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10年、20年、そして1万年経っても変わらないものとは/進化と変化から読み解く生存戦略

私が今所属している事務所は、いくらかの統廃合を考慮すると実は半世紀以上の歴史がある。

先日、偶然だが20年以上前の顧問先一覧表を目にする機会があった。驚くべきことに今も関与が続いている顧問先も、わずかだかちらほら。多くは廃業したか、何らかの理由で関与が途切れたか。

そのリストからは、なかなか面白い事実が読み取れる。例えば、企業とビジネスの変遷である。

ざっとその会社名からその業種業態を推測するに、20年の月日の中で、明らかに現代では見かけないようなものも散見された。

数年前に定年退職した職員から聞く話によれば、当時は帳簿や決算書は手書きなのは当たり前。それらを専門に刷る業者が多くいたのだという。システムの発達やコピー機の普及によって消滅していった。

他にも、自動車販売業者や部品の輸出業等、最近ではあまり見かけないものも多く、会社の変遷は時代を反映しているのだと改めて思い知らされた。

今回は、そんな20年前のリストから、ビジネスにおける変わるもの/変わらないものを読み解き、この混沌とした外部環境を生き抜くヒントを見つけてみたいと思う。

■進化で生き残る鍵は、やはり関連多角化

20年経った現在も関与が続いている企業について着目してみたところ、ある一つの共通点が浮かび上がった。

業種で言うと、圧倒的に建設業と不動産業が多いのである。それもある程度積み上げた資本力がある。

さらに分析してみると、さらに面白い事実に気付いた。そこそこ高い割合で、建設業と不動産業を兼務しているのである。

これにはいくつかの理由が考えられる。

一つは、相乗効果、いわゆるシナジーの観点。

私は建設業の顧問先が多いのでよくわかるのだが、建設業と不動産業は親和性が高い。作り方がわかっているからこそ説得力を持って貸したり売ったりすることが出来る部分は、少なからずあるのだろう。

実際に今担当している顧問先でも建設業+不動産業で兼務して成功しているところもあるが、物件選びの視点から違うなと思わされたことがある。

そしてもう一つは、リスクヘッジの観点。

建設業の特徴の一つとして、比較的工期が長期になることが挙げられる。小売飲食業なら一日単位となる売上が、建設業だと数ヶ月かかるのが通常である。
これは比較的大型の機械等を取り扱う製造業や卸売業、あるいは意外なところで言えば制作の絡む映像制作等の広告代理店にも同じことがいえる。案件毎のプロジェクト単位ということである。

この着工から完成・納品、そして入金までのリードタイムが長いビジネスの場合、どうしても資金繰りが一つのネックになってくる。従業員がいれば、完成しようがしまいが毎月給与の支払が発生しうるからである。

これを解決する(部分的に軽減させる意味も含む)方策の一つには、毎月の定額のキャッシュが得られるようなインカムゲインへの投資が挙げられる。そのような不動産収入を取り入れることで、ある意味では水物といえる建設業の収入をカバーし、長期的にみて資金繰りを安定化できるというわけである。

今でこそ副業(複業)ブームと叫ばれて久しいが、20年以上も前から残る会社はとっくの昔から複数事業に着手するという関連多角化による戦略で生き残りを図ってきたといえる。

■進化ではなく、変化という対応策

では、あなたのビジネスモデルをただちに止めて、建設業と不動産業を行いましょうという結論になるかというと、到底そうはならないわけである。

何故かと言うと、この20年前の顧問先一覧リストにない会社が、現在全てビジネスで失敗しているとは限らないからである。外部環境の変化に対応して別業態となり大成功している可能性も否定できない。ただ、このリストに記載がないだけ、である。

先程の建設業×不動産業での長期的生存戦略は、生物学的に言えば、進化での対応だと言える。
つまり、今あるものに足りないものを付け加えて対応していく戦略である。

この辺りの話は、以前書いた下記の記事を参考にして頂ければと思う。


今回付け加えたいのは、「生き残る」という観点でみれば、この進化以外にも、変化での対応もありうるのではないかということである。
つまり、今あるものを取り替えて、新しいものにして対応していく戦略もある、ということである。

先程の進化と変化を車の二車線で喩えるならば、前者は安定を求めた左車線を行く戦略であり、後者は変化とスピードを求めた右車線を行く戦略だと言える。

一見右車線の方が効率的に見えて、渋滞してくると意外にも左車線の方が早くなるという経験をされた方もいるだろう。

つまり、それぞれにやり方があるので、どちらが正解という単純な話ではない。

・何かを変えていきたいと思ったら、進化と変化という二種類のやり方があるということ
・長期的視点で見たときには、どちらが正解ということではないこと

要は、この二点に集約される。

■問われる、何が変わらないかという視点

進化であれ変化であれ、変わらなければ生き抜いていけない時代とはいえ、この変わっていく未来を捉えるのは、雲を掴めと言われているのに等しい。

ここで同時に考えたいことについて、的確に表現されているので引用したいのは、アマゾンのペゾスCEOの「何が変わるかではなく、何が変わらないのかを重視するべき」との言葉。


なるほど、今後10年間で何が変わるのかについては、各専門家がああでもない、こうでもないと各方面で様々な議論がされている一方、今後10年経っても変わらないものに対する議論はほぼ聞かない。

人間には寿命があり、決まって主に1日3度の食事を取る。感情という時にやっかいなものを持ち、衣食住を確保し、子孫を残そうとする。

衣類を一つ例に取っても、獣の皮を纏っていた時代から現代の洋服まで様々な変遷はあるにしても、人間の体温を一定程度に保つという機能は変わらないわけである。

これらは、我々の祖先がマンモスを追いかけていた時代からほぼ変わっていないもので、何万年経とうが変わらない人間の本質であり、真理である。

それら変わらないものにこそ物事の本質がある、だから上辺だけの変化に惑わされるな、ということだと私は理解している。


■おわりに

数年前に母に誘われて国立博物館で縄文土器を目にしたことがある。

土器を通じて、これを作った1万年以上前の人と交信しているようにすら見える程、時を忘れて目の前の縄文土器に没頭する多くの人の姿が印象的だった。

これ程までに現代の人間が魅了され、心のどこか奥が突き動かされる理由には、やはり人間に脈々と流れる変わらない何かがあるからに他ならないと私は思うのである。

リモートワーク、仮想通貨、etc。ビジネスもその姿形を変えているように見えて、皮をむいてみると意外とどれも似たりよったりなのかもしれない。

流行り廃りを繰り返す一方で、10年、20年、そして1万年経っても変わらないものはきっとあるはずだ。

ーー何が変わるかと同時に、何が変わらないのかについても考える。そして、その間に大きく横たわる物事の本質についても同時に考える。

古い顧問先一覧表は、そんなビジネスの行く先を示すヒントを提示してくれた。



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