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断捨離の大敵:想像力

モノを減らそうと考えたとき、もっとも厄介なのは人間の「想像力」ではないかと、最近強く思うようになった。

捨てるかどうか悩んだとき、「〇〇に使えるかもしれない」「ここにちょうどよく置けるサイズのはず」などと脳内でさまざまな想定が繰り広げられる(たとえば、お菓子の缶を小物入れとして活用するなど)。

結果、モノの数は減らない。

また、新しいモノを買うかどうか悩むときにも、この想像力は発揮されると考える。

心惹かれる商品があったとき、「そういえば、今もっているモノが壊れそうだな」とか、「〇〇が気に入らなかったのだよな」などと、いわば今あるモノの粗探しをするかのように、買うことを正当化する理由を思いつくことは、いとも簡単にできてしまう。

私も、2020年にミニマリズムに目覚めてから、ずいぶんと苦労しながらモノを減らしてきた(いずれ、もちものリストを作ろうかと考えている)。

私のばあい、捨てる決断をするのは、それほど苦にならなかった。
具体的には、次のようなルールを決め、かなり厳格に実行できた。

①迷ったモノも、半年間(洋服のばあいは1シーズン)は保管する/意識的に日常生活で使用する。その後、まったく思い出さなかったものや、生活に馴染まなかったものは、潔く処分する。

②メルカリに出品したモノも、半年以内に売れなければ処分する。



一方、私が現在も克服できていないことは、買い物や旅行に出かけ、あるモノに出会ったとき、余計な想像力が働くことである。

具体的な事例として、トートバッグの購入を挙げる。

私は、通学から旅行まで、AerのSlimPack X-PACを愛用しているのだが、1年間ほぼ毎日使用しつづけたことで、メイン気室の止水ジッパーのコーティングが剥がれてきてしまった

剥がれ始めたとき、すぐ接着剤などで補修しなかった私も悪いのだが、2万円以上出してこんなにもすぐ痛むとは思っていなかった。

そんな中、東京ディズニーランドへ家族で行き、あるトートバッグと出会った。


TDR公式サイトより。


キャラクターは描かれているが、紺色で絵柄はシンプル。

SlimPackよりややおおきく、これは使えそうだと感じた。

このとき、私の脳内では「SlimPack、ずいぶんヘタってきたしなぁ」「もうすこし容量があってもよいと思っていたのだよなぁ」などと、このトートバッグの購入を正当化することばが渦巻いていた。

じっさい、読みかけの学術書や水筒を入れるには、約8LのSlimPackはやや小さい(入らないこともないが)と感じていた。

しかも、経年劣化による生地の痛みもあった。
2万円以上出したのに、1年程度で生地が痛んだことを思えば、4000円超えのこのトートバッグも、さほど高い買い物ではない。

むしろ、低価格で買ってどんどん使い込み、また買い換えれば良いのではないか。

そんな気もちになり、ついこのトートバッグを買ってしまった。


だがしかし、私には、トートバッグの生活は合わなかった。

そもそも、11インチiPad Pro+Magic Keyboadをもち歩く(ばあいによっては学術書も含む)私にとって、片方の方に負荷がかかるトートバッグは、あまり適さない。

しかも、電車通学であるため、荷棚に置くにせよ、足元に置くにせよ、あるいは膝の上に乗せるにせよ、横幅が広いトートバッグは邪魔であった。

バックパックは基本的に縦に長いので、混雑した車内でもあまりスペースを取らずにすむ。

そして遅まきながら、学部生時代の経験を思い出す。
学部1年生だった2019年、しばらくトートバッグで通っていたのだが、やはり自分の生活スタイルや感覚に馴染まず、いつの間にかバックパックに戻っていたのだ。

トートバッグでの移動は定着しなかったという経験があるにもかかわらず、それを思い出すことなしに、つい購入してしまった。

過去の失敗を活かせなかったというのが、最大の反省である。

ちなみに、件のトートバッグは、購入後約2週間で家族に譲ってしまった(総使用回数は5回ほど 笑)。



何を買うかも大切だが、「どこで買うか」もルール作りが必要

ディズニーのトートバッグも、即断・即決したわけではない。

朝、パークに入園してすぐくらいに見つけ、どうしようかと悩みつつ夕方の退園間際に購入した。

しかし、約半日という時間は、熟考するには短いのではないか、というのが私の個人的な感覚である。

テーマパークという、普段とは違った環境にいるのであるから、どうしても気分は高まる。
普段なら「まぁいいか」と流すような商品でも、気分が高揚していると、つい買ってしまいたくなる。

お菓子などの、いわゆる「消え物」なら、そこまで気にしなくても良いだろう。

だが、いつもと違う場所・心の状態で、普段づかいのモノを選択するのは至難の業なのではなかろうか。

「買って後悔」という経験を何度か繰り返している筆者にとって、「どこで買うか/買わないようにするか」というのは、決めておくべきマイルールのひとつに感じられる。


筆者は、トートバッグ購入という失敗を経て、以下の二つのルールを設定した。

①:レジャー施設では、普段づかいのモノは買わない。

②:買い物に行って現物を見ても、すぐには購入しない。
最低1週間は時間をあけ、その間に、その商品の評価や類似品の候補を調べる。

②':できれば、類似品など他の候補にも同様の手順を適用し、「セール」や「残り1点」ということばに惑わされない(悩んでいる間にセールが終わってしまったら、縁がなかったと思って諦める)。



じっさいに、このルールを適用してみたのが、8月18日の、土岐プレミアム・アウトレットでの買い物だ。

この日、家族で岐阜方面に出かける予定を立てていたのだが、当日の朝、アウトレットのセールがその日から始まる、というチラシが新聞に織り込まれていた。


そこで、用事を済ませる前にアウトレットに寄ろうではないか、という話になり、急遽行程が組まれた。


筆者は、マルチツールで有名なビクトリノックスの店舗に入った際、14Lのバックパックに心を動かされた。


商品ページより。

AerのSlimPackとサイズ感はほとんど変わらないが、容量は1.5倍ほどおおい。

店員さんによれば、スイス軍御用達の製品をも製造することから、ビクトリノックスの製品は、総じて耐久性も申し分ないという。


定価の18700円から、2割程度値引きがされるという。

正直、かなり心揺れ動いたが、ひとまず保留とし、頭を冷やすために一度店を出る。

結局、買わずに帰宅した。


同じくスイスのアウトドアブランド・MAMMUTからも、ほとんど同じ容量のバックパックが出ており、かねてから購入候補になっていた、というのが、今回ビクトリノックスのバックパックの購入を見送った、最大の要因である。


どちらのバックパックにも、一長一短がある。

たとえば、ビクトリノックスのものは、収納用のジッパーや仕切りが豊富にあり、モノの定位置を決めやすく、また小分け用のポーチなどもいらない。

一方で、感覚の問題になるのだが、角ばったデザインではないのがやや気に入らない。

マムートのものは、縦にも横にもハンドルがついており、電車内での細かな位置調整がしやすいだろう。
さらに、角ばったデザインで撥水性も高いため、雨に濡れても拭き取りやすいはずだ。

しかし、収納空間がざっくりとしか分類されておらず、何かを探すときに手間取りそうではある。

このように、いくつかの商品を比較・検討していくことで、自分にとっての最善解をアップデートさせながら、モノを選んでいくことができる。

もちろん、これだけ時間をかけて検討しているうち、自分の好みや求める機能の方向性が変わったり、商品そのものが廃盤になってしまうことも考えられるが、そのときは割り切って、また別のアイテムを探していくしかない。


このように、入念な検討を重ねていくと、買おうと思っていたモノは、じつはほとんどが「必要なモノ」ではなく、単に「欲しいモノ」でしかないのだ、と気づく。

「必要」と「欲しい」を区別すること、あるいは、モノではなく経験にお金を使うことなどは、ミニマリストを志向する人なら、何度も聞いた内容だろう。

筆者は、これらのマインドが、言い得て妙であることを肌で感じた。


やはり、判断軸を自分の経験のなかから立ち上げていくこと、そして、その過程に自覚的であることが、ミニマリズムを追求していくうえでの醍醐味だろう。

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