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港町・函館 今と昔

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天然の良港をいだく函館。 高田屋嘉兵衛の千石船が出入りし、ペリー提督が水と薪をもとめて開港をせまり、戊辰戦争では榎本武揚の艦隊が官軍と交戦するなど歴史を刻んできた。 開港160年…
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#ノンフィクションが好き

「風花日和」

古い蔵の二階にあがってびっくり 屋根うらの棟木に墨でくろぐろと 「 明治9年4月13日 第13代 常野與兵衛 建造」 147年まえに建てられた木造二階建て土蔵造り この土蔵は、ペリーが箱館に上陸した22年後に 松前藩と会談を行った場所近くに建てられた 建て主の常野與兵衛は 大町にひらいた茶舗を拠点に 茶業、書店などをひろく営んでいた さらに大火事が頻発する この地で防災に力をそそぎ 函館公園の開設、さらにコレラ予防に 上水道の計画をすすめるなど そのころの街の顔役であ

啄木の片想い

石川啄木は ふる里の岩手・渋民で日本一の代用教員となる と教育に情熱を燃やしていた だが、校長排斥ストライキの先頭に立って 代用教員をたった一年で首になる  石をもて追はるるごとく    ふるさとを出でしかなしみ   消ゆる時なし 1907(明治40)年 啄木21歳の春5月、函館にわたった 詩集『あこがれ』で名が出始めた啄木を あたたかく迎えいれた 文学同人・苜蓿社(ぼくしゅくしゃ)のつてで 彌生尋常小学校の代用教員となった   わずか3ヶ月

大道芸人 ギリヤーク

自分の風貌が ロシア・サハリンの先住民族ギリヤーク そっくりな故に芸名とし 本名は尼ヶ崎勝見 国内外の街頭で踊り狂った 阪神大震災、東日本大震災の被災地で 鎮魂「祈りの踊り」を舞う 仏、米、中国、韓国、サハリン…… ニューヨークのグランド・ゼロでも鎮魂の舞 では お巡りさんから踊り禁止を食らった 赤フン一丁はだめよ、と 30代で東京銀座の数寄屋橋で踊って 大道芸人となり50年あまり 投げ銭一本で生きぬいてきた函館生れの93才 2019年夏、そのギリヤーク尼ヶ崎が

お堀のヴァイオリン

ここは、ヘンデルが「水上の音楽」を演奏した 英国のテムズ河でもなければ 平安貴族が舟遊びを楽しんだ京都の大沢池でもない ここは、僕がガキのころ橋の上から とびこんで遊んだ五稜郭公園のお堀なのだ ヴァイオリンの音がひびき、ギターの弾き語り ソプラノの高く澄んだ歌声が 浮かんだ舞台のボートから響きわたった さらに、バラードをつま弾く津軽三味線 函館の今と昔を語るに語る講談…… 2020年夏、コロナショックで 生の演奏に飢えていたアーティストと お堀をかこんだ市民、観光客も

踊る縄文人

30年まえ、函館の市街地から30分 津軽海峡をのぞむ「戸井貝塚」から 縄文の骨角器が発掘された 釣り針、貝を加工した腕輪などの装飾品 海に漕ぎだした小舟をかたどった舟形の土製品も出土 四千年まえの縄文時代後期の生活が目に浮かぶ そのなかで、エゾ鹿の角から作られ、体に沢山の穴が開けられた 人型の角偶(かくぐう)が、損傷もなく完全な形で世に現れた この角偶を一目見たとたん、縄文人がモダンジャズを踊っている!   ピアノを弾いているのは、オスカー・ピーターソン? ー縄文の世