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自然とは、命と触れ合うところ。

縁あって、2023年の3月から山や森にいる時間が格段に増えた。

洞爺湖でテントサウナをしたり、山菜を採って山の恵をいただいたり、2泊3日の野営(最近の言葉だとリトリート)をしたり、登山したり、森を歩いたりした。

それまで自然と触れ合うことは、たまに河畔で座禅を組んで瞑想をするくらいだった。自然というものは、近いようで遠い存在だ。札幌に住んでいると自然との距離はかなり近く感じるが、多くは受容的であり、積極的に触れていこうと思わない限り、やはり距離は遠いものだ。

自然とは命を考えるところ、だなと強く感じる。


WILL〜遺言〜

さて、東出昌大のドキュメンタリーの「WILL」を観た。

【あらすじ】
俳優・東出昌大は猟銃を持ち、山へ向かった。
水道もガスもない状態での暮らし。
狩猟で獲た鹿やイノシシを食べ、
地元の人々と触れ合う日々は、彼に何をもたらしたのか――。

なぜ俳優である東出昌大が狩猟をしているのか。
彼が狩猟をして生命を頂き、生きながらえる生命とは何なのか――。
本作は、根底にある気持ちの混沌、矛盾、葛藤を抱える東出昌大という一人の人間と、MOROHAが発する渾身の言葉とすさまじい熱量が重なり合い、東出自身が問い続けている日々を生々しくスクリーンに映し出していく。

劇中で繰り返し述べられる、「いのち」「食べること」「考える」、という3つの単語がこの映画を表す3文字であろう。

スキャンダルが世に出て、東出が山で生活し始めて少し経ってからの1年近くの東出に密着した映画だ。日々の狩猟で鹿や猪を撃ち殺し、それを食としていただく中にも、彼なりの葛藤があり、それとどう向き合うか。また、非常に生き辛くなった(と思われる)社会との付き合い方、がこの映画では描かれている。

「人間とはどのような存在なのか」「人が生きさせられる意味」「人も獣と同様、いつ狩られるか分からない」「人間は地球にとってのガン細胞」、というように、この映画はかなり哲学的だ。おそらく、自然の中で生きるという行為は、このようなことを考えないではいられないのであろう。

少しではあるが、山や森との関わりをもつようになった私には、とても響くものがあった。

あの一件を機に彼のことを嫌いになってしまった方達にこそ観てほしい。そして、映画の感想や彼に対する感情を聞いてみたい。


山菜と樹液も、いのち

「WILL」を観ようと思ったきっかけは、2週間前に山菜と樹液を採りに行ったことが少なからず関係している。

春は山菜シーズンであり、北海道民にとっては山菜の王様「アイヌネギ(行者ニンニク)」を食すことのできる季節だ。しかし、4月下旬はまだ早いということで、下見をしてきた。

かろうじて、フキノトウが生えていたので40個ほどを摘んで、その場で天ぷらにして食べた。最高に美味かった。

その場で揚げて
塩をかけて食べた


あと、4月からは樹液のシーズンでもある。

厳しい寒さを乗り越えた木々は、春になると地中の水分をぐわーと吸い込む。それが樹液となって、春以降は人間や昆虫たちが飲む。3月下旬から4月上旬はイタヤカエデの樹液が出やすく、その後はシラカバ、クルミと続く。

こういう感じで樹液を採取する

そんな天然の水を採取するべく、インパクトで木に小さな穴をあけてチューブを突っ込み、出てきた樹液をペットボトルでいただく。2時間ほど待てば、500mlくらいは樹液が溜まる。それを、今回はコーヒーにしていただいた。

イタヤカエデは、メープルシロップの原料となるため、樹液そのものもかなり甘い。だが、砂糖のような人工的な甘さではない。熱するだけでほのかに甘い香りが漂い、それをコーヒー粉に付着させる。すると、天然にほんのり甘いコーヒーが出来上がる。

とてもレアで貴重な体験だった。
自然と触れ合うことは、命や食のことを考える良い機会になる。


そういえば、「WILL」でこんなセリフがあった。

「人間という存在は、地球にとっては癌みたいなもんだ。究極的に言うといない方がいいかもしれない。でも、人間として生まれてきた以上、癌として全うしなければいけない。だから、せめて悪性腫瘍ではなくて、良性腫瘍でいたいもんだ」

このセリフは東出が述べたものではないが、観ている時にはなるほどなぁと感じた。そこで、これをつい最近友人に伝えたのだが、反応はまるで違った。

「自分は納得できないなあ。この言葉って、かなり上から目線すぎない?地球にとって癌なんて地球は1ミリも言ってないんだから、ただの人間の驕りという捉え方もできると思う」

ふーむ、こちらもなるほどな、と感じた。
やっぱり、この世に正解なんてないんだな。



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