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この世の天国 ドブロヴニク
夢うつつに何か聞えてくる。
たしかに窓の下から、かすかにコトコトコト……。
寝ぼけ眼で重たい鎧戸をあけると、
真下の広場では、うす暗いなか、
採れたての野菜、果物、花などをならべている。
まもなく朝市がはじまるのだ。
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多民族国家ユーゴスラヴィアを治めてきた英雄チトー亡きあと、
連邦のタガがゆるみ、1991年、クロアチアが独立を宣言。
それはならじとセルビア人を主とするユーゴ軍が侵入、
クロアチア内戦が起きた。
ユーゴ軍とクロアチア軍、住民同士であったクロアチア人と
独立阻止の少数民族セルビア人との争い。
昨日まで親しかった隣人が、難民となり逃れていく。
アドリア海の真珠といわれるドブロヴニクに砲弾の雨が降った。
4年後、内戦終結。危機遺産となったこの街は、
市民必死の修復で中世が息づく美しい昔の面影をとりもどし、
ふたたび世界遺産となった。
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朝日がのぼると近在の農家が持ってきた野菜などをもとめ、
街の人が広場にやってくる。
人のよさそうなおじさんが売るジャガイモは人気だ。
禿頭おじいちゃんの干しイチジク、これはうまかった。
この朝市のおばあちゃんが、今朝、にっこりと笑顔でむかえてくれた。
![](https://assets.st-note.com/img/1678229758491-5J8D3CHmJQ.jpg?width=800)
守りをかためる城壁が旧市街をぐるりと二キロほど取りまく。
そのうえから見ると、オレンジ色の古びた屋根瓦に新しい瓦がまじり、
黒ずんだ白壁に真白な壁をつぎたしている。
内戦の傷跡だ。
昔から外敵と戦ってきたこの街は、現代の苦しい試練をのりこえた。
劇作家バーナード・ショーは
「この世の天国を見たければ、ドブロヴニクに行かれよ」と、語っている。
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