【映画レビュー】「ミッドサマー」(2019年 アメリカ・スウェーデン ※R18指定)~夏にピッタリ!!新感覚スローライフ系ホラー!!!~

【タイトル】
「ミッドサマー」(2019年 アメリカ・スウェーデン 141分(R15指定 劇場公開版) 171分(R18指定 ディレクターズ・カット版))
監督、脚本 アリ・アスター
出演 フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー

※本作にはグロテスク、性的な描写が含まれております。

【あらすじ】
 両親と妹を失ったことが強烈なトラウマになり、精神状態が不安定な女性・ダニー。
 ある日、ボーイフレンドのクリスチャン、大学の仲間たちと一緒にスウェーデンの村へ行く。
 この村は白夜で夜も明るく、のどかで美しい場所だった。

 ……しかし、この村には想像を絶する異常な風習があり、ダニーたちはこの村の洗礼を受けることになる……。
 新感覚スローライフ系ホラー。


【感想】
 私個人の考えだが、ホラー映画というジャンルは遊園地のジェットコースターみたいなもので「次になにが来る?なにが来る?来たー!!」とハラハラドキドキワクワクしながら、恐怖を楽しむジャンルだと思う。

 しかし、この映画は違った
 常に空は明るく、周囲には色鮮やかな花々。癒しすら感じてしまう牧歌的な雰囲気がこの映画の恐ろしさである。
 視聴者(観客)までもが主人公たちと同じく、この村の住民として招かれてしまっているのだ。

 この映画には、ほとんど暗闇のシーンがない。
 だからこそ、怖い。
 夜がないから、逆になにが起きるのかわからない。
 それこそが、まさに真の恐怖である。

 私がこの映画で一番グロテスクに感じたのは、肉片になった死体や異常な村人たちよりも、この村の風景と美しい花飾り。
 色とりどりの花々やみずみずしい果実が、もはや毒々しいグロテスクな怪物にしか見えない。
 心を落ち着かせるはずの山や花々に恐怖を感じてしまうのは、初めてである。

 文化が異なるという理由で、異常事態が続く村。
 そんな村にいつの間にか、溶け込んでしまった感覚が味わえる新感覚のホラー映画だった。
 冗長不安定だった主人公・ダニーが笑顔を見せた瞬間、私は背筋が凍り付いた。



【以下、ネタバレあり】
 序盤。村の老人二人が崖から飛び降りてグチャグチャになり、一人だけまだ息があったので、ハンマーで頭部を肉片になるまで潰したシーン。
 あまりの凄惨な光景に、主人公たちは村人に「残酷だ」と言う。

 しかし、村人たちは、

「老いた老人を死ぬまで施設に入れておくのと、村の掟で死を迎えること。本当に残酷なのはどっちだ!?」

と言った。
 村人たちにとっては、これが当たり前の風習なのだ。
 我々の常識とは違う考え、価値観で住民たちは生きており、そして、村の掟で死んでいく。
 人は考え方、価値観が違うというだけで、同じ人間なのに別の生き物のように見えてしまうのか。


 私はこんな村に来てしまったら、どんな手段使ってでも帰る。絶対に帰る。

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