【映画レビュー】「イエスタデイ」(2019年 イギリス・アメリカ)~売れないミュージシャンの俺だったけど、大停電でビートルズの存在が消えたので、俺がビートルズの曲を歌ったら世界中で大ブレイクしてしまった件~

【タイトル】
「イエスタデイ」(2019年 イギリス・アメリカ 116分)
監督 ダニー・ボイル
脚本 リチャード・カーティス
出演 ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、ジョエル・フライ


【あらすじ】
 元・音楽教師のシンガーソングライター、ジャック。彼の音楽は鳴かず飛ばずで全く売れず……。
 幼馴染の親友エリーがマネージャー業をやっているのだが、ジャックは「もう自分は音楽を辞めるべきだ」と心が折れかけていた。

 そんなある日。
 ジャックが自転車に乗っていたら、突然、世界中が停電。
 そのせいでジャックは自転車でバスに激突し、大怪我。入院することに。

 退院後。
 ジャックは友人から快気祝いに新しいギターをもらい、ビートルズの『イエスタデイ』を試しに弾いてみたところ、何故か、その場に居た友人たち全員が感動している。
 友人たちは「いつの間に、そんな名曲を作ったんだ?」とジャックに聞く。
 ジャックは「ビートルズのイエスタディだろ」と答えるも、みんな「イエスタディ」どころか「ビートルズ」を知らない。

 からかわれていると思ったジャックだったが、自宅のパソコンで「ビートルズ」を検索した結果、カブトムシの画像しか出てこない……。

 信じられないが、『ビートルズの存在そのもの』がこの世界から消えてしまったのだ。

 更に検索して調べると『ローリング・ストーンズ』は存在するが『オアシス』は存在せず。タバコはなく、コーラもコカはなくペプシはあった。
 あの世界規模の停電のせいか、ジャックの居る今の世界は『ビートルズ、オアシス、タバコ、コカ・コーラなどが存在しない世界』に変わってしまったのだ。
 そして、何故か、ジャックだけが消えてしまったビートルズなどの存在を覚えていた。


 ビートルズを知らない人々の前で、ビートルズの名曲を演奏し、人々を感動させていくジャック。
 その勢いは止まらず、無名のミュージシャンから世界的大スターへと成り上がっていく。

 ……だが、存在が消えてしまったとはいえ、ビートルズの曲を自分が作ったかのように振る舞うのはどうなのか?
 それに、もしビートルズを覚えている人間が現れたら、自分は盗作者になってしまうのでは?……と、ジャックは苦悩する。


 ビートルズが消えた世界で、ビートルズの曲を演奏してスターになった男の姿を描いたファンタジーコメディ。


【感想】
 今まで存在していたものが消え、自分だけがビートルズを覚えていたために、ビートルズの曲を歌ってスターになっていくストーリーが面白い。
 さらに自分の作ったオリジナルソングが売れなかったことと、存在が消えたとはいえビートルズの曲を自分の曲にしてしまったことなど、有名になればなるほど、主人公の苦悩が大きくなるのも面白かった。
 一方、長年付き添ってきたマネージャーのエリーとのすれ違いなど、いきなり大スターになってしまったが故の環境の変化もよく描かれている。



【以下、ネタバレあり】
 後半。ビートルズを覚えている人間が現れ、ジャックは盗作で通報されるかと思ったのだが「消えたビートルズの曲を世界中に広めてくれて、ありがとう」と、むしろ感謝されるのであった。
 好きだったものがこの世から消えてしまうことよりも、盗作でもいいから世界に再び広めて欲しいというファンの気持ちが素晴らしく、同時にどこか切ない。

 主人公ジャックの行ったことは確かに盗作ではある。
 この辺は人によって賛否の分かれる部分だと思われるが、もしジャックの演奏が下手だったら、例えビートルズの曲でもヒットさせられなかったと思う。
 なので、私としては、ジャックの努力が思わぬ形で報われたんだと解釈した。

 ただ、謎の大規模停電が起きなかったら、ジャックの運命はどうなっていたのか……。
 フィクションとはいえ、こういう奇跡でも起きないと努力が報われない皮肉も描かれているような気がしてならない……

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