朝イカ
「ちっこいけど、けるよ」
浜言葉を訳せば、小さいが、あげるから持っていけ、と
早朝、函館山の麓の漁港
漁から戻ってきたばかりの舟の生簀から
漁師のおかみさんが
イカをどっさりポリ袋に入れてくれた
そのポリ袋のなかでキュキュと鳴き、ドンドンと暴れた
とつぜん現れた朝イカにびっくり顔の女房が
小さくて皮をむくのが面倒だわ
とつぶやきながら、刺身にさばいた
あめ色にすきとおりこりこり感がたまらない
しょうが、うす醤油、ほかほかの白いご飯をおともに
しあわせの一言につきた
6月初めのイカ漁の解禁後しばらくは
姿は小さく身の厚みもうすい
そのあと大きく厚く育つ
イカ刺しの旬は、7月なかごろまで
魚は小ぶりがおいしい、大柄ほど大味とは
勝手な思いだが
松前冲あたりにいるイカの群れは
やがて津軽海峡のまんなかに移ってくる
海峡が漁火で輝くころ
イカやイワシを追って、本マグロがやって来る
旬の味わいも変わりゆく
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