ケンブリッジでの研究生活

ケンブリッジに来て半年が経ったので、ここでの研究生活についてちょっと書いておこうと思う。

2年間シンガポール国立大学の博士課程でコースワークをやり、博士候補試験(QE)を昨年5月に終えて、秋にケンブリッジに移って来た。

まぁなんでわざわざシンガポール国立大学を辞めてケンブリッジに移ったのかはまた今度書くとして、ここではケンブリッジでの研究環境について少し書いておこうと思う。

現在はケンブリッジ大学の政治国際学科(Politics and International Studies)にある開発学研究所(Centre of Development Stidies:CDS)の博士課程に所属している。なぜこの研究所の博士課程にしたかという単純に今の指導教員がアメリカからそこにDirectorとして移って来たからである。僕自身は開発学という学問を体系的に勉強したことはないし、自分のアイデンティティは政治学にあるので、イマイチしっくりこない感じはあるのだけれども、指導教員は兼ねてからフォローしていた研究者で研究のアプローチも似ていることからここからオファーをもらうことができたのかもしれない。

さて、CDSの今年の博士課程は僕を含めて5名。内訳は開発経済学専攻のイタリア人、人類学専攻のナイジェリア人とパレスチナ人、政治学専攻のスペイン人と日本人の僕。このうち3人はケンブリッジで修士課程を終えた人たちで僕とスペイン人は新しくケンブリッジにやってきた。ちなみにナイジェリア人の同期も僕と同じように他の大学で博士課程をすでに経験しており、博士論文を出す手前でケンブリッジに移籍してきた。

分野も人種も地域ももいい感じにばらけていてバランスは取れている感じではある。

開発学だと一定数実務に行く人もいるのだか、今年はみんな研究者志望のようで、かなりディープな研究の話を共有できる点ではとても面白い。個人的にシンガポール国立大学にいた時は研究している地域を超えて同期と理論や研究手法の話をできることが少なかったので、それと比較するとケンブリッジの環境はなかなか刺激的である。

入学して初めての学期は5人揃って開発学の研究手法に関する必須のセミナーを受講した。ざっくりと開発学というか社会科学で用いられる量的•質的研究手法について紹介するコースで、特にどうやって使うかとかは習わず、、内容もかなりベーシックでみんな大体知ってる内容だったりするので、正直ほぼ役に立たない授業だった。ただいろんな先生たちとお話しできたのは楽しかった(笑)

オックスフォードやケンブリッジの博士課程は博士論文を書きに来るところと言われることがあるが、まさにそんな感じで、理論や研究手法についてはすでに熟知していることが前提で特にコースワークをたくさん取ることも勧められない。逆に言うと、まだ博士論文の研究をするのに必要な先行研究やその分野や手法の勉強が不十分な段階でこの辺りの博士課程に来てしまうと消化不良のまま3-4年で博士論文を書く羽目になり、クオリティの高いものは書けないのうな気もする。

したがって、博士課程でコースワークを2-3年かけてやるアメリカやシンガポールの大学院と比べると、イギリスの大学院はコースワークがなかったり、あったとしてもかなり緩いことが多いので、研究者としてのトレーニングを受ける研究機関としてはケンブリッジはあまり良いところではないと言うのが個人的な印象。

僕の場合はロンドンで1年間比較政治学の修士課程でコースワークをやった後にさらにシンガポールでがっつり2年間またコースワークんやり、博士課程試験も受けたので、もうコースワークはやりたくない状態でケンブリッジに来たこともあり、特に授業を取ることを強制されないこの環境は気楽でいい。

逆に、もし僕が修士課程を終えてすぐにケンブリッジの博士課程に来たとしたら、かなり準備不足のまま博論を書くことになっていただろう…

では一体ケンブリッジでは何をしているのだお前はということになるわけだが、、


一般的にケンブリッジの博士課程の1年目は、研究計画書を練り、1年の終わりにある研究計画書のディフェンス(1st year reoort)の準備を進めたり、フィールドワークの準備をする。僕も博士論文の研究計画をぼちぼち考えながら、RAやTAの仕事をしたり、査読論文を書いたりして過ごしているという感じである。

指導教員とは月に1回ほど2時間近く研究の進捗について議論してアドバイスをもらう。またケンブリッジには指導教員の他にアドバイザーというのがいて、アドバイザーとは1-2ヶ月に1回面談をして、研究に関して助言をもらう。

こんな感じで1年目は研究計画書の作成に取り掛かることになる。

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