【連載】今井隼人被告が語る“介護の闇”#4 川崎老人ホームで高齢者3人がベランダから相次いで転落死したあの日、僕は何をやっていたのか?
【事件概要】
2014年11から12月、川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、80から90代の入所者3人が、4階と6階のベランダから相次いで転落死した。事件があったすべての日に夜勤に就いていたのは、同施設の介護職員だった今井隼人被告ただひとりだったこと、そして「3人をベランダから投げ落とした」との自供により、2016年2月、神奈川県警は今井被告を殺人の容疑で逮捕。
一転、今井被告は裁判では自供を覆し無罪を訴えた。だが、一審、二審で死刑判決を受け、現在は最高裁に上告中である。
【今井被告が介護の闇を語るまでの経緯】
事件や裁判の経過とは別に、介護現場の実情を世間に問い、現状を見直す一助になればとの思いから、今井被告が介護に携わるようになった経緯から、逮捕までを書くことを依頼した。
本稿は、今井被告が介護現場で過ごした、約1年間の記録である。
※本稿は、今井被告から届いた手紙を文字に起こしたものです。なるべく原文ママでの掲載になりますが、一部、事実関係が損なわれない程度にこちらで修正しております
※本稿の売り上げは、今井被告への原稿料及び取材活動費などに充てさせていただきます
【川崎老人ホームで高齢者3人がベランダから相次いで転落死したあの日、僕は何をやっていたのか?】
若干、内容としては飛ぶのですが、私が当時介護職員として勤務していたときの実体験については、概ねこれまで書いてきた通りです。
私としては、自分のできることをやっていた日々だったのでですが、そういった状況のなかで本件(いわゆる事件とされていること。つまり今回の刑事事件「川崎老人ホーム高齢者連続転落事件」)が突然起こりました。
○1件目(403号室、入居者A)
私が夜勤シフトで勤務に入っているときAさんは、施設内にいました。Aさんは、この日に限らず介護職員などに対する暴言や暴力行為があって、私に限らずとも当時働いていた介護職員であれば、恐らくみな大変な思いを抱いていたと思います。事実、職場や飲み会等の場でAさんの話が出たこともありました。
本件が発生した前日にも、実際、Aさんが施設1階フロア(食堂の前あたり)で他の介護職員に対して「帰るんだ」「警察を呼べ」「俺は風呂には入らん」等と興奮していて、私は午後4時から夜勤に入っていましたので、Aさんと会って対応しています。だいたい午後4時過ぎ頃のことです。
帰宅願望が強いAさんからして、やはりこのときも興奮状態にあり、入浴介助は私が担当だったんですが実施できる状態ではなく中止しました。
その後、私は主に4〜6階を中心に夜勤をしていました。そして私のシフトは、この日は午後11時から午前1時まで休憩だったので、その間、施設4階の食堂でテレビを見ながらうたた寝していました。バラエティ番組などを見ていた記憶があります。
そして休憩が終わる午前1時よりも少し前、つまり午前0時50分頃に休憩を引き上げて施設1階の事務室へ移動して飲み物を飲み、106号室の入居者の介助から始めたのです。
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