星のない夜空の果てを目指すごと首都高を駆ける白いスープラ/初染奏多

2022年5月19日(木)のうたの日19時部屋の題「トヨタ」の短歌。

「星のない夜空」と言うと、大都会の情景である。その「果てを目指す」ように「白いスープラ」が「首都高を駆ける」。

都会詠なのだが、宇宙船の飛行を思わせる比喩が使われている。

「首都高」は、首都高速道路のことで、東京都区部とその周辺を走っており、環状線と放射線などから成る。地上から浮いている道路であり、環状線のためずっと回ることもできるので、「夜空の果てを目指す」という比喩が生きてくる。

「走る」ではなく「駆ける」としたところは生き物のように「疾駆」するイメージを添えていてふさわしい。

結句「白いスープラ」の白は、やはりスペースシャトルなどを思わせる色だ。また、「スープラ」という体言止めなのだが、「スープラ」にはラテン語で「超えて」「上に」といった意味があるので、決して三十一音に収まらない世界観があり、ストーリーの広がりがあることが示されている。

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