見出し画像

時事ニュース:アメリカ大統領選の大きな争点、妊娠中絶問題の根本や歴史を時系列で確認しよう

こんにちは!個人投資家のTAKA Chanです。

アメリカの妊娠中絶問題は、複雑で長い歴史を持つ社会的・政治的な問題です。

この問題、巷では今年の大統領選挙最大の争点とも言われています。

ニュースではサクッと流れてしまうだけで根本を理解されてない方も多いと思います。

今回は、その問題の根本と主要な出来事を時系列で説明いたします。
少し長くなりますが、お付き合いください。

それではどうぞ!


※以下、ロー対ウェイド事件とドブス対ジャクソン女性健康機構事件の判例を知ることが今回の争点を理解する上で重要です。

ここは読んでください。


1. 妊娠中絶の合法化

1973年: アメリカ最高裁は「※ロー対ウェイド事件」の判決で、妊娠中絶を合法化しました。
この判決により、女性は妊娠初期(通常は第1トリメスター)の中絶を選択する権利を認められました。

※ロー対ウェイド事件の詳細(Roe v. Wade)とは?

アメリカ合衆国の歴史において非常に重要な判例で、1973年にアメリカ最高裁判所が下した判決です。この事件は、妊娠中絶に対する女性の権利を中心に争われました。

事件の背景

  • 原告: 「ジェーン・ロー」という仮名を使ったノーマ・マコービー(Norma McCorvey)という女性が、テキサス州の妊娠中絶禁止法に対して異議を申し立てました。テキサス州では、母体の命が危険な場合を除き、中絶が禁止されていました。

  • 被告: テキサス州ダラス郡の地方検事、ヘンリー・ウェイド(Henry Wade)が被告となりました。

判決の内容

  • 憲法第14修正条項: 最高裁は、憲法第14修正条項の「適正手続き条項」に基づき、女性が妊娠を中絶する権利を有すると判断しました。この権利はプライバシーの一環として認められるもので、州が一方的に妊娠中絶を禁止することはできないとされました。

  • 妊娠の段階に応じた規制: 最高裁は、妊娠の段階に応じた中絶規制を設定しました。

    • 第1トリメスター: 州は中絶に対する制限をほとんど設けることができない。

    • 第2トリメスター: 母体の健康を保護するための合理的な規制を州が設けることができる。

    • 第3トリメスター: 胎児の生命を保護するために州が中絶を禁止することができるが、母体の生命や健康が危険にさらされる場合は例外とされる。

判決の影響

  • 中絶の権利の拡大: この判決により、アメリカ全土で妊娠中絶が合法化されました。女性のリプロダクティブ・ライツが認められる画期的な判決として、中絶を選択する権利が憲法上の権利とされました。

  • 社会的・政治的対立: この判決は、アメリカ社会において大きな対立を生み出し、中絶賛成派(プロチョイス派)と反対派(プロライフ派)との間で激しい論争が続いています。

この後の展開が分断のきっかけに

※ドブス対ジャクソン女性健康機構事件 (2022年)

ロー対ウェイド判決は、この事件で2022年最高裁によって覆されました。

この新しい判決により、妊娠中絶の規制は各州の判断に委ねられることになりました。

※ドブス対ジャクソン女性健康機構事件(Dobbs v. Jackson Women's Health Organization)とは?

最近のことですが、2022年にアメリカ合衆国最高裁判所で審理された重要な判例であり、この判決によって1973年の「ロー対ウェイド事件」の判決が覆されました。

事件の背景

  • 事件の発端: ミシシッピ州は2018年に「妊娠15週目以降の中絶を禁止する法案」を可決しました。この法案は、例外として母体の命が危険な場合や、胎児が重大な障害を持っている場合のみ中絶を認めるものでした。

  • 訴訟の開始: ミシシッピ州唯一の中絶クリニックであるジャクソン女性健康機構(Jackson Women's Health Organization)が、この法案が「ロー対ウェイド事件」と「プランド・ペアレントフッド対ケーシー事件」(1992年)で認められた女性の中絶権を侵害しているとして、訴訟を起こしました。

判決の内容

2022年6月24日
最高裁判所は6対3の多数意見で「ロー対ウェイド事件」と「プランド・ペアレントフッド対ケーシー事件」の判決を覆す判断を下しました

憲法上の中絶権否定
最高裁は、憲法が女性に妊娠中絶の権利を保障しているという考えを否定しました。これにより、中絶に関する規制は各州の立法機関に委ねられることとなりました。

州ごとの判断
判決後、多くの州が中絶を厳しく制限するか、完全に禁止する法律を施行しました。一方で、他の州では中絶の権利を強化し、女性が中絶を受けられるようにしています。

判決の影響で分断が起きた

分断の深刻化
この判決はアメリカ国内で大きな波紋を呼び、政治的・社会的な分断をさらに深める結果となりました。
中絶を支持する人々は女性の権利が脅かされていると反発し、一方で中絶反対派はこの判決を大きな勝利と捉えました。

州レベルでの法的闘争
この判決後、州ごとに中絶の権利を巡る法的闘争が激化しました。一部の州では中絶を厳しく制限し、他の州では中絶を受けるための法的保護を強化する動きが見られます。

少し解説が長くなりましたが、この2つの判例が理解できないと前に進めませんのでご了承ください。
次へ進みます。

2. ロー対ウェイド判決への反発と州レベルでの規制

1980年代から1990年代: 中絶反対派(プロライフ派)は、妊娠中絶の規制を強化するために州レベルでの法案を推進しました。また、中絶支持派(プロチョイス派)は女性の選択の権利を守るための活動を続けました。

3. 連邦レベルでの中絶制限

2003年: 「部分的中絶禁止法」が連邦法として成立し、特定の遅期中絶手術が禁止されました。

4. 保守派の影響力の強化

2010年代: 保守派の台頭により、中絶制限を強化する州法が増加しました。これにより、いくつかの州で中絶クリニックの閉鎖が相次ぎました。

5. 最高裁の構成変化とロー対ウェイド判決の撤回

2022年: 最高裁は「ドブス対ジャクソン女性健康機構事件」において、ロー対ウェイド判決を覆す判断を下しました。この判決により、妊娠中絶の権利は州ごとに決定されることになり、中絶を完全に禁止する州も出てきました。

そもそもプロチョイス(Pro-Choice)派とプロライフ(Pro-Life)派とは何か?

アメリカの妊娠中絶問題に対する二つの主要な立場です。それぞれの立場は、妊娠中絶に対する倫理的、宗教的、法的な見解に基づいて形成されました。

プロチョイス派の背景

プロチョイス派は、女性が妊娠中絶を選択する権利を支持する立場です。この立場は以下のような理由で支持されています。

  1. 女性のリプロダクティブ・ライツ

    • プロチョイス派は、女性が自分の身体に対する選択権を持つべきだと主張します。これはリプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)の一環として捉えられ、妊娠継続の可否を決定する権利は女性個人にあるべきだと考えます。

  2. 健康と安全

    • 安全な妊娠中絶の権利が制限されると、非合法で危険な中絶が行われる可能性が高まり、女性の健康や命が危険にさらされる恐れがあります。プロチョイス派は、合法で安全な中絶の提供が女性の健康を守るために必要だとしています。

  3. 社会的・経済的な理由

    • 経済的な理由や社会的な背景によって、子供を産むことが困難な女性がいます。プロチョイス派は、中絶の選択肢がなければ、その女性たちの生活やキャリア、教育機会が大きく制限される可能性があると考えます。

プロライフ派の背景

プロライフ派は、胎児の生命を尊重し、妊娠中絶に反対する立場です。この立場は以下のような理由で支持されています。

  1. 胎児の生命の尊厳

    • プロライフ派は、受精から生命が始まると考え、胎児にも生きる権利があると主張します。彼らは中絶を「命を奪う行為」として捉え、倫理的に許容できないとしています。

  2. 宗教的信念

    • 多くのプロライフ派の支持者は、宗教的な教義に基づいて中絶に反対しています。特にキリスト教の中でもカトリック教会や福音派の教義では、中絶は罪とされており、生命は神聖で不可侵であると考えられています。

  3. 家族と社会の価値観

    • プロライフ派は、伝統的な家族の価値観を重視し、胎児を家族の一員として守ることが社会の責任であると考えています。彼らは、社会が生命を尊重し、支える仕組みを整えるべきだと主張します。

なぜプロチョイスとプロライフの対立が生まれるのか?

この対立は、生命の定義や倫理的・宗教的価値観の違いから生まれています。プロチョイス派は女性の権利を最優先し、プロライフ派は胎児の生命の尊厳を最優先します。

この両者の価値観は根本的に異なっており、それがアメリカ社会において深刻な対立を引き起こしています。

また、妊娠中絶に関する法律や政策が連邦レベルや州レベルで変動するたびに、プロチョイス派とプロライフ派の間で激しい政治的・社会的な闘争が繰り広げられます。
これは、アメリカの文化的・宗教的多様性が反映された結果でもあります。


大統領選:トランプ氏とハリス氏の主張の違い

ドナルド・トランプ氏の立場

  • 保守的立場: トランプ氏は中絶反対派(プロライフ派)としての立場を強調し、中絶制限を支持しました。

  • 最高裁判事の任命: トランプ氏は在任中に3人の保守派判事を最高裁に任命し、これがロー対ウェイド判決を覆すきっかけとなりました。

  • 中絶に対する具体的な制限: トランプ氏は、妊娠後期の中絶を含む中絶に対する厳格な制限を支持しています。

カマラ・ハリス氏の立場

  • リベラルな立場: ハリス氏は中絶支持派(プロチョイス派)としての立場を明確にしており、女性の選択の権利を強く擁護しています。

  • 全国的な保護法の提案: ハリス氏は、ロー対ウェイド判決に基づく中絶の権利を連邦法として保護するための法案を提案し、州レベルでの中絶制限に対抗しようとしています。

  • 女性の権利の拡大: ハリス氏は、女性の健康と権利を保護するための包括的な政策を支持し、中絶を禁止する州に対抗するための連邦政府の介入を求めています。


ここまでをおさらいすると

アメリカの妊娠中絶問題は、2024年の大統領選挙において非常に重要な争点となる可能性が高い。

ドブス対ジャクソン女性健康機構事件を受けて、中絶に関する法的な議論や対立が一層激化しており、候補者たちのスタンスが選挙戦での注目点となる

トランプ氏の立場

  • 保守派の支持を固める: ドナルド・トランプ氏は、中絶反対派(プロライフ派)として知られており、彼の任期中に保守派の最高裁判事を3人任命したことがロー対ウェイド判決の覆しにつながりました。彼は中絶制限を支持し、保守的な価値観を強調しています。このため、宗教的な保守層や中絶反対派からの支持を集めています。

  • 中絶に関する法規制の強化: トランプ氏が再選を目指す際には、中絶に対するさらなる規制強化を掲げる可能性が高く、州ごとの中絶禁止法の支持を続けることが予想されます。

カマラ・ハリス氏の立場

  • 中絶の権利擁護: カマラ・ハリス氏は中絶支持派(プロチョイス派)であり、女性のリプロダクティブ・ライツを守ることを強調しています。彼女はロー対ウェイド判決を法的に復活させるか、もしくは新たに連邦レベルでの中絶の権利を確立するための法案を支持しています。

  • 女性の権利拡大を公約に掲げる可能性: ハリス氏は中絶を禁止している州に対抗し、女性が全国的に中絶を受ける権利を守るための政策を提案することが考えられます。彼女は民主党の基盤であるリベラル層や都市部の有権者の支持を得やすい立場です。

選挙における影響はいかに?

  1. 中絶問題の重要性の増加: 最高裁のドブス判決後、中絶に関する議論は地方レベルから連邦レベルへ再び注目されています。中絶を巡る政策の違いが選挙戦の重要な争点となり、特に女性有権者や若年層の関心が高まるでしょう。

  2. 州ごとの中絶政策と選挙結果への影響: 中絶に対する強硬な姿勢を持つ州と、中絶の権利を守る州との間で、選挙戦が州ごとに異なる様相を見せる可能性があります。特に、スイングステート(勝敗が定まらない州)では、中絶問題が選挙結果を大きく左右する要因になるでしょう。

  3. 共和党と民主党の対立の深化: トランプ氏とハリス氏がそれぞれ共和党と民主党の主要候補になる場合、中絶問題は党の基本方針を象徴するテーマとして、両党の対立をさらに強調することになります。特に、保守派とリベラル派の間で激しい意見の対立が予想されます。

結論

妊娠中絶問題は2024年の大統領選挙において非常に重要な争点となり、トランプ氏やハリス氏を含む候補者たちがそれぞれの立場を明確にし、有権者に対して強いメッセージを発信することが予想されます。中絶の権利を巡る議論は、選挙の結果に大きな影響を与える可能性があります。
注目しましょう!

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
投資家様のお役にたてれば 幸いでございます。

投資初心者向け、マガジンを始めました。よければフォローしてください。一部を除きほぼ無料で公開しております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?