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大学生日記 #40 経済

お礼を言って清美が淹れてくれたコーヒーを広司が一口飲むと、ブラック独特の芳醇な香りが鼻を抜け、すぐに立体的な苦味と酸味が口の中に広がった。それらは波が引くように広司の口内に余韻を残しながら消えていく。普段はブラックを飲むことはないのに、何故今日はブラックにしたのだろうか。広司はその理由を考えてみたが、これといった理由は思いつかなかった。
「どう美味しい?」
隣の咲が機会を窺っていたように広司を真っ直ぐ見つめながら聞いてきた。その言葉には確認を促すような含みもある。
「はい。とても美味しいです」
はっきりと広司が答える。
「そう、そういうことよ!」
その瞬間、広司の言葉を聞いて咲は満足したような何ともいえない表情になった。どうやら自分の求めていた答えを広司が探り当てたようだ。
「そういえば岡田君は大学生よね?何処の大学に行ってるの?」
そんな咲の様子を苦笑しながら見ていた清美が話題を変えて言った。
「S大学です」
「S大学って、確かここからだと多摩川越えて、生田緑地にあるわよね?」
「そうです」
「へぇ、で学部は?」
「経済学部です」
「経済?また役に立ちそうもない学部を選んだのね」
咲が遠慮無しに言った。
「正直そこまで深く考えて進学した訳ではなくて、取り敢えず行けそうな大学だったので・・・」
「ふ~ん、そんなもんなんだ」
そんな広司の返答に咲は妙に納得したようだった。

#小説 #コーヒー #芳醇 #大学 #学部 #経済

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