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建てた大工さん達の愛を感じながら、リフォームしてもらえるという幸せ

私の祖母宅は栃木の山奥にあります。
亡き祖父が山師で、33年前に新築した際には、
「すべて自分の山から伐った木で建てた」
と聞いていました。

大黒柱には、なんと28.5cm角の杉の木が使われています。
年に数回、一族で祖母宅に集まるのですが、
訪れるたびに、その木材の美しさに見とれてしまいます。

そんな自宅を愛し、祖父亡き後も15年間一人で家を守ってきた祖母。
90代も半ばにさしかかり、いよいよ一人暮らしも限界になりました。

私の母は祖母の一人娘で、
祖父が亡くなってからは、月に1~2回は手伝いに通っていました。
でも、母ももう70才を過ぎました。

神奈川から栃木まで、往復600kmの長距離運転も怖い。
といって、祖父が建てた家に住むことが何より生きがいの祖母を、
神奈川には呼べない。

母は、半世紀を過ごした神奈川の地を離れ、
栃木の祖母宅での同居を決意しました。

そこで、祖母との暮らしに備え、床段差の大きいお風呂や、
冬の寒さをしのぐための断熱対策、
老朽化した水道設備などを改修することになりました。

さて、どこに頼めばいいのやら。

祖母が大切にしまっていた、新築時の資料を出し、
まずは建てて下さった工務店に連絡してみました。

もう33年も前の話です。
電話がつながることさえ期待できないと思っていましたが…

建てた大工さんと連絡を取ることができました!(^^)

大工さんの年齢は、なんと母と同じ。
家を建てた当時は、30代後半の、一番勢いのある年代。
きっと祖父がその腕前を信頼し、頼み込んだのでしょう。

ご年齢もあり、後継者もいらっしゃらないということで、
工務店は数年前に廃業なさったとのことでした。

それでも、少しでも力になれればと、
今回のリフォームを快くお受けしていただくことができました。
私も何か役に立てればと、打合せに同席しました。

話は、大工さんと祖父の、新築時の思い出から始まりました。

「この家を建てる時は、正さん(祖父)と一緒に山に行って、
生えてる木から柱を一本一本、選びながら伐ったんだよ。
懐かしいなぁ…」

私たちの知らない祖父とのやり取りや、
祖父の家に対する想いなどを聞かせていただくことができ、
思わず目頭を熱くしてしまいました。

祖父と一緒に建てたこの家を、
大工さんは自分の家のように愛してくださっていた
のでした。

そんな風にスタートしたリフォームですが、
サッシ屋さん、水道屋さんなども
大工さんが新築当時の業者さんに声をかけてくださいました。

「今は相見積もりだのなんだのって、
なんでも安ければいいって世の中だけど。
俺はね、チームを大事にするんだ。
安い業者に変えよう、なんてしない。
みんな、ずっと一緒にやってる仲間だよ。」

そんな大工さんの言葉通り、
現場で動くみなさんはとてもチームワークが良く、
私たちにもとても親切にしてくださいました。

祖母が処分に困り、大量に溜まっていた不用品も、
「うちに圧縮機があるから、つぶせばゴミ代は安くなるよ」
といって、こちらで想定していた半分以下の予算で
大量の不用品を引き取ってくださったり。

倒れた石像が重くて直せず、放置されているのを見て、
「これ邪魔でしょ?持っていこうか?」
と、重機で乗り込んだ際に、ついでに運んでくださったり。

みなさんが自分の家のように思ってくださり、
いろいろ気付いて、考えてくださる…
みなさんの愛に支えられた、なんて幸せなリフォームでしょう。

・・・・・・・

住宅の仕事に関わって20年以上になりますが、
年々コストにシビアになっていくのを、肌で感じています。

私も現場監督をしていた時は、
できるだけ安い仕入れ先や業者さんを探そうと、必死でした。
そうしなければ、市場での価格競争に自分が負けてしまうからです。

でもそうやって、
安さを追求することに、誰に得があったのでしょうか?

安さばかりが評価されるようになると、
現場での仕事は、みんな、
最低限の指示された内容だけをこなすようになります。

現場には、設計や手配のミスもあります。
でも誰も構わず、ミスのまま現場は進んだりします。
みんな考える余裕がないのか、
気付いても、自分には関係ないと思うのか。

安さ(=効率)を追求するほど、みんなが最小限の歯車となり、
現場からは、愛(=無駄)が失われていきます


効率を求めることが悪いとはいいませんが、
ある程度の無駄も残しておかなければ、
みんなで「良いもの」をつくり上げるというのは
難しいのだろうと思います。

幸いにも、こんな競争社会であっても、
しっかりと地域に根差して経営されている工務店さんは、
職人さんを大事にしているところも多くあります。

そのような「義理と人情」に厚い人たちは、
少し話せば、その人柄がわかります。

もし、ご自宅を
「愛のあふれる現場で、良い家をつくって欲しい」
と思われるなら、
「値段よりも、人柄や経営方針で選ぶ」
という基準を持つことが、一つの近道になるかと思います。

私も、効率より思いやりを優先し、
「どうしたら住まう人が幸せになれるか」
を第一に考え、行動していきたいと思います。

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