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神品 ひとり占め
歓喜とは、このことか
目のまえに青磁の極致といわれる
汝窯(じょよう)がずらり並んでいる
この場には、朝一番乗りした僕だけ
若い女ひとり駆けつけるまで1分ほど
神品ひとり占めであった
台北の故宮博物院・北宋汝窯特別展入口に
こう記されていた
「雨過天青雲破處」―雨あがり、雲の破れ目にのぞかせる
空のしっとりとした青
![](https://assets.st-note.com/img/1674105083929-htxlxWnHPR.jpg?width=1200)
12世紀、北宋の皇帝・徽宗は
こんな色合いの器をつくれと命じ汝窯青磁が生まれた
現存する器はわずか60点ほど
うち21点を故宮が所蔵する。
今回、日本、英国、中国本土からも出品され
40点が展示された
浅い青から深い青まで
どれも澄みわたる空のごとく天高く
神秘さえただよう
圧巻は、10枚の花びらが開いた姿の「蓮花式碗」
こまやかなひび割れ、しっとりとしたスカイブルー
洗練されたかたちの花びらの碗だ
皇帝は、これでお酒を燗したとか
「風流天子」とよばれた皇帝は
北から異民族に攻めこまれ政治に無能だが
書画・青磁など文化に力をそそぎ
北宋時代に中国文化は頂点をむかえた
![](https://assets.st-note.com/img/1674163828870-WV5syhBGfr.jpg?width=1200)
開館まえに、入口で談笑する係員の脇を
何食わぬ顔ですりぬけ、掃除のおばさんに
ニイハオと声をかけトイレにもぐりこんだ
絵画泥棒が美術館の閉館寸前にトイレにかくれ
深夜、絵を盗みだす手口はあるが
開館まえにトイレにひそむとは
こっけいそのもの
![](https://assets.st-note.com/img/1674105685001-ASSzk3Buvr.jpg?width=1200)
10分後そろりと出て、朝礼中の売店を横目に
階段をあがると
あな不思議や、すでに切符発売中
20人ほどが列をなしていた
開場するや先の一団は書画へ脱兎のごとく走り
僕ひとり青磁へ小走り
故宮特別展のキャッチコピーは
「一生難遇的看」―見逃せば一生見られない
![](https://assets.st-note.com/img/1674105837331-7lcRvYK6Rq.jpg?width=1200)
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