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東南アジア デカコーン企業と日系大手企業の意外な関係<後編>

本日のnoteは、先週公開したnoteの後編となります。

前回のnoteは東南アジアに存在するデカコーン2社の内のGrabの解説をしましたが、今回はインドネシア最大規模のスタートアップであるGojekと日系大手企業の意外な関係について解説していきたいと思います。

インドネシア最大規模のスタートアップGojek

2010年創業のインドネシア発Gojekは、Crunchbaseのデータを見てみると2014年12月にシリーズAラウンドの資金調達を受けてから、2020年2月時点でシリーズFラウンドまでの資金調達を実施しており、累計3.3B USD(≒約3,500億円)調達していることになります。
※Grabは9.8B USDの調達をしているので約1/3の調達額となります。

Gojekに関しては過去に私のnoteで詳しく解説をしているので、そちらも併せて読んで頂けると理解が深まると思います。

Gojekへ出資・事業提携をしている日系大手企業の顔ぶれ

前置きが長くなりました………ここからようやく本題です。
Crunchbaseのデータを元に、ほぼ時系列順にGojekへ出資・事業提携をした日系大手企業を紹介して行きます。

■三菱商事
2019年2月に初回投資を行っている。

当社の狙いは、日経記事によると
「三菱商事は出資額を公表していないが、数十億円規模とみられる。同社はインドネシアでコンビニエンスストア大手「アルファマート」の運営会社に出資するなど、小売りや物流事業を展開している。三菱商事はゴジェックに社員1人を派遣し、宅配なども手掛けるゴジェックとの連携を模索する。」
とされている。

また1回目の投資から時間をあまり空かずに2019年7月に三菱自動車と共に追加投資を行っている。

■三菱自動車
三菱商事と共に2019年7月に投資を行ったことがアナウンスされております。(上部、記事を参照)

当社の狙いは
「長い歴史やブランド力を持つ三菱の自動車事業と、新しい価値観を持つ若い世代が経営するゴジェックのビジネスポテンシャルを掛け合わせることで、両社Win-Winの大きなシナジーを生み、東南アジアで新たなモビリティサービスを実現すること」
とされています。

なお三菱自動車の出資は、三菱商事主導で推進しているMaaSへの取り組みと関連しての投資となっています。

記事の中では
「これまでの自動車ビジネスの約60年間、完成車メーカーに寄り添いながら事業を広げてきた。この流れが変わる」。三菱商事の自動車・モビリティグループ最高経営責任者(CEO)オフィスの近藤恭哉事業投資・事業構想・デジタル戦略担当は語る。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaSが新たな競争軸となり、「モータリゼーション以上の衝撃がある」(近藤氏)と展望する。

なお、三菱商事は2022年3月期までの中期経営計画(PDFとなります)の成長戦略の柱として「事業構想力とデジタル戦略の強化」を掲げています。

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前編でも触れましたが競合であるGrabへはトヨタ自動車、ホンダ、ヤマハ発動機などがMaaS文脈で出資をしています。

■三菱UFJリース
2019年7月の三菱商事、三菱自動車と同じタイミングで三菱UFJリースのGojekへの投資が併せてアナウンス(PDFとなります)されています。

当社の狙いとしては、「広範囲に及ぶ機能、知識、ノウハウの共有を通じた、デジタル分野とモビリティ分野に重点を置く新しいビジネスモデルの探求に目を向けたもの」とされています。

前編でも触れましたが三菱UFJ銀行はGrabへの投資をしており、系列企業である三菱UFJリースはGojekへの投資を行っているということになります。

2017年8月以降に実施したシリーズE & シリーズFの投資家

日系大手企業のGojekへの投資状況をまとめてみましたが、実は日系大手企業以外もシリーズE & シリーズFラウンドに多く参加しているので紹介したいと思います。

中国インターネット最大手であるTencent Holdings、中国EコマースのAlibabaの最大のライバルであるJD.com。
その他にもインターネット系大手だとGoogleなどが参加しています。
またその他大手事業会社系だとクレジットカードのVISAもシリーズFラウンドでGojekへの投資に参加しています。

事業会社による投資は狙い通り、価値ある事業を創出できるのか?

ここ2−3年で日系大手企業による東南アジア デカコーン企業への出資が増えているなぁ、と言う感覚があったので前編、今回のnoteでまとめてみましたが、果たして本当に事業会社による投資は、狙い通りにビジネス的なシナジーを産み出せ得るのか?と言うのが今後問われて来ると考えています。

昨年投資した事業会社は、まさにコレからだと思いますが2-3年前に投資した企業とデカコーン企業の連携が進んでいるのか、どうか?は詳しいことは分からないですが、順調であると言った良い噂があまり外に聞こえて来ていないのが現状です。

ここからは私論ですが、事業会社による二桁億円、三桁億円規模のレイターステージでへの投資したは、そもそも保有株式で一桁%の前半、もしくは1%未満の保有だったりします。
事業会社の為、事業的な狙いがないと投資が出来ないのも理解出来ますし、投資の失敗をしたくがない為にレイターステージに投資しなければならないことも理解しているつもりです。

一方で投資を受ける側のスタートアップの立場からすると、資金調達をする必要がある為、事業会社とのシナジーを謳って投資を集める必要性があるのも理解出来ます。
ただ実際のところ、超マイノリティ出資者に対して、社内のリソースをどこまで割いて、超マイノリティ出資者である複数社とそれぞれの事業シナジー創出に向き合うのか?と言うと正直、疑問です。

コレばっかりは、あと数年後に答え合わせが出来ると思いますが、現時点では狙い通りの事業の創造は難しいと感じています。

事業会社はどのタイミングでスタートアップと連携をするべきか?

こちらは書き始めるととてつもなく長くなりそうなので………苦笑
もし皆さまの気になる!読みたい!と言う声が大きければ別途、筆を取ってnoteで公開したいと思います。

個人的には、どんどん日本、日系企業のプレゼンスが東南アジアの中で相対的に下がってきていることに危機感は持っていて、そう言う意味ではレイターステージとは言え積極的に投資をしていること自体はポジティブに捉えています。

一方で、狙ったような事業連携が進まなかった際に、確実に日系企業の投資は続かなくなるので、投資熱が下がらないように東南アジアのスタートアップと上手く連携出来るような座組みや事例を模索し続けたいと感じています。

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