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1粒の種に秘めた波紋






暗闇


静寂


夜行性の動物達は


静かに蠢く






……







やがて


夜が明け始める





遠くの方から


無限のグラデーションを経て


思ったよりも速く


暗闇は紫へと変色していく





鳥や虫たちが


賛美の声をあげる


皆で祝福している





奇跡的であり


当然の事のようでもある


この瞬間を


祝福している













黄金が顔を出す


曖昧だった地上の様子が


光に照らし出され


鮮明になっていく





休んでいた植物達も


葉をゆっくりと起こし始める





僕は空を見上げ


眩いばかりの光に


目を細め祈りを捧げる





祈りは波紋となり


何処かへと響いてゆく













光からエネルギーを受け取った


把握出来ない程の


多種多様の生命達が





それぞれの役割の元


引き受けた仕事を謳歌する





把握出来ない程の


多種多様の仕事を


引き受け謳歌し


波紋を響かせる





一粒の種に秘めた


生命の波紋





指し示された音に触れ


可能性は開かれる





僕が僕を


あなたがあなたを


少しずつ


思い出していくように





それは奇跡的であり


当然の事のようでもある













一瞬のようであり


果てしなく永い


とも言えるであろう


光の時も終わりが訪れる





懐かしい波紋を響き渡らせるように


夕陽が辺りを赤く染め





その音を聞きつけた


鳥や虫たちが再び


賛美の声をあげる





別れを惜しむかのように


エネルギーを振り絞り


それぞれの波紋を響かせ


美しく混ざり合う





懐かしさや切なさの音を


指し示された僕は


記憶に思いを馳せ


時には涙をこぼす





その役割を引き受け


謳歌し波紋を響かせる













奇跡的であり


当然の事のようでもある一日が


終わりを迎える…