい

 石川有生著「人の話は、ただ聞けばいい」を読みました。著者は牧師ですが、教会にいるのではなく「会いに行くキリスト教会」として日本全国どこにでも会いに行って、話を聞いてくれるという方です。

 冒頭に、著者は人の話を聞く際「何か気の利いたアドバイスを言わなければ」、「どんな言葉をかけたら励ましとなるのだろうか」、「相手が解決に踏み出すためにはどうしたらいいのか」などと考えていたとありました。私も結構、同じように考えてしまうようで、なんていうか、会話に「意味」を求めていたような気がします。そこには、相手のお役に立ちたいという気持ちと共に、自分の知見を活かしたいというような利己的な気持ちが混在していたように思いました。

 気をつけるべきなのは「話を遮らない」、「質問にはちゃんと答える」、「相手の話題を自分にすり替えない」とありましたが、自分を省みると結構これをやっちゃっています。特に三つ目ですね。自分が最近読んだ本の内容に近い話などが出てしまうと、割り込んでしまうなんて言うことがあります。反省。それでいて、自分から話を振ったりすることも上手くできないのですから、どうしようもありません。

 また、「会話が弾む人とそうでない人の違いはほんの少しの差です。」とありました。私自身が会話を弾ませることが出来ていない中で、これは気になるお話ですが、答えは「会話が弾まないのは、弾ませようと思っていないからです。」とありました。受け取り方によっては「何だそりゃ?」と思ってしまいそうですが、私自身も会話が弾んでいないときに、弾ませようと努力したかと言えばそうでもなくて、相手任せになっていたように思います。

 また、「安易に『分かるよ』とは言わない」とありました。これは言われて不快になったことが何度かあるのでよくわかります。自分が言っていなければ良いのですが、共感することが大切と言っても、共感すればよいってものでもないということでしょう。

 平易な言葉を紡いで、詩のように語りかけてくれる本でした。行間をしっかりつかまないといけないような気がしましたし、「聞く」という言葉を哲学的に感じることが出来ました。

 「不思議なことに、人は笑いながら怒ることは出来ません。」とあり、「何言ってんだ?竹中直人を知らんのか?!」と思いましたが、著者はお若いので知らないのかもしれません。うーん、ジェネレーションギャップ。

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