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マーブルチョコ

いつか深い眠りに落ちた
彼とお茶を飲みながら
吊革に掴まりながら
電話をかけながら
散歩をしながら

電極は吸盤式なのだから
痛くも怖くもないのに
こめかみや額の肌が
いやだと訴えるのが
何故かわかった

身体のあらゆる部位が各々
自分自身の意思の下に
機能していることを
私は初めて知った

君は明らかに病気なのだから
眠り姫と虐めた連中なんか
相手にしてはいけないよ
先生の言う通りにね

私マーブルチョコとか飴玉でも
先生がくれるんなら大丈夫よ
なのにそんな恐ろしいもの
厭だ厭だと聞かされるわ

口に喉に肺にお腹にそれから
血に唾液に汗に髪の毛にも
私には声が聞こえ過ぎる
恐ろしい、こんなにも

もう深い眠りなんか要らないわ
長くても短くても構わないわ
安らかな眠りを頂戴、先生
その為の電極なんでしょ

眠りを身体の部位と呼ぶのには
幾らか戸惑いがあるのだけど
確かに意志を持ってるのよ
話せばきっと解り合える

実を言うとね先生
もう随分進んでるのよ
眠りとの話し合いのことよ
長い間ありがとうございました
先生にとっては複雑でしょうけどね

いつか安らかな眠りに落ちる
彼と同じ朝を迎えながら
マーブルチョコと共に
電話を待ちながら
そして私自身が
眠りになる


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