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埼玉県の"幻のいじめ防止条例案"

私が埼玉県教育委員長時代(平成19年~20年)に、全国に先駆けて県のいじめ防止条例案の策定を目指した。

私自身が前文を書き終えた時期に清水勇人現市長(当時は県議会の文教委員長であった)が議員立法にしたいと要望されたため譲歩したが、その後さいたま市長選に民主党から立候補したため、自民党との関係が崩れて「幻の条例案」となってしまい実現できなかったことは残念至極である。

当時合意を得ていた県条例を制定する際の論点を例示すると,
①防止対象をあくまで児童生徒間のいじめに限定する
②条例で定める義務は法的性質を有することを明確にするために,「すべての県民は」といった表現にせず,内容を不可欠なものに精査する
③いじめ被害者を保護するための具体的方策を規定する
④「罰金」「科料」といった軽微なものでよいので,罰則規定を設け,警察が学校に入るためのハードルを下げる
⑤目的や基本理念の条項に「学校を正常化するため」「学びの場を確保するため」といった文言を入れ,いじめ防止が近視眼的な目的でないことを明確にする
⑥学校の設置者や校長の「教育的見地」からの裁量権を明確にし,モンスターペアレントの暴走を封じる。ただし,説明責任も同時に明確にし規定しておく
⑦保護者の責務について明確に規定する
等である。



●いじめ被害者を保護するための具体的方策

③(いじめ被害者を保護するための具体的方策を規定する)については,次のような規定が考えられる。

〈被害者の保護措置〉  
いじめの被害者及び被害者の保護者は,いじめ被害から逃れるために校長に対して, 以下の各号の措置を要求することができる。校長は教育的見地から要求された措置の可否を決定する。
(1)スクールカウンセラーによるカウンセリング
(2)被害者の保護者と学級担任による話し合い
(3)被害者の保護者と加害者の保護者による話し合い
(4)被害者が精神的に落ち着くまでの間,別室で自習すること
(5)被害者が精神的に落ち着くまでの間,欠席すること
2 校長は,前項の要求を拒否する場合にはその理由を明らかにし,被害者または被害者の保護者に説明する義務を負う。
3 いじめの被害者の保護者は,前項の措置によるいじめが止まない場合または前項の措置が拒否された場合には,校長を通じて学校の設置者に転校を申し立てることができる。
4 学校の設置者は,前項の申し立てを却下する場合には,その理由を明らかにし被害者の保護者に説明する義務を負う。  

●罰則規定

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