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【旅するデザイン思考】終わりなき旅は続く (メキシコ・Merida編)

新年をメキシコで迎えた我が家。先週はユカタン州の州都Meridaに滞在。相変わらず行き当たりばったりの道中。とはいえTouristicなビジットもしながらユカタン半島ならではの食も楽しみつつ、ちょっと危険な、でも何処か愛らしい旧市街の雰囲気を楽しんでいます。今日もそんな日々を綴ります。

壁だけ見てても飽きない @ Merida

Meridaの第一印象は路地が恐ろしく狭い!バスが一回で曲がり切れない交差点もしばしば。ただ、その狭さがこの旧市街を愛らしく見せてもいる。もう一つの魅力は美しい壁の彩色とテクスチャー。ミントグリーンやサーモンピンクにターコイズブルー。空の青さとのコントラストも相まって街全体がパステル調に描かれたアートのよう。長い時間を経て崩れかけた壁面のPatinaと色彩が相乗し美的かつ詩的に映りながらBarraganのルーツを辿る。

そんな美しいMeridaですが、16世紀、栄華の衰えたマヤの都市を少しずつ制圧していったスペイン人が初期に侵略のベースにしたのがこのMeridaという街。時の流れと共に暗部が忘れ去られ、残る美的側面の堆積は侵略(Conquest)の血生臭い歴史さえ美化してしまう。色彩が映えるほどこの色彩の後ろに隠された歴史に想像力を掻き立てられます。

かつて栄えし荘園の陰影 @ Yaxcopoil hacienda

相変わらず美味すぎるユカタンフードの朝食を済ませ、朝8時、ハイヤーしたガイドと出掛ける。まずはMeridaから南へ30kmほどにあるヘネケン(リュウゼツランから採れる繊維)で栄えた荘園(hacienda)の一つ、Yaxcopoilへ。2重アーチに見られる欧州風の建築様式、欧州から輸入した機材など随所にコロニアルな歴史の痕跡が見られ感慨深い。スペイン語しか喋れないガイドはiPhoneに翻訳をさせながら歴史を解説する。今やスマートデバイスはこんな職業もサポートしている。

最盛時は22,000 acres (89 ㎢)という途方もない広大さを誇ったらしいこの荘園、現在残っている跡地はその3%ほど。このような荘園の跡地なども貴重な史跡として紹介されますが、当時の入植者と労働者の関係や労働環境などに想いを馳せるとき、単純に文化を人間性の美点のみに繋げて観ることの危険性、言い換えるなら人の欠点(愚かさ、傲慢さ)から切り離して観てはいけないという示唆を得ることができます。

自然のHealing Cocoon @ Cenote

行き当たりばったり旅は時に全てガイド任せ。ガイドに次は?と尋ねるとCenoteという所に行くらしい(笑)。クルマを走らせ15分くらいで到着。何故か入口で水着を買うことを推奨されルートに従って進路を進むと今度はライフジャケットを渡される。まさか川下りか滝壺か?と想像しながら進むと洞窟の入口に到着。Cenoteとは自然に出来た洞窟プール。その高い透明度に驚く。入口から微かに届く僅かな陽の光だけでも水底の岩肌や泳ぐ魚の形までクッキリと見える。

一番深いところで約3mの水深。冷たすぎず、エメラルド色に揺らめくどこまでも透き通る水に身体を浮かべればそれはまさしくHealing Cocoon!時間の流れが急速に速度を落とすのを感じ取る。因みにこのCenoteには幾つもの洞窟プールがあり、我々が入ったのはかなり小さ目のものらしい。非常に大きなものもあるらしいので大きな洞窟を目指すならガイドに交渉すると良いでしょう。

人の偉大さと愚かさの陰陽 @ Uxmal

2021年末はマヤ歴では一つの大きな転換期を迎えているという、そんなタイミングでこのUxmalを観に来れたことにも何かの因果を感じます。Uxmalは古代に栄えたマヤの都市遺跡の一つ。錐台形に切り出された石を積み上げた建築はTempleやPalace、そして最も印象的なPyramid(墳墓では無い)に見ることが出来る。古代に建てられた他の多くの建築物同様、人力で建てられたことをどうしても想像し難い。

また他の多くの古代文明同様、発展と栄華の末に腐敗、衰退し、外部の侵略を許し、滅亡する。考古学者の説には巨大な建築が繁栄の象徴として建てられる背景にその繁栄が上層と低層の格差の拡がりによって齎されること、従って巨大建築は繁栄と同時に衰退を象徴するとするものがあり、現在の世界にオーバーラップして見えます。

日頃からデザイン思考ならではの楽観思考を貫いてはいても、結局幾千年の歴史を経ても人間の傲慢は何も学ばないという現実に少々打ちひしがれる思いがします。とはいえ、人が気候風土、そして時間と天体との関係から考え至った天文学や暦が象徴する人間の英知を祝福もしながら、今、滅亡にさえ向かわんとする未曾有の危機の一方で、これまでにない発展への千載一遇のチャンスにも直面している人類の未来に可能性を見出す、そんな新年を此処、メキシコで過ごしています。

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