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Photo by
55hirokky
マーブルチョコ
いつか深い眠りに落ちた
彼とお茶を飲みながら
吊革に掴まりながら
電話をかけながら
散歩をしながら
電極は吸盤式なのだから
痛くも怖くもないのに
こめかみや額の肌が
厭だと訴えるのが
何故かわかった
身体の凡ゆる部位が各々
自分自身の意思の下に
機能していることを
私は初めて知った
君は明らかに病気なのだから
眠り姫と虐めた連中なんか
相手にしてはいけないよ
先生の言う通りにね
私マーブルチョコとか飴玉でも
先生がくれるんなら大丈夫よ
なのにそんな恐ろしいもの
厭だ厭だと聞かされるわ
口に喉に肺にお腹にそれから
血に唾液に汗に髪の毛にも
私には声が聞こえ過ぎる
恐ろしい、こんなにも
もう深い眠りなんか要らないわ
長くても短くても構わないわ
安らかな眠りを頂戴、先生
その為の電極なんでしょ
眠りを身体の部位と呼ぶのには
幾らか戸惑いがあるのだけど
確かに意志を持ってるのよ
話せばきっと解り合える
実を言うとね先生
もう随分進んでるのよ
眠りとの話し合いのことよ
長い間ありがとうございました
先生にとっては複雑でしょうけどね
いつか安らかな眠りに落ちる
彼と同じ朝を迎えながら
マーブルチョコと共に
電話を待ちながら
そして私自身が
眠りになる
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