UX人材にビジュアルデザインは本当に必要?
こんにちは、アメリカでB2BプロダクトのUXリサーチをしているTKです🇺🇸
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「美大・芸大出身じゃないのですが、UXデザイナーになれますか?」
「デザインやったことないのですが、今からでもUXデザイナーを目指せますか?」
こういった質問をよく聞かれます。僕の答えは常にYesです。僕もビジュアルデザインはほぼできません。
ですが、「美大じゃないならそれなりの覚悟をしないとUXデザイナーとして成功できない」と言っている方もいるので今日は反論していきたいと思います😅
(お手柔らかにお願いします...)
1. UXスキルのカテゴリー
UXにおいて、もちろん美大・芸大出身者の強みもあります。しかし、それはVisual Designであり、UXのほんの一面でしかありません。まず初めにThink Like a UX Researcherに載っているUXスキルマップを紹介します。
ここでは
• User needs research
• Usability evaluation
• Prototyping
• Interaction design
• Visual design
• Information architecture
• Technical writing
• UX leadership
の8つのカテゴリーに分けられています。各カテゴリーの説明は省きます。おそらく芸大・美大出身者が圧倒的に優れているのはPrototypingとVisual designだと思いますが、他のカテゴリーでは総合大学出身者との有意な差はないです。(さらに言うと大学で真面目に勉強した人はUser needs researchやTechnical writingのスキルは自然に身についているとも感じます。)
なのでVisual designに特化したUXデザイナーになりたいのでなければ他のカテゴリーで戦えばいいと思います。
もちろん(特にB2C分野で)UIデザインに特化したプロダクトデザイナーになりたいのであれば以下のようにVisual designの力を付けていくことも必要だと思います。
しかし、UXリサーチャーになりたいのであればVisual designができなくても以下のようにUser needs reesarchとUsability evaluationの力を付けていけば大丈夫です。
もしContent strategistになりたいのであれば以下のようにInformation architectureやTechnical writingを武器にしていけばいいはずです。
このようにVisual designができなくてもUX人材には問題なくなれるのです。
ちなみにこのようにUXスキルを可視化するメソッドをUX skill mappingと呼ぶのですが、様々なテンプレートが存在します。以下がNiesen Normanグループの例です。異なる6つのカテゴリーを使ってますね。ここではあるUXチームの4人のメンバーのスキルがマップされています。このようにチームの強み・弱みを可視化するのにも使えます。
(Niesen Normanの記事では触れられていませんが、このチームはVisual designとPrototypingが強いメンバーがいないんです。実はこういうチームってたくさんあるんです。)
2. 僕の現状はどんな感じなの?
僕のチームでもスキル可視化や採用の判断材料としてUX skill mappingを使っています。オリジナルのカテゴリーで、採用でも使っているため公開できないですが、Visual designに全く重きを置いていないということだけ言っておきます😇
同じくNielsen Norman Groupがテンプレートを提供しているのでカテゴリーを僕なりにいじって使ってみました。
まずは僕の現状です。大学院でUX専攻だったので一通り最低限はできるのですが、Visual Designは苦手で、B2Bハイテク製品は初めてなのでDomain knowledgeも低めになっています。またはっきりとした強みも正直ないです...
次に僕の向こう3年のゴールです。Visual designとDomain knowledgeはそこまで伸ばすつもりはなくて、UX researchとBusiness developmentに焦点を当てたいなと思っています。目標がはっきりしたら、目標に近くためにはどういうプロジェクトをすべきなのかをマネージャーと相談して進めていく流れです。
ぜひぜひ自分でもテンプレートを埋めて、スキルを可視化してみてください!
3. なぜビジュアルデザインが大事だと主張されているのか
いくつかのUXスキルのカテゴリーを紹介してきましたが、僕がVisual designは必要ないと主張するのは、シンプルに僕の現在のポジションでは必要ないからです。専任のデザインシステムチームがあるので僕がビジュアルに悩むことはないんです。またB2B製品だとビジュアルよりもユーザーフローや使いやすさに注目されるというのもあります。ちょっとまとめてみます。
ビジュアルデザインが重視されないUXのポジション
• チームが大きく、自分以外のビジュアルデザイナーやデザインシステムチームがいる
• B2B製品やハイテク製品でビジュアルよりもユーザーフローや使いやすさが焦点になる
ビジュアルデザインが重視されるUXのポジション
• チームが小さく、UXに関連することを全てやらなくてはいけない
• B2C製品でビジュアルに重きが置かれている
• エージェンシーや受託モデルでUIデザインに関するプロジェクトが多い
こういう差があると思います。そして「ビジュアルデザインが大事なので芸大・美大出身者が有利」と言っている方々は後者の仕事をしてきたのだと思います。
僕は後者を否定しているわけではないです...
ただUX市場では前者のポジションが増え続けているのでビジュアルデザイン力が正義ではない世界もあるということをお伝えしたいです。
例えばMicrosoft Azure, Salesforce, Slackなどは前者のポジションが多いと思います。
また、そもそもビジュアルデザイナーという職種も確立されているので、UXデザイナーの価値の源泉がビジュアルデザインであるわけないです。(断言←😅)
UXのコアは「ユーザーの問題を理解して論理的に解決する」なのでビジュアルデザインより大切な部分がもっとありそうな気がしませんか?😇
4. でもビジュアルデザインも勉強すべき
ここまでビジュアルデザインは要らないみたいな話をしてきましたが、最低限のデザインスキルは必要なのかなと思っています。さらにUXに興味ある人はビジュアルデザインにも興味があると思うのでせっかくだから鍛えましょう💪(一緒に頑張りましょう)
UXに力を入れていることで有名なAirbnbなのですが、それぞれのUI要素(サーチバー、写真、アイコン、ボタン、etc)は慣れてしまえば誰でも描けると思います。ただ要素をパズルみたいに組み合わせるのはトレーニングが必要だったりします...これは前に別の記事で書いたので興味ある方はぜひ👇
5. おまけ:UXリサーチャーのスキル一覧
今回はUXデザイン全般のスキル一覧を紹介しましたが、UXリサーチに特化したスキル一覧もあります。今回は詳細には触れませんが、以下のサイトがめっちゃ優良です!興味ある方はぜひ〜
6. まとめ
UX市場には色んなタイプの仕事があり、それぞれ求められるスキルが変わってきます。もちろんビジュアルデザイン力が大事な仕事もあれば、リサーチやインフォメーションアーキテクチャが大事な仕事もあります。僕は、自分の現在のスキルと将来の目標スキルを可視化することでどういうプロジェクトをやりたいかを明確にしました!キャリアの悩みが少しすっきりしたのでおすすめです!
自分の目指すUX人材のスタイルを見つけることが大切だと思います。
最後にこれだけは言っておきたいのですが、美大・芸大出身者やビジュアル重視の人をディスっているわけではなくて「UXの世界はもっと広いよ〜」ということをお伝えしたかったんです...美大・芸大のスキルが本当に強みになるUXポジションがあることも承知しています。は?って思った方がいましたらごめんなさい...
最後まで読んでいただきありがとうござます😁
参考文献
「アメリカでUXデザイナーとして働く」という本を書きたいのでぜひサポートお願いします!