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うたの日の短歌

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うたの日で注目した短歌について書いた評を載せていきます。(※ 歌の作者の許可を頂いています。)
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2022年5月の記事一覧

茉莉花の茶葉がひらいてゆくように手放したかった憎しみがある/toron*

2022年5月31日(火)のうたの日15時部屋の題「憎」の短歌。 「茉莉花の茶葉」とは、茶葉を球…

伸びすぎて危険だという街路樹が伐り倒される前日は雨/小倉るい

2022年5月30日(月)のうたの日15時部屋の題「危険」でバラを取った短歌。 街路樹が伸びすぎ…

それぞれの答案用紙が一斉に羽ばたく試験開始のチャイム/さえ(colorfultwigs)

2022年5月29日(日)のうたの日7時部屋の題「試」で次席となった短歌。 答案用紙(または問題…

青空が色褪せている憂鬱はドレスアップして煙草をふかす/Dolly

2022年5月28日(土)のうたの日13時部屋の題「憂鬱」の短歌。 情景としては青空が見えるのだ…

怪獣が舞台の袖で偉そうにウルトラマンに扇がせている/エルドラド

2022年5月27日(金)のうたの日15時部屋の題「偉」で次席となった短歌。 ウルトラマンは、地…

菜箸を持つ祖母の手がうつくしく詰めるおかずは花にも見えて/土井みほ

2022年5月26日(木)のうたの日13時部屋の題「弁当」の短歌。 題「弁当」は詠み込んでいない…

これもまた方言だろう故郷とはちがう響きの波音を聴く/小泉キオ

2022年5月24日(火)のうたの日15時部屋の題「方」でバラを取った短歌。 二通りの読みができる。 まずは、方言を文字通りに解釈した読みだ。方言とは、共通語・標準語とは異なった形で地方的に用いられることばのことだ。すると、「故郷とはちがう響きの波音」という語が隠喩となり、作中主体の故郷と異なるアクセントやイントネーションのことを示すようになる。 一方で、波音を文字通りに解釈した読みも可能だ。その場合、「方言」が比喩表現となる。「地域的な自然音」といった意味合いか。する

白地図で国を覚えて境界の脆さは知らずにいた地理の時間/飛和

2022年5月23日(月)のうたの日15時部屋の題「理」でバラを取った短歌。 高校で履修した地理…

星のない夜空の果てを目指すごと首都高を駆ける白いスープラ/初染奏多

2022年5月19日(木)のうたの日19時部屋の題「トヨタ」の短歌。 「星のない夜空」と言うと、…

摘まれても摘まれてもなお種をまく 泣いた分だけ咲き誇れわたし/三冬つくし

2022年5月18日(水)のうたの日17時部屋の題「種」の短歌。 抽象的な歌だが、その分さまざま…

さみどりの吹き出し数多浮かべゆくあなたのいない夜の余白に/カラスノ

2022年5月16日(月)のうたの日9時部屋の題「緑」の短歌。 「さみどり」は、早緑と書いて、「…

夏風にライラック薫る美瑛町君の面影優しく揺れる/夢ナポリ

2022年5月15日(日)のうたの日17時部屋の題「ライラック」の短歌。 ライラックは、北海道の…

まだ家に残されているものさしの裏に書かれた母の旧姓/春ひより

2022年5月12日(木)のうたの日15時部屋の題「もの」でバラを取った短歌。 ものさしは、小学…

野良猫をはじめて見た日この街の一部にやっとなれた気がした/永山暉

2022年5月11日(水)のうたの日21時部屋の題「野良」の短歌。 野良猫とは、飼い主のない猫のことだ。しかし、その行動範囲は限られているだろう。生活圏やテリトリー(縄張り)がある。もちろんそれが人間により区分けされた街という単位に対応しているはずはない。 しかし、街で見かけた野良猫は、少なくともその場所を生活圏またはテリトリーにしているのだから、また見かけることになる。 野良猫というのは、ある範囲の住人なのである。野良猫を見かけたということは、地域の住人に挨拶をしたの