見出し画像

写真で辿る旅行記 vol.14 屋久島 2014年

画像1

#写真で辿る旅行記

人生で一番働いた数ヶ月が終わったあとの2週間の休暇。間の週末に友人の結婚式があったから、前後の週で国内の別々の場所に旅行することにした。

その一つとして選んだのが、漠然とした憧れを抱いていた屋久島。縄文杉と、もののけ姫のモデルになった森を見てみたかった。

縄文杉へのトレッキングは往復10時間以上かかる。さすがに一人で行くのは不安があったのでトレッキングのツアーを申し込んだ。ガイド一人に自分を含めて3名という小さなグループだった。

縄文杉コースは、最終目的地は屋久杉ではあるが、そこに至るまでの道のりを楽しむトレッキング。車でアクセスできる入り口から、昔のトロッコの線路跡などを辿って屋久島の自然の奥へ奥へと分け入っていく。コース沿いには、林業がさかんだった時代の人の痕跡がところどころに残る。

さらに奥に進むと、より原生の森に近い雰囲気になっていく。

屋久島は苔が美しい。地面に広がる多様な苔は、その細かい葉の表面に水をたたえ、森を通り抜けて届く光に照らされて美しい緑色に光る。時間を忘れてじっと見ていたいが、ゆっくりしていると日が落ちるまでに戻れないため、気持ちをおさえて前に進む。

縄文杉には6時間半でたどり着いた。

それまで見た屋久杉の中でもひときわ大きい。非常に太い幹ががっしりと大地を掴んでいて、上で枝分かれした幹一つ一つが普通の木と同じくらいの太さがある。

縄文杉はその大きさに反して、不思議と威圧感はなかった。むしろ慈愛に満ちた優しい祖父のような印象を受ける。その「顔」には長い年月の出来事が刻まれているが、時がその跡の生々しさをやわらげ、包み込むような大きさを感じさせる。その場にいると守られているような気持ちになる。

「祖父」に別れを告げてからは、もと来た道をそのまま戻る。森の奥深くから少しずつ人の気配が感じられる場所に還っていく。さすがに帰りは疲れていてみんな黙々と歩いた。

5時間かかって入り口に戻った頃には、傾いた太陽の光は木に遮られて辺りは薄暗くなっていた。

人生の中で本格的なトレッキングはこのときが初めてだった。自然に触れることと、自然の中を自分の力で歩いていく感覚が好きになり、それは今でも変わらない。アメリカの広大なトレイルを歩いた記録である『メインの森をめざして | 加藤則芳 』を買ったのもこの頃だったと思う。

これは屋久島に実際に行ってみて気付かされたのだが、屋久島=縄文杉ではなく、屋久島の自然はもっと多様だ。もののけ姫の森と言われる白谷雲水峡をはじめとして、九州最高峰である宮之浦岳への登山コースや多様な滝、カヤックツアーなど色々な楽しみ方がある。

ペンションのオーナーさんに聞いてみると、縄文杉と白谷雲水峡よりも楽しい場所がたくさんあるらしい。例えば、宮之浦岳のコースは一人でも行くことができ、登るごとに景色が大きく変化するから飽きずに登山ができるとのこと。

この話を聞いたから、今でもまた屋久島に行ってみたいと思う。今度は誰もが知っているメジャーなコースではない屋久島の自然と出会うために。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?