就活生時代、見た目にこだわっていたわたしは、坊主で面接に臨んで撃沈した。
会社で、就活生向けの説明会(ウェビナー)に先輩社員として出席した。関わっている案件の話を中心に、会社での働き方や、自分自身が気になっている社会課題について他の参加社員と一緒に話しつつ、学生さんたちの質問にも答えていく流れ。
参加者は200人超で、ウェビナーなので画面の向こうにいる学生さんの顔を見ることはできなかったけど、この説明会が、少しでも就活の参考になっているといいな……と思った。
今回はわたしの就活について、回顧してみます。
どうしても坊主にしなければならない、と考えていた。
わたしが就活をしていたのは、2015年冬〜2016年夏頃。「変わっていること」に憧れていた。後で振り返ると「ユニークな思考」に憧れていたというよりは、「不思議な見た目」や「変わった言動」をすることで武装していただけなのだが。
エントリーシートでも、「自分を表現してください」の箇所に小さい文字「サブカル」を100回書くなどの奇行を繰り出してお祈りメールをもらうなどしていた。(当たり前だ。)
その最たる例が髪型で、当時は本当に視野が狭かったので「自分の考えていることを伝える」ではなく、「どうにかして記憶に残らなければならない」が先行して、とうとう坊主(五厘)にした。おしゃれな美容院で。就活直前(2015年)の12月で、寒い日だった。
ちなみに、その美容院にはいまも通っていて、ときどき当時を振り返っては担当の美容師さんと笑いあっている。
「御社に入りたくて坊主にしたんです!」
次の日くらいにエントリーシートに貼る写真を撮影しに行った。いま考えると本当におかしいけど、この写真があれば無敵な気がしていた。(おかしい)実際、書類選考は通ることが多くて、一次面接でも「面白いね」「御社に受かりたくて坊主にしちゃいました」みたいなところから会話が弾んで、盛り上がる展開がほとんどだった。
ただ、家でふと「わたしは何がしたいのか?」を考えたときに、特に何も出てこなくて、ただ見た目を武装して個性的な人になったつもりでいることが、わたしのやりたかったことなのか……? と不安が募ってしまう日々。
そうして迎えたとある企業の最終面接。(時は2016年初夏)
「面白いけど、うちに合うかがわからないんだよね……」
確か午前中の面接。ウォークマンで「Helena Beat / Foster The People」(プリセットで入っていて、なんか勇ましいので就活ソングにしていた)を聴きながら、会場に向かう(自分に酔っていた)わたし。
採用担当の人事さんに会議室に通してもらって、緊張しながら待っていると、面接の担当者さん(取締役)が入ってきて、ゆるっと面接がはじまった。武器は坊主と、あとエントリーシートに書いた謎の提言(「人間の三大欲求と既存サービスの関係」みたいな謎なテーマの文章を書きなぐっていた)。
これまでのいくつもの面接のように、「髪短いね」「そうなんですよ〜実は……」のくだりから入ると思いきや、髪型にはまったく触れられず、その時点で予定が狂って、武器が一つ消滅。それから何を話したかは断片的にしか記憶がなく、「人の価値観を変えるものをつくりたい」みたいなことをしゃべり散らかしていたと思う。そうして面接も終盤になって、散らかった話を優しく聞いてくれていた面接官から、「面白いことを言ってくれているのはわかるんだけど、うちにどんなふうに合うかがまだわからなくて」「もう少し話してみてくれるかな」と言われるわけです。
ふわっとした話しかしてこなかったツケ
「これは……落ちたな」と。何が辛いかって、自分が話したことが否定されたというよりは、何も語れていなかった事実を突きつけられたこと。自分のやりたいことを真摯に伝えた上で「御社」と相性が合わなかったのであれば「今回は相性が合わなかった」と思えたんだろうが、上の面接官の言葉を聞いてわたしの頭の中に浮かんできたのは「無」。つまり特にやりたいことがなかったということ。
あれだけ坊主にしたり、「変わってる人に見られたい」などと変な人ブランディングしてきたけど、別に「変わったことがやりたい」わけじゃなかったことを思い知らされたんですよね。いや、時間をかけて考えれば、自分がどんなことにこだわりを持っていて、これからどんなことをやりたいか、自分の言葉で語ることはできたはずだけど、わたしは見た目を武装することだけに、時間を割いてきたので、「この会社で何をやりたいのか」なんていう問いに答えられるはずがなく。
そこから先は「なんとか頑張れると思うんです……(号泣)」の一言でどうにか乗り切った。(乗り切れてない。)
「変わった人になりたかった自分」は否定したくない
後日、そのとある企業から合格通知が届き、わたしは就活を終えて新卒でそのとある企業に入社した。
そしていま、とある企業ことスパイスボックスで、プランナー兼広報として働いている。「(自分も含め)人の価値観や考え方をポジティブにアップデートできるような表現を模索する」を目標に、日々の業務と向き合っている。
まだまだ自分の至らなさに痛感する日々かつ、就活時代の「イタイ自分」を振り返ると、とにかく穴を掘りそして埋まりたい日々を送っているけれど、やりたいことがわからなくて(それについて考えることをせずに)ただ見た目を武装した日々も否定はしたくないとも考えている。黒歴史も肯定しつつ、自分の言葉で自分の実現したい未来を考えられるように、邁進していく所存。
年末になると、学生のときに書いた小説が実家から発掘されて、母親から「こんなん出てきたで」ってLINEで送られてくるのも結構辛いけれど、あのわけのわからない暗黒恋愛ファンタジー小説や就活の日々が、いまの自分の一部だと肯定すると、ちょっと愉快な気分にもなる。多分、この文章も、3年か5年か後に見ると赤面なんだろうな。
これから就活をはじめる学生さんへ
説明会で学生さんから寄せられた質問の中に、「わたしは広告について勉強してこなかったのですが大丈夫ですか?」や「どんな人がこの仕事に向いていますか?」というものがあった。いまのわたしだったら「自分がやりたいことや、行動の規範になっている価値観を明確に語れるといいかも」と返答する。それから「もしやりたいことや、自分の価値観がどこにあるかわからなければ、これから考えればいい」とも。(社員によって回答はさまざまだと思う。これはあくまでわたしの個人的な回答)
そもそもわたしの場合は「知らないということを知らなかった」(無知の知ならぬ、無知の無知)ので、それを就活前に知れるだけでものすごく前進している状態なのでは、という感じ。(低レベルな話で申し訳ない)わたしはそれを知るために髪の毛を犠牲にした。
おまけ
坊主にして面白かったこともある。伸びかけって、タオルがめっちゃひっかかるんだよ!
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