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【デザイン思考で果たす独立】流行の“FIRE“ 経済的自立を果たすには

米国発のトレンドであるFIREという言葉が日本でもずいぶん聞かれるようになりました。企業に勤める人が経済的自立によって退職、独立することを意味するとすれば、私もそんな一人なのかもしれません。元々フリーランサーが多い米国とは社会構造も大きく異なるため日本でFIREを実行するのは容易ではないかもしれません。私も米国だから可能になった部分もありますが、私が企業に属していた時から取っていた行動やスタンスの中にはその準備になっていたことも多く、今日はそんな私の経験踏まえ、独立を実現するためにやっておいて良かったと思うことを話していきます。

“アイツはああいうヤツだから“というポジションを貫く

私が企業内で一貫して取ってきたスタンスを思い出すと“「アイツはああいうヤツだから」と(恐らく良い意味で…)認知されていた“気がします。企業という組織の中で与えられる仕事には往々にして自分のやりたくないことも含まれる。であれば出来る限りそれを最小限にしたい。やりたくない仕事を最小化しながら自分のやりたいことをメインにやっていくためには、そのための環境をつくるしかありません。周囲に文句を言わせず、邪魔させずに自分のやりたいことをやるために一番有効だったのが成果とメッセージを同時に出していくことでした。

私が初めて管理職に着いた時、金髪にピアスをしていました。周囲にはまさしく「アイツはああいうヤツだから…」と諦めにも似た空気感が立ち籠めていました(笑)。当然、果たすべき成果が無くてはただの目立ちたがり屋で終わってしまいますから、必ず成果とセットで、周囲に「私はこのやり方で行きますよ」というメッセージを正しく発信し続ける。これは自分の存在価値を規定し、周知するセルフブランディングでもあります。

「やらされ感」とはイコール「低生産性」であり組織にとっても個人にとっても不幸です。双方が幸福になる方法として自分と組織の欲求/要求レベルを常にイーブンにしておく。組織に抑え込まれることなく、ある種の変人扱いや孤立を恐れず、フェアでイーブンな関係になるよう、自らの成果と共に、明快なメッセージで常に適切に押し返しておくことは自らの生産性と独立心を高く維持するためにも必要なことだと思います。

「一人プロフィットセンター」のススメ

私が企業で経験した時間の多くは先行開発部隊の責任者でした。それも大半が「一人プロフィットセンター」状態。自らが事業部や研究部門などから仕事を受託し、その委託費用で自組織をやり繰りしなくてはなりませんでした。同じ会社の社内なら委託を受け易いんじゃないかと思われるかもしれませんが、実際はその逆。社内は直接の利害関係下にあるため財布の紐は一般社会よりも寧ろ堅い。そんな環境下で如何にしてプロジェクトを受託し、自組織の食い扶持を稼いでいくかにずっと頭を悩ませた経験は今の自分の会社経営に大きく活かされています。

この経験を通じて学び、今に活かされていることは「金額分の役立ちをする」という発想を捨て、相手の要求レベルを超えるアウトプットで自分の価値を伝えるということでしょう。特に新しいクライアントとの最初の仕事はある意味で手弁当。採算度外視で自分が納得する価値創造に徹すること。これさえ出来ていれば後はそのアウトプットが独り歩きして、放っておいても自分に替わって雄弁に語ってくれる。この思考は独立後さらに有効に機能しています。そんなことが実地で学べるのも企業に居る大きな価値です。

逆風の中で鍛えるHow Might We~?と武器としての個性

日本企業は伝統的に現場主義。ですから、現状の課題や条件に精通している方が圧倒的に妥当性の高い論理を展開できる。これはリスクヘッジにはとても有効に機能しますが、リスクテイクが必要な野心的な取り組みには寧ろ障害になる場合もある。先進的で野心的な提案ほど「それが出来ない理由」に対し論理的条件では不利に立たされがちです。だからこそ、デザイン思考では極めてポピュラーだけれど、日本企業ではあまり実践されないアプローチ「How Might We~?」という問いが重要になります。

「出来ない理由」に精通した論客に対抗するには「可能にする理由」に精通し「How Might We~?(こうしたら出来るのでは?)」を説くこと。大企業には多様な職能部門に手強い論客が大勢揃っている。完全アウェイの中で徹底的に自分なりのHow Might We~?の突破力と共に、自分だけのキャラを活かしたコミュニケーション力を発揮していく。私の場合は「なんとなくアイツとの仕事は面白い」とか「アイツの言う事なら聞いてみよう」と思って貰えるムードが有効に働いていた気がしますし、今でも(日米問わず)クライアントからそんな風に言われることが多いです。“個性”は人を動かす武器にできると思います。

遊び心だけが可能にする純度の高い成果と人脈

企業内の立ち回り方でも、成果の出し方でも、人脈の形成でも、何であれ将来自分にメリットが返ってくることを期待して行う行動は結果、奏功しないというのが私の持論です。出世や経済的視点ではなく、人生の豊かさという視点で見ると、純粋に面白いことを面白い人達と楽しく仕事に出来たときほど成果も上がり、上質で生涯長続きするような人脈が形成されるでしょう。打算で考えて行う行動は誰から見てもそれが薄膜の様に表層的に見える。経済的自立を果たすためにこそ、一旦“経済”から離れて純粋な価値を希求することが重要だと思います。

正直、個人的には「人脈」という言葉も好きになれない。私の場合殆どのパートナーとはお金や仕事が起点ではなく、純粋なCreativity(遊びの探求)で繋がっているので、それは仲間としか呼びようが無い。そしてそんな仲間たちとは独立後、より一層強い絆で繋がっている。純度の高い価値ある成果と人脈。それを可能にするのは“絶対に失わない遊び心”だと思っています。ユバル・ノア・ハラリ氏には悪いですが、私はホモ・サピエンスやホモ・デウスなんかよりも、一生“ホモ・ルーデンス”でありたいと思っています。

“経済的自立”の前に“精神的自立”を

最後に、組織に属している間も精神的には組織と常に一定の距離を保つことが重要だと思っています。当然、社内ルールなどは厳守。しかし、例えば企業風土などに対しては、理解は示してもマインドセットやパーソナリティまで同調させない。誤解を恐れず言うなら、その企業にいる間はその風土に溶け込んだフリをしながら、体内には全く異なる熱量の独立したマインドを宿し、それをクールに堅持しながら巧く付き合っていく。

自分の中の創造的な野心は可能な限り野生のまま心の野に放(はな)っておくこと。組織との距離感の取り方の巧い人ほど、独立心と生産性を高く維持できる。だから組織に対しての貢献度も結果的に高まり、質の高い成果を出せるし、それは独立後の成長にも有効に働く。言い換えるなら、経済的自立を早く実現するには、それ以前に、精神的自立を果たしておくことが重要になるのだろうと思います。

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