見出し画像

作品【From the Vault】-について

From the Vault…「貴重品室から」というタイトルは、自身の記録こそが自分にとって最も貴重な品だと思って名付けました。タイトルの由来は私が愛してやまないMagic the Gatheringのカードセットから。

2011

From the Vaultに登場する写真は、私が過去に撮影したすべての写真が対象となっています。対象は2010年頃からであり、常磐木型(常に作品づくりをしている)作品になります。

今ではもう撮影しないような被写体や作品。会えなくなった人たち。写真を通じて、様々な経験をしてきた中で、なかなか今後日の目を見なくなる写真もたくさん出てくると思っています。

とはいえ、それらの写真も私の記憶の一部であり、それをタイムカプセルのごとく発掘する作業も楽しいものだと思うようになりました。「あ、この時こんなの撮ってたんだ」とか、「この人だれだっけ?」といった具合に。

そういって拾い集めてきた写真をX(twitter)にアップロードする行為そのものが、From the Vaultを定義させています。

2019

「刹那に過ぎる時の中で、自分という個を特定しうる証拠を、記録しておきたいからこそ、人は外部記憶にそれを委ねる」

「お前にとっちゃそいつが唯一、これまでの自分を特定できる、外部記憶装置じゃねえのか」

攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEXより

記憶とは当てにならいもので、鮮明とは限りません。
既に写真という媒体は、記録としての意義では弱く、証拠能力としての確実性は欠けていると言われています。とはいえ自身にとっては―記録の手助けになる手法になると考えています。


2023

これを強く意識したのは、生前の祖父の言葉です。祖父は昨年亡くなりましたが、晩年は記憶が曖昧になってしまっても、撮影した写真を片手に過去の記憶を思い出しては話をしてくれました。
特に祖父絡みの作品については、下記【Ancestral Recall】もご覧いただけるいと嬉しいです。

特に私は物覚えが悪いので、だいたいのことは抽象的に覚えるようにしています。世の中、自分の嫌だったことは鮮明に覚えているものですが、過ぎ去る記憶を全て記憶するのは困難です。記憶の輪郭だけを思い返す意味でも、From the Vaultは基本的にモノクロームでの作品にしています(たまにカラーもあります)。

2015



2016

記憶を残す、といっても、やはり風景やポートレイトといった物はそれ自体を作品に昇華できないかと考えていた時期もあり、なかなかFrom the Vaultに入り込みにくい部分もあります。

確かに大事な記憶ですが、しっかりと風景を撮ったり、ポートレイトを撮っている時は、やはり「撮る」ことへの意識が大きいのかもしれません。From the Vaultは、もう少しゆるい写真といいますか、被写体に特別注力しない写真を選ぶようにしています。

2015,ポートレイトオフショット
2016,風景だけど、偶発的に撮った写真なので自分の中ではオフショット


そんなわけで、私がFrom the Vaultで伝えたい内容は特にありません。

基本的には自分が良いと思った記憶=写真を上げているだけで、かっこよくタイトルをつけているにせよ、やってることはただ白フレームで飾り付けたモノクロ写真というだけです。

とはいえ作品づくりとカメラづくりをリンクさせている身としては、一時期はカメラを固定していた時期もありました。自作のスナップ専用カメラで撮った写真にこそ、このタイトルをつけていました。

結局のところ記録として撮るのであればカメラは何でも良いはずですし、それに見合うカメラを作るという考えは間違ってるなと後日思うようになりましたので、今はその縛りからは開放されています。

2014

私の作品づくりは、今までの様々な経験・体験・知識を元に、自分が納得できる形で作り上げてきました。もしかしたら今後も、自分の中で新たな発見とともに違う作品づくりをしていく可能性があります。

そうなった時でも、この【From the Vault】が、Takahashi Toshioという人間の軌跡を表す指標になってくれると信じています。


自作で機材作ったり、展示物のギミック作るとお金かかるんです…。ストレスで甘いもの食べまくるから…。そんなわけで、俺に少しでも甘いもの食べてもらいたいって人はよろしくお願いします!